1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 景況分析と賃金、賞与の動向
  5. 2016年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2016年11月景況トレンド)

プライムCメディア

2016年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2016年11月景況トレンド)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2016年11月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部・研究員 藤田隼平
(2016年11月8日(東京)秋季定例研究会ブックレット「2016年 年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(15)

(1)日本経済の現状と今後の見通し

 まず、実質GDPの結果とその内訳を使って、日本経済の現状を見ていこう。

 2016年9月に内閣府が発表した4~6月期の実質GDPは前期比+0.2%(年率換算+0.7%)と、2四半期連続のプラス成長となった。この間、特に増加が目立ったのは住宅投資と公共投資である。住宅投資は日本銀行によるマイナス金利政策を背景とした超低金利環境のもと、貸家着工を中心に好調が続いている。また、公共投資については、15年度補正予算や16年度本予算の前倒し執行などを受けて増加傾向にある。

 小幅ながら実質GDPの増加が続いていることで日本経済は横ばい圏の動きから脱しつつあると見られ、今後そうした前向きな動きが他の部門にも波及していく中で、徐々に底堅さを取り戻していくと見込まれる。
 なかでも持ち直しが期待されるのが輸出である。4~6月期に2四半期ぶりの減少となったが、その背景には世界経済の弱さがあった。

 しかし、足元では原油価格を中心とした商品市況の底打ち、米国の利上げ先送り、英国のEU離脱を巡る混乱の鎮静化などを受けて世界景気の減速には歯止めがかかっており、今後、輸出の弱さも徐々に解消へ向かうと見込まれる。

 また、個人消費にも期待が持たれる。個人消費は2四半期連続で増加するなど持ち直しの兆しが見られるものの、均して見るとまだ横ばい圏内の動きにとどまっている。

 しかし、足元では円高による物価の下落を受けて実質賃金が増加するなど明るい材料が見られ始めている。今後はそうした実質賃金の増加を背景に消費者マインドも上向くと見られ、個人消費を押し上げる要因になると期待される。

 さらに各種政策効果によって住宅投資や公共投資も好調を維持すると見られることから、今後も実質GDPの増加が続き、16年度全体の実質GDP成長率は+0.9%と2年連続のプラス成長になると三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは予測している。

 ただし、企業業績の悪化と2四半期連続で減少している設備投資の弱さは懸念材料である。企業の収益力はコスト削減をはじめとしたこれまでの経営努力によって高まっているものの、足元の売上高の減少をカバーするのは難しく、経常利益は減少が続く見通しである。

 こうした中でも、人手不足を補うための省力化投資や情報化投資など必要とされる投資は多く、手元資金が潤沢な大企業では設備投資が急減することはないと考えられる。しかし、資金力に劣る中堅・中小企業では設備投資に対する慎重な姿勢が強まることで、投資額が大きく下振れるリスクがある。

 なお、日本銀行は9月の金融政策決定会合において「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。日銀が金融緩和を強化するための新たな枠組みと説明したことで、発表直後は円安株高が進むなど金融市場は概ねポジティブに反応した。

 しかし、実際には現状維持程度の内容であったことから、直後の米国の利上げ先送り決定などもあって、足元では発表前の相場まで軒並み水準を戻している。

 今後も長期金利はマイナス圏での推移が続くと見込まれる。日銀は長期金利が0%程度で推移するよう国債の買い入れを行い、そのペースも概ね現状維持程度と表明していることから、長期金利の上昇余地は限られている。
 為替相場は、米国の利上げ先送りが続けば、再び円高が進む可能性がある。株価については、円高や企業業績の悪化といったファンダメンタルズの弱さもあって上値の重い展開が予想される。

(2)悪化する企業業績とマインド

 このように日本経済に持ち直しの兆しが見られる一方で、企業業績は悪化している。財務省「法人企業統計調査」によると、16年4~6月期の経常利益(金融・保険業を除く全産業、全規模)は18.2兆円(前年比▲10.0%)と前年から大きく減少した。

 業種別に見ると、製造業は5.6兆円(前年比▲22.4%)、非製造業は12.6兆円(同▲3.1%)と、ともに前年を下回った。製造業では海外景気の減速や円高に加え、熊本地震や自動車の燃費不正問題による生産ラインの停止といった特殊要因も響いた。

 また、非製造業では株価低迷による国内富裕層のマインド悪化による消費の落ち込み、円高や中国の行郵税(簡易関税)引き上げなどを背景とした訪日外国人消費(インバウンド消費)の鈍化などが業績悪化につながった。
 さらに企業の規模別に見ると、大企業(資本金10億円以上)は11.8兆円(前年比▲13.9%)、中小企業(資本金1000万~1億円)は4.1兆円(同▲6.1%)と、企業規模にかかわらず業績は悪化している。

 足元で海外景気の減速に歯止めがかかりつつあるものの、円高の影響は続いていることから、今後も企業業績は悪化が続くと見込まれる。
 製造業では円高や内外における設備投資需要の弱さなどが、非製造業では国内富裕層や訪日外国人による消費の一服や原油価格の下げ止まりなどが業績の下押し要因となるだろう。

 統計が異なるので財務省の調査と単純比較はできないが、「日銀短観(16年9月調査)」では、16年度の経常利益(全規模)は、製造業で前年比▲11.8%、非製造業で同▲5.6%、全体では同▲8.1%の減益が見込まれている。

 しかも、大企業製造業の16年度下期の想定為替レートは1ドル=107.42円と実勢から5円程度かい離した水準にとどまっており、今後の調査で製造業を中心に計画は一層下方修正されるリスクがある。

 他方、企業の雇用意欲が依然として強いのは明るい材料である。「日銀短観(16年9月調査)」では、15四半期連続で人員不足と答える企業の方が人員過剰と答える企業よりも多い状態が続いている。
 総務省「労働力調査」によれば、16年4~6月期の雇用者(前年差+90万人)は増加が続き、完全失業率(季節調整値)も3.2%まで低下している。

 厚生労働省「一般職業紹介状況」を見ても、同期の有効求人倍率(パートタイムを含む、季節調整値)は1.36倍と、まだバブル景気の余韻が残っていた1991年並みの高水準となっている。

 しかし、16年4~6月期に所定内給与(基本給)が前年比▲0.1%の減少となるなど、賃金には弱さが見られる。今後、国内景気が持ち直す中で労働需給は一層タイト化し、賃金にも上昇圧力が加わると期待されるものの、業績が悪化する中で企業マインドは製造業、非製造業とも慎重であることから、同時に、企業が人件費抑制姿勢を強めたり、新規採用を手控えたりするリスクも高まってくると考えられる。

(3)冬のボーナスの予測

 それでは、こうした環境のもとで支給された夏のボーナスの結果はどうだったのだろうか。厚生労働省「民間主要企業夏季一時金妥結状況」を見ると、大企業の夏のボーナスの平均金額は84万3577円(前年比+1.36%)と小幅ながらも前年から増加した。
 また、経団連の調査でも、大企業の平均金額は90万5165円(前年比+1.46%)と増加した。

 さらに、中小企業も含まれる厚生労働省「毎月勤労統計調査」でも、夏のボーナスの支給が集中する6月、7月の特別給与はそれぞれ前年比+3.6%、同+3.7%と増加した。前年比▲0.5%と減少した8月分を加味しても、夏のボーナスは大企業だけでなく中小企業においても増加したと考えられる。

 ただし、6月、7月分の特別給与を業種別に見ると、「卸売業、小売業」や「不動産・物品賃貸業」のように2ヶ月とも増加した業種がある一方で、「飲食サービス業等」や「金融、保険業」のように6月、7月の少なくとも一方は減少した業種も多かった。

 こうした状況を踏まえると、夏のボーナスは企業部門全体で見れば前年を上回ったものの、業種や企業による明暗はこれまで以上に分かれたと考えられる。

 今年の冬のボーナスについては、大企業では夏冬型でボーナスを決める企業が多いことから、夏に続いて増加が見込まれる。しかし、中小企業では支給額が直近の業績に左右されやすいことから、足元の企業業績やマインドの悪化が響き、ボーナスの支給額を減らしたり、支給を手控えたりする企業も増えると見られる。

 このため、大企業と中小企業を合わせた全体の冬のボーナスは前年から小幅の増加にとどまり、夏と比べても業種や企業による差が一層鮮明になると考えられる。

プライムコンサルタントの
コンサルティング

コンサルティング会社と聞くと、「敷居が高い」「中小企業の当社には関係ない」といった考えをお持ちではありませんか?

当社のクライアントの大半は、従業員数が30~300名ほどの中堅・中小のお客様です。
これらのお客様からは「中小企業の実情を理解したうえで的確なアドバイスをくれる」「話をしっかり受け止めようとしてくれる」「いい意味でコンサル会社っぽくなく、何でも相談できる」といった声を多くいただきます。
担当コンサルタントの「親しみやすさ」も、当社の特長の一つです。

会社の規模に関わらず、一社一社のお客様と親身に対話をすることが当社の基本方針。
人事のご相談はもちろん、それに関連する専門知識を持ったコンサルタントがお客様の悩みをしっかり受け止め、人事にまつわるさまざまな課題を解決に導いてまいります。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ