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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー22ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー22ー

第22回 これからのマネジャーに求められるもの(2)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 さて、前回は、最近実施した管理職研修の経験を踏まえ、「『キャリア開発』が、これからの人と組織の成長・成熟のキーワードになっていくのでは?」という話をしました。
 今回は、この『キャリア開発』について、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。

1.キャリアとは何か?

 従来、「キャリア」という言葉は、職業や資格という意味で使われたり、キャリアとノンキャリアというような組織内の位置づけを表す用語として使われたりしていました。

 一方、これから見ていく「キャリア開発」における「キャリア」の意味は、もっと幅広く奥深い概念です。
 厚生労働省は、2002年7月31日発表の「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会 報告書」の中で、下記のように言っています。

 「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。

 「連鎖」という表現から読み取れるように、ある時点の職業・資格・ポジションといった静的、断片的なものではなく、「時間的持続性ないし継続性を持った概念」であることがポイントです。

 続けてこの報告書には、

 「キャリア形成」とは、このような「キャリア」の概念を前提として、個人が職業能力を作り上げていくこと、すなわち、「関連した職務経験の連鎖を通して職業能力を形成していくこと」と捉えることが適当と考えられる。

と記されています。つまり「キャリア」は、「関連した職務経験の連鎖を通して」時間をかけて形成されていくという、有機的で継続的なものだと言えます。

 ただ、これだけでは、日本企業が従来から取り組んできた能力開発の対象である「職業能力」との区別が、いまひとつよくわかりません。その違いは、この報告書の冒頭にある、下記の記述に表れています。(下線は筆者)

 経済社会環境が急激に変化し続け、予測のつかない不透明な時代となり、労働者、個人は一回限りの職業人生を、他人まかせ、組織まかせにして、大過なく過ごせる状況ではなくなってきた。すなわち、自分の職業人生を、どう構想し実行していくか、また、現在の変化にどう対応すべきか、各人自ら答えを出さなければならない状況となってきている。
 この意味において、「キャリア」(関連した職業経験の連鎖)や「キャリア形成」といった言葉が、労働者の職業生活を論ずるキーワードとなりつつある。こうした動きを単に時代の流れに対応させるための受動的なものと受け止めるのではなく、これを契機として個人主体のキャリア形成の動きを積極的に位置づけ、企業や社会の活性化を図る方向に向けていくことが重要である。

 この報告書が発表された2002年と言えば、バブル経済が崩壊して10年、日本経済がその後遺症に苦しむ中、完全失業率が5.4%に達し、完全失業者数が350万人を超えるという最悪の雇用環境に陥った年です。企業収益力が弱体化する中では、「個々人の就業能力の確保は、企業の責任ではなく個人の責任である」という風潮が生まれ始めていました。

 この冒頭の文言は、そんな経済情勢のもと、役所や企業は、求職者や従業員の能力開発を直接的に行うという考え方から、自身の職業人生を自律的に切り拓くことを支援するという考え方にパラダイムを転換すべきだと提言しているように思われます。
 つまり「キャリア」とは、有機的・継続的に加え、主体的・自律的というニュアンスをも包含した概念だと言えましょう。

2.キャリア開発とはどういうことか?

 私がこの「キャリア」という言葉を意識したのは、前職の人材派遣会社で管理部門の責任者をしていた2000年の年末近くのことでした。上司から、「キャリアカウンセラー(正確には、キャリアデベロップメントアドバイザー=CDA)の資格を取ってみないか?」と打診されたのです。

 人材派遣会社には、派遣先と求職者とをマッチングするコーディネーターという職種があります。「CDAは、コーディネーターにうってつけの資格なのでは?まずはあなたが学んでみて、有益であれば全社に取り入れよう」というのが、上司の意図でした。

 その12月から翌年の3月にかけて、CDA養成講座で学んだことは、主に、

  • キャリアカウンセリングの理論的背景
  • キャリアカウンセラーの役割・心がまえ・倫理基準
  • 対人支援をするためのさまざまなスキル
  • 具体的な実施事項や留意事項

でした。
 実際に受けてみると、確かにコーディネーター職として学んだほうがよい内容だと感じられ、ほどなく会社として他の社員にも受講を推奨することになりました。

 しかし、この学びの中で本当に印象深く、役立ったと思ったことは、そのような知識の学習ではなく、さまざまなツールを使って行った「自己理解」という作業・探求でした。

 たとえば、「ライフラインチャート」というツールを使ったこれまでの人生の振り返りや、「バリューカード」というツールを使った自分が大切にしている価値観の意識化・顕在化、「キャリア・アセスメントツール」を使ったパーソナリティー把握や、職業適性診断など、「自分を観る」「自分を知る」ための体験学習こそが、学びの大半を占めていたのです。

 そんな一連の学びを通して私の中に生まれたのは、「私って、〇〇〇だったんだ」というさまざまな気づきでした。その中には、「以前からそう思っていた」ことの再確認もあれば、「へー、そうだったのか。初めて知った」といった、新たな自分との出会いもありました。

 そしてこれらの気づきは、私に、「すべてがつながっている」「すべてに意味がある」という実感をもたらしたのです。 これまでの人生の中での一つ一つの経験は、時々に、ばらばらに、点在しているわけではない。長い年月の中で私自身が見つけてきた「好きなこと」や「得意なこと」、「大切にしている価値観や信念」などを軸としてつながっているのだ・・・という感覚が芽生えたのです。

 すると不思議なことに、今自分がこの場にいること、すわなち、こんな仕事に就き、こんな趣味やライフワークを持ち、日々こんな風に生きていることに、何とも言えない肯定感や安心感が生まれてきたのです。

 そして同時に、これらの気づきがきっかけとなり、自分の仕事や生活、人生について、あらためて深く考える、自問自答する日々が始まったのです。

 このように「キャリア開発」とは、自分自身の内面の探求と、それを通して見つかった「何か」を軸とした経験の意味づけだと言えるのではないでしょうか。仕事に必要な知識、スキル、技能、専門性を高める「能力開発」とは、明らかに次元の異なるものだと感じられます。

 まずは、自分自身や自分を取り巻く世界をどのようにとらえているのかというものの見方や考え方、働くこと・生きることに対する自分固有の姿勢やスタンス、価値観や信念などに気づく。(=これらをひっくるめて、「自己概念」と言います。)そして、その「自己概念」を、環境との相互作用の中で、進化、成長させていく。それが「キャリア開発」であると私はとらえています。

 「キャリア開発」は、だれもが仕事と人生の主人公となり、働きがいや生きがいを感じ、自らの人生を自分らしいものに創り上げている実感を味わえるようになるために、とても大切な取り組みだと思うのです。

3.キャリア開発と管理者

 私が前述の講座によって自己理解を深めることができたのは、卓越したプログラムや教材と、有能で魅力的な講師によるところが大きかったと思います。しかし、思い返してみると、「共に学ぶ仲間たち」の支援こそが、それ以上に大きな影響を与えてくれたように感じます。

 仲間たちは、主に、次のような関わりをしてくれました。

ア)振り返りを手伝ってくれる
・経験を振り返るには、相当なエネルギーが必要です。長い人生の中には、見たくない経験、思い出したくない経験もいろいろとあるからです。そんな時、信頼し、安心して語りかけられる相手の存在は、大きな力になりました。

イ)問いかけをしてくれる
・問いかけは、経験を振り返る際の思い出しのきっかけにもなり、また、思い出した経験が自分にどんな意味を持っているのかを自問自答するきっかけにもなります。仲間たちからの問いかけは、自分の内面に目を向け、内省を深める手がかりになりました。

ウ)フィードバックをしてくれる
・自分では「こうだ」と思っていたことも、他者の視点からはまったく違って見えることが多々あります。私たちは、他人から「あなたは〇〇〇だ」といった判断や評価を突きつけられると、とかく耳をふさぎたくなるものです。しかし、「私にはこう見える」「私にはこう聴こえた」というIメッセージ(「あなた」ではなく、「私」を主語にしたメッセージ)でフィードバックをもらえたことによって、素直に聴く耳を持つことができ、思いもよらない気づきにつながりました。

 仲間たちがしてくれた支援は、まさに、キャリアカウンセラーがなすべき支援です。しかし現実には、組織の中に都合よくそんな存在がいるわけではありません。

 私はこれが、「管理者の新たな役割」なのではないかと思っています。といっても、専門的な訓練を受けたキャリアカウンセラーの役割をやってほしいということではありません。
 では、管理者の皆さんにどんな役割を期待しているのか? 次回はその役割について、より具体的に考えてみたいと思います。

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