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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー23ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー23ー

第23回 これからのマネジャーに求められるもの(3)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 さて、前回は、今後、人と組織の成長に欠かせない施策となるであろう『キャリア開発』について考え、中堅・中小企業においては、「その役割を、管理者が担う必要があるのではないか?」という提言をいたしました。
 ではいったい、管理者は具体的に何をすればよいのでしょうか? 今回は、それを考えてみたいと思います。

1.キャリア面談を取り入れる

 最近、評価制度づくりをお手伝いしたクライアントの中に、「キャリア面談」というしくみを取り入れた会社が2社あります。

 キャリア面談は、主に現場の管理職(直属上司)が行う、社員の中長期的な活躍や定着をねらいとした面談です。社員が、これまでの自身のキャリアを振り返ることを通して自己理解を深め、将来に亘って「目指す姿」と「その実現に向けた取り組み」を確認する場です。

 半年や1年という短期間の仕事ぶりや仕事のできばえを振り返るにとどまらず、これまで自身が歩んできた道のりが、今の自分とどのようにつながっているのかをあらためて振り返ることによって、将来のビジョンや見通しを持ち、今後の成長への自覚を促すというねらいがあります。今自分が担っている仕事に対する意味づけが強化され、主体的な働きが動機づけられるという効果が期待できます。

 一般的な内容や進め方は次のようなものです。

1.本人は、あらかじめ下記のような「キャリアの振り返りシート」の問いかけに沿って、自身の振り返りを書いておきます。

2.キャリア面談は、振り返り面談(評価対象期間終了後に、本人がその期間の仕事ぶりや仕事のできばえを振り返り、上司とその内容を共有する機会)のすぐ後に引き続いて行います。

3.まず、本人は、「キャリアの振り返りシート」の記述内容に沿って、自身の思いを語ります。

4.上司は、内容について問いかけをしながら、本人の思いをじっくりと聴きます。

5.上司は、本人の今後の成長に向けて、アドバイスや励ましを行います。

 いかがですか。「これならわが社でもできそうだ」というシンプルなものですね。前述の2社も、この内容を基本として、それぞれの会社に合った形にアレンジして実施しています。

2.なぜ、キャリア面談が必要なのか?

 ところでこのようなキャリア面談が、今なぜ必要なのでしょうか?その背景には、経営環境の急激な変化があると言われています。

 少子高齢化の進行、若年層人口の減少、価値観の多様化などの社会的な環境変化はもとより、インターネットの普及による世界の即時的なつながりや、IT化、AI化による業務プロセスの抜本的な変革など、組織と人を取り巻く環境は、日々、刻々と変化しています。

 このような環境において、多くの企業が、

  • 社員一人ひとりが自分自身の持てる力を最大限に発揮するだけでなく、その相互作用、相互連携をうまく行わなければ生産性は上がらない
  • 一人ひとりの内発的動機によるアイディアや工夫がなければイノベーションが起きない
  • 古くからの組織文化・風土や既成概念にとらわれず、主体的に自分自身で自分のキャリアと仕事を創り出す人材でなければ、組織として抱える余裕がない

ということに気づき始めています。

 下線部のような個人的・組織的能力は、知識や技術、ノウハウを学べば高まるという性質のものではありません。一人ひとりが、これまでのさまざまな経験を取り込むことによって、知らず知らずのうちに自身の内面で育まれてきた「その人らしさ(自己概念)」を意識化し、意味づけることによって、培われ、積み上げられていくものです。

 だからこそ、じっくりと経験を振り返り、自分の内面と向き合う機会と、そのための支援が必要なのです。

 これまで多くの企業には、営業同行の電車や車の中、工場の休憩時間(たばこ部屋)、終業後の飲み会、旅行や運動会など、仕事上必要なコミュニケーションにとどまらず、いわゆる「雑談」をする機会が数多くありました。家族や趣味などのプライベートな話や、喜びや悩み、価値観や信念、将来のビジョンなど、「その人らしさ」が垣間見える会話を交わし合う機会がいろいろとあったように思います。

 そしてそのような機会に、若手がベテランの経験談にヒントや元気をもらったり、上司が部下にちょっとしたアドバイスや励ましを送ったりしながら、「その人らしさ」が育まれていったように思います。

 もちろん、今も、その機会がまったくないわけではありません。しかし、スピードや効率がどこまでも追及され、ゆとりが失われていく中で、以前に比べて減っていることは間違いないでしょう。結果として、世代や部署を越えた、広く豊かなコミュニケーションが希薄になってきたように感じます。

 そこであえて意図的に、「オフィシャルにまじめな雑談ができる場」を創り出すことが必要になってきたのではないでしょうか。

3.管理者がキャリア面談を担当するためには?

 「キャリア面談」は、「振り返り面談」とは一線を画するものであり、次のような特徴があります。
①育成視点(評価とは関係させない)

  • あくまでも、本人の成長を支援するための取り組みであり、一定期間の評価の対象ではない

②長期視点

  • 一定期間の仕事の実績や仕事ぶりの振り返りにとどまらない、長期視点の成長を志向する

③ライフキャリア的視点

  • 働きがい、仕事観、興味や価値観、将来の展望などを対象とする
  • 仕事、職場にとどまらず、生き方そのものを対象にする

④対話を重視

  • お互いの考えを理解し合うための双方向コミュニケーションである
  • 時には助言や自分自身の経験などを語ることにより、お互いを知り合い、信頼関係を高める
  • 部下の気づきを促し、成長を動機づける

 仕事そのものの振り返り面談に比べて、もう一歩、本人の内面や本質に踏み込んだ関わりということができるでしょう。

 このように、本人の生き方そのものに関わることになると、一定期間の仕事のみを対象とする場合よりも関わり方が難しく、内容としても重く、深いものとなる可能性があるため、受けとめる側に相当の器や力量が必要です。何よりも、強い信頼関係なくして、この面談は成り立ちません。したがって、専門的なトレーニングを受けた者でないと、その役割を担うことはできない、担ってはいけないという考え方もあります。

 とは言え、私たちが組織の一員である以上、キャリア面談のテーマの核は、組織で働く人々が最も多くの時間を投入する「仕事」「職場」となるはずです。そう考えるとやはり、「職場」のコミュニケーションの結節点の役割を持つ管理者こそ、最も面談者にふさわしいポジションだと思います。

 特に、必要最小限の人材で事業を営み、一人ひとりが幅広い役割を担わざるを得ない中堅・中小企業では、「部下のキャリアを取り扱う」ことが、管理者に求められる新たな役割になっていくことは、半ば必然であると思うのです。

 これは確かにこれまで以上に責任の重い役割であり、「わが社の管理職に、あるいは私自身に、そんなことができるのか?」と不安に思われる方も多いでしょう。そんな方は、難しく考えず、この連載の第10回~第20回まで考察してきた「マネジャーに必要な素養」を、もう一度読み返してみてください。

 すでにおわかりと思いますが、「マネジャーに必要な素養」は、言われてみれば当たり前のことでありながら、簡単には身につかないことばかりです。だからこそ、管理者としておごることなく、謙虚に何度も読み返し、常に意識を新たにし続けていくことが必要です。

 それができれば、部下の大切な「キャリア」を扱う素地は、少しずつ整っていくのではないでしょうか。その上で、前述のキャリア面談の目的や意味をよく理解して部下に関わっていけば、相応の成果=部下の内面的な成長につながっていくと思うのです。

 最後に、部下のキャリアを取り扱う管理者に、日ごろから持っていただきたい心がけを、具体的に記しておきます。

(ア)信頼できる他者になること
 部下が自己防衛に走ることなく、安心して、オープンに語ることができるような自分になる

(イ)好意的関心を持ち続けること
 部下の話をありのままに聴く(是非をすぐに判断しない)
 発言の背景を知ろうとし、意味を聴き取る

(ウ)自問自答を促すこと
 部下が自ら考え、自問自答を始め、内省が起き、自ら気づくように、効果的な問いを考え、投げかけ続ける

 この3つの心がけをお腹の底に据えて、真摯に部下と向き合っていけば、きっと部下のキャリアを支えることができるでしょう。そして、このような部下との関わりが、管理者にとっても自分を見つめ直す機会となり、自身の成長にもつながっていくと、私は思うのです。

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