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2016年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する(2016年6月景況トレンド)

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2016年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する(2016年6月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部・研究員 藤田隼平
(2016年6月7日(東京)夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(14)

日本経済の現状と2016年度上期の展望

 2016年5月に内閣府が発表した16年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率換算+1.7%)と2四半期ぶりのプラス成長に転じたが、うるう年効果により、個人消費や政府消費が押し上げられたと考えられ、決して強い結果ではない。

 景気の底割れは回避しているものの、15年に入ってからはプラス成長とマイナス成長を交互に繰り返しており、日本経済は均して見ると横ばい圏で推移している。
 なお、15年度の実質GDPは前年比+0.8%のプラス成長で着地したものの、ゲタ(*) を除いた年度中の成長率は▲0.2%だった。

 GDPの内訳を見ていくと、まず個人消費は弱い動きが続いている。16年1~3月期はうるう年効果もあって増加したものの、雇用者報酬の増加に見合うペースで消費は増えていない。
 物価上昇により生活コストの増加が懸念される中で消費者は節約志向を強めており、株価下落や内外景気の先行き不透明感によってマインドも悪化していることから、消費意欲はなかなか高まってこない。

 他方、住宅投資は減少が続いているものの、先行指標である住宅着工の持ち直しを受けてマイナス幅が縮小するなど、下げ止まりつつある。
 住宅着工は、貸家が相続税対策で高水準を維持しているほか、持家も年度後半にかけて持ち直している。

 また、企業の設備投資は16年1~3月期に3四半期ぶりに減少するなど、足元で弱さが見られる。製造業を中心に業績の改善が一服しており、投資に対して慎重さが増している可能性がある。

 一方、公共部門では、政府消費が医療費などの増加にともなって堅調に増えているほか、公共投資も経済対策効果の剥落が一巡したことから足元で持ち直している。
 輸出については、海外景気の減速を受けて財の輸出が伸び悩んでいる一方、訪日外国人の増加によってサービスの輸出は増えており、均して見ると横ばい圏で推移している。また、輸入も国内需要の弱さを受けて横ばい圏となっている。

 こうした動きが続く中で、16年度の日本経済は、消費税率の引き上げを予定どおり行うにしろ、延期するにせよ、上期は横ばい圏での推移が続くと見込まれる。
 1~3月期にうるう年効果で増加した反動で個人消費や政府消費が伸び悩むほか、4月の熊本地震のマイナス効果も見込まれる。このため、公共投資の前倒し執行が順調に行われたとしても、景気は力強さを欠くことになるだろう。

 なお、夏頃には世界景気の持ち直しが明確になる中で、輸出が持ち直しに向かうと期待される。また、内外景気の先行きに対する不透明感が後退することで消費者のマインドも改善に向かうと見られ、労働需給の引き締まりを背景に所得面の改善が続く中で、個人消費も緩やかに増加するだろう。

 したがって、下期には、日本経済は、緩やかな持ち直し基調に転じると見込まれる。
 下期の姿は消費税率引き上げの有無によって大きく変わるものの、消費税率の引き上げが延期された場合、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、16年度の実質GDP成長率を前年比+0.8%のプラス成長になると予測している。

(*)年度の値と年度最終四半期の年率換算値との差をゲタと呼ぶ。具体的に確認すると、14年度の実質GDPが524.8兆円だったのに対し、年度最終四半期である15年1~3月期の実質GDP(年率換算値)は530.3兆円と年度の値よりも1.0%ほど高かった。したがって、仮に15年度中、実質GDPが1~3月期の水準で横ばいとなっても(ゼロ%成長が続いても)15年度の実質GDPは530.3兆円であるため、数字上は+1.0%のプラス成長となる。

金融市場および商品市況の現状と16年度上期の展望

 年明け以降、金融市場は大きく変化している。為替相場は日本銀行のマイナス金利政策の導入発表を受けて1月には一時1ドル=120円台まで円安が進んだものの、2月に入ると海外景気の減速懸念の高まりによる世界的なリスクオフの動きを受けて安全資産である円が買われ、一時1ドル=106円台まで円高が進んだ。

 足元では1ドル=110円まで円安方向に戻しているが、今後も世界的な金融市場の混乱の中で安全資産である円が買われ、再び円高が進む展開もあると見られる。
 しかし、金融市場の混乱が収まり、リスクオンの流れになれば円安圧力が強まっていくと考えられる。

 また、企業業績の下振れ懸念が強まり、日経平均株価は1万6000円台まで低下している。内外景気の先行きに対する警戒感は強く、今後も上値は重いと予想される。
 長期金利(新発10年物国債利回り)は、2月の日本銀行のマイナス金利政策の導入を受けて、史上初のマイナス圏に突入した。

 今後も日本銀行は高値での国債の買い入れを続けるため、需給はタイトな状態が続き、当面、長期金利はマイナス圏での推移が続くと考えられる。

 原油価格は年明けには底打ちしたものの、世界的な供給過剰感から上値は重く、同様にその他の資源価格についても軟調な動きとなっている。
 しかし、今後、世界経済が持ち直しに向かう中で需要増加観測が強まり、原油をはじめとした資源価格の弱さも徐々に解消へ向かうと期待される。

夏のボーナスを取り巻く環境

 日本経済が横ばい圏で推移する中、企業業績の改善が一服している。
 財務省「法人企業統計調査」をもとに、2015年10~12月期の製造業の業績を見ると、内外需要の弱さや国際商品市況の悪化などが下押し要因となり、売上高、経常利益ともに前年割れとなった。
 他方、非製造業は逆に資源安がコスト減少につながり、経常利益は増加したものの、売上高は製造業と同じく減少した。

 こうした傾向は年明け以降も変わっておらず、「日銀短観(16年3月調査)」を見ると、15年度下期の経常利益は、製造業では足元の円高もあって前年比▲16.3%と減少する一方、非製造業は同+0.9%と増加する見通しである。
 16年度上期の経常利益については、製造業、非製造業ともに前年割れの計画となるなど、企業業績は弱含む可能性がある。企業マインドも業績が下振れている製造業を中心に悪化しており、夏のボーナスに対する悪影響が懸念される。

 他方、景気が横ばい圏で推移し、企業業績の改善が一服する中にあっても、労働需給はタイトな状態が続いている。
 総務省「労働力調査」によると、2015年度下期の完全失業率は3.3%とかなりの低水準にある。また、厚生労働省「一般職業紹介状況」を見ても、同期の有効求人倍率(除く新規学卒者・含むパートタイム)は1.27倍と、まだバブル景気の余韻が残っていた1991~92年並みの高い水準となっている。

 雇用のミスマッチの問題が根強い中で、企業の人手不足感が解消されるのは容易ではなく、人員確保のための賃上げが進みやすい環境となっている。

 実際、厚生労働省「毎月勤労統計調査」を見ると、15年度下期の現金給与総額は振れを伴いながらも前年比+0.4%と増加し、ボーナスを算定する上で基準とされる所定内給与も同+0.4%と増加している。
 さらに今年の春闘では、賃上げ率は前年を下回る水準にとどまったものの、3年連続となるベースアップ(ベア)が実施された。

 労働需給がタイトな中で人材確保の観点から企業側も賃上げの必要性を認識しており、ボーナスを含む年収ベースでの賃上げを含め、何かしらの賃上げを行った企業は少なくなかった。
 企業業績の下振れ、景気の先行き不透明感の強まり、企業マインドの悪化がボーナスの下押し要因となるリスクはあるが、春闘の状況を勘案すると、今夏のボーナスについてはそのリスクも顕在化しないと見込まれる。

2016年夏季賞与の見通し

 2016年夏のボーナスの一人あたり平均支給額は、民間企業では35.8万円(前年比+0.5%)と2年ぶりに増加すると予測する。
 製造業では49.8万円(前年比+0.7%)、非製造業では32.6万円(同+0.4%) となるだろう。企業業績の下振れやマインドの悪化がリスク要因ではあるが、人手不足の中で賃上げの必要性を認識する企業は多く、一人あたりの支給額は前年実績を上回ると期待される。

上向きグラフ.jpg

 また、企業規模別に見ると、大企業、中小企業ともに増加が見込まれる。マクロ環境の悪化に敏感な中小企業では、内外需要に弱さが見られる中で大企業以上に下振れるリスクがあるものの、今年の春闘を見る限り、中小企業においても賃上げの動きは続いていることから、夏のボーナスは増加が期待される。

 加えて、雇用者が増加傾向にある中で、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加すると考えられる。
 結果的に、マクロベースで見た2016年夏のボーナスの支給総額は、一人あたり平均支給額、支給労働者数ともに増加することから前年比+2.1%と増加する見通しである。
 こうしたボーナス支給総額の増加は、マクロベースで見た個人消費を下支えする要因になると期待される。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する
「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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