第72回 退職してもらいたくない労働者の希望退職を拒否できるか
中川恒彦の人事労務相談コーナー
Q
どうしてもある程度の人員削減の必要があり、割増退職金の支給を条件に希望退職の募集をしたところ、会社にとって必要と認められる従業員が希望退職を申し出てきました。
会社の方で募集したものではありますが、このような従業員の希望退職を拒否することはできるでしょうか?
A
一般的にいって、「希望退職の募集」は使用者からの雇用関係解消に関する申込みの誘引であり、これに対する労働者の「応募」は雇用関係解消の申込みであって、その申込みに対する使用者の承認ないし承諾があって雇用関係解消の合意が成立するものであると考えられます。両者の合意があってはじめて雇用関係が解消されるわけですから、その合意が成立しない以上、労働者は希望退職制度の適用を求めることはできません。
ただ、そのことを明確にするため、募集に当たり希望退職制度の適用には会社の承認が必要である旨定めておくべきでしょう。