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自転車通勤を認める際の留意事項

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自転車通勤を認める際の留意事項

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第35回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言は全国で解除されましたが、満員電車の混雑を避けるために、自転車通勤をしたいとの要望が複数の社員から出されました。当社ではこれまで自転車通勤を禁止してきましたが、どのように対処すべきでしょうか?

A

「3密(密閉、密集、密接)」を避けられて、健康や環境にも良い自転車通勤は、国内外で推奨する動きが広がっているようです。国内では郊外に事業所がある企業などを中心に、公共交通機関以外に、マイカーやバイクに加え自転車による通勤を認めているケースも数多くあります。しかし、都市部では自転車通勤を禁止している会社も少なくなく、そのような企業が考える自転車通勤の主要なリスクとは交通事故によるものと考えられます。交通事故件数の約2割は自転車が関係しているといわれています。都市部の会社などが社員の自転車通勤を認める場合には、留意すべき点がいろいろあると考えられるので以下、検討してみましょう。

 

自転車通勤をめぐる問題点

 自転車通勤で問題になるのは、通勤途上で事故が発生した際に労働災害として認められないケースが発生することが挙げられます。 労災で補償される通勤災害とは、自宅と就業場所との往復を「合理的な経路及び方法」で行なうものとされています。したがって、通常は自転車通勤をしないような遠隔地から自転車を使って通勤して事故にあった場合などは、「合理的な経路及び方法」と認められない可能性があると考えられます。
 また、自転車通勤では行動の自由度が高いので途中で寄り道をしたり、運動のために遠回りをした場合など合理的な経路から外れ、結果として労災が認められないケースが起こりえます。こうしたリスクを社員にはよく説明して理解させておく必要があります。

 この他のリスクとしては、社員が加害者となり第三者に大けがを負わせるといった可能性です。自転車事故といえども賠償額が数千万円に達する場合があります。自動車やバイクと異なり、強制加入保険が存在しない自転車による事故では、任意保険に加入していない場合、十分な被害者救済がなされないというリスクがあります。
 社員が通勤途上で自転車事故を起こし、責任を果たせない場合には雇用主である会社が責任を追及されることがありえるので、社員に民間保険への加入義務を課すことは必須と考えられます。

 

 東京都では今年の4月から自転車を利用する人は対人の損害賠償保険に加入するよう条例で義務づけました。他にも多くの府県(大阪、兵庫、神奈川、静岡、長野、埼玉など)が条例で自転車の保険加入を義務づけています。損保ジャパンによれば今年4月の全国の新規保険加入者は1月比の10倍に増えていて自転車通勤を認める企業が増えたと見ているとのことです。
 通常の場合、社員の自転車事故については本人の責任で補償がなされれば、会社が使用者責任を問われるリスクは低いと考えられます。しかし、会社所有の自転車を利用しての通勤や、社員の私用自転車を業務に用いている場合などは使用者責任を負うリスクがあるので注意が必要となります。

「自転車通勤規定」を定めることが大切

 会社が自転車通勤を認める場合、就業規則や社内規程で以下のような内容を定めることが重要です。

(1)許可:自転車通勤を希望する者は、事前に会社に申請し許可を得なければならない
(2)許可の基準:以下の条件を満たす従業員にのみ認める
 ①自宅から会社までの距離が〇Km以上〇Km未満の者
 ②安全基準を満たした自転車を通勤に使用する者
 ③会社の定める基準の任意保険に加入している者
(3)禁止事項:飲酒運転、イヤホンや携帯電話を使用しながらの運転、疲労等、安全運転が困難な状況での運転、整備不良の自転車での運転、道路交通法で禁止されている運転、会社業務中の運転
(4)事故等の扱い:通勤途上で事故を起こした場合、直ちに会社に報告して指示に従うこと

 上記に加え通勤手当の扱いも重要です。自転車通勤には実費はかかりませんが、買い換えや消耗品の交換など、一定の費用がかかるので、自転車通勤者に対しても通勤手当を支給している場合が多いようです。金額は、非課税となる1カ月あたりの限度額を参考にすると良いでしょう。

 放置自転車の問題についても注意が必要です。会社が自転車通勤を認める以上、会社で駐輪場を用意するか、あるいは社員に確保してもらい、その証明書を提出させた上で自転車通勤を許可するといった対応が求められます。自転車による交通事故やマナーの悪化が社会問題化しており、会社として社員への安全運転研修を実施することも検討すべきでしょう。東京都のホームページには、会社による自転車安全運転利用研修のページがあり、研修用の教材や動画教材が利用できるので、これらの教材を利用した社員研修を行うことが可能です。


 

自転車通勤を認めない場合の対応と今後の展開

 以上は自転車通勤を認めることを前提に説明してきましたが、今回の質問者の会社ではこれまで自転車通勤を禁止していたとのことです。交通事情などから事故のリスクが大きいのであれば自転車通勤を認めないという方針の継続も考えられるところです。その場合は、例えば就業規則の服務規律の中で「自転車による通勤をしてはならない」旨を定めておくことが重要です。無断で自転車通勤をする者がでて、禁止されていたことは「聞いていない」あるいは「就業規則に書いてないので分からなかった」と反発されることを防ぐ必要があります。
 このように立地場所などの関係で自転車通勤を許可するのが難しい企業もあるでしょうが、国土交通省は4月に「『自転車通勤推進企業』宣言プロジェクト」を開始、自転車通勤を推進する企業・団体の認定制度を創設して普及に力を入れはじめています。

 コロナ禍の後には、人々の生活様式にも大きな変化があるものと考えられます。テレワークなどと共に自転車通勤もニューノーマルとして利用が進むことのひとつになるかもしれません。安価で便利、健康や環境にも優しい自転車通勤ですから、リスクを最小化し会社にも社員にもメリットのある制度として更なる普及に繋がれば良いと考えます。 

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