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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー21ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー21ー

第21回 これからのマネジャーに求められるもの(1)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 ここまで11回にわたり、マネジャーに必要な素養について考えてきましたが、ここで要点を整理してみたいと思います。

1.5つの技法の本質

○マネジメントに求められる役割を端的に表現すると、「メンバー個々の知識や能力、意欲を統合して、組織全体のパフォーマンスを最大化し、組織として求められる成果を出すこと」といえる。

○このマネジャーの役割を遂行するためには、知識や能力はもちろんのこと、マインドやスタンスなど、多様な素養が求められる。

○ロバート・カッツが提唱する「カッツ・モデル」によると、多様な素養は、テクニカル、ヒューマン、コンセプチュアルという3つのスキルに分類される。人材が豊富でない多くの中堅・中小企業では、マネジャーを選抜する際に、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルよりも、テクニカルスキルを重視する傾向がある。(いわば、「高度なテクニカルスキルを持つスーパー担当者」がマネジャーに登用されることが多い。)

○しかし実際の職場では、特にヒューマンスキルが足りないマネジャーが、部下や関係者との間に問題を抱え込みやすく、その役割を十分に果たせないという事態がしばしば起きる。

○菅野氏(現代マネジメント研究会代表)が提唱する、「管理者に必要な5つの技法」(リーダーシップ、目標管理と評価、コミュニケーション、部下育成、ヤル気の起きる職場づくり)には、中堅・中小企業の管理者に求められるヒューマンスキルのエッセンスが込められている。

 まとめると、ここまで見てきた5つの技法は、中堅・中小企業の管理者が、「メンバー個々の知識や能力、意欲を統合し、組織全体のパフォーマンスを最大化し、組織として求められる成果を出す」ために、必要最低限、習得・習熟しなければならない素養であると言うことができます。
 ではここで、5つの技法の意味をあらためて確認しておきましょう。

 上表を見ていると、5つの技法に通底する「人に対するものの見方」が浮かび上がってきます。それは、「人は自ら動く力を持っている」「人が自ら動く力に任せよう」という信念です。

 「技法」という言葉を聞くと、やや、外側から管理・統制という圧力をかけ、人の思考や感情を操作するようなニュアンスを感じるかもしれません。が、これらの技法の根底にあるのは、そういうものではなく、「人や組織の内面から湧き上がる動機によって、自ら進んで動くようになってほしい」という願いであり、5つの技法は、そのようになるための関わり、働きかけ、しくみや場づくりを表しているように思うのです。

 植物が、肥沃な土壌と十分な水と光があれば、芽生え、成長し、開花し、結実するように、一人ひとりにとってがんばるに値する仕事や課題の付与、周囲の適切な関わり、安心や信頼を感じられる環境があれば、心の底から強くそうしたいと思う気持ち=「内発的動機」が、おのずと発動する・・・・これを目指しているのが、5つの技法の本質であると私は理解しています。

2.キャリアを振り返ることの効果

 先週、地方のあるクライアント(製造業、以下、O社とします)で、管理者研修を実施しました。主な対象者は、30~40代の、製造現場の班長でした。初めて評価制度を導入するにあたり、運用主体となる方々に、制度のしくみと使い方を学んでいただくことが主な目的でした。

 社長はかねてから、「うちの班長たちに、評価の運用なんてできるのか? 面談なんてできるのだろうか?」という不安を口にされていて、この研修に対しても、「やってもどうせ考えない、身につかない」と、それほど乗り気ではありませんでした。とはいえ、製造部の管理職は部長ただ一人。一人で数十人を見るのは無理だし、評価をやるなら班長たちを巻き込まざるを得ないということで、ようやく重い腰を上げられたのでした。

 研修プログラムの骨格は、

1)管理者の役割を考える

2)評価制度のしくみを学ぶ

3)目標の考え方・立て方を学ぶ

4)管理者としての役割を確認する(研修全体の振り返りとまとめ)

というオーソドックスでシンプルなものでした。
 ただ特徴的なのは、研修の導入として、「働く自分、働いてきた自分に、あらためて目を向ける」ワークを取り入れている点です。
具体的には、

強い図1.png

というような問いかけを用意し、一人ひとりに静かに考えてもらった上で、ペアになって話し手と聴き手に分かれて、自分の考えたことを相手に伝える、相手はその話をじっと聴くというワークを行ったのです。
 このようなワークを行うと、たいていの場合、次のようなことが起こります。

 1つ目に、自分が一貫して大切にしてきたこと、価値観や信念、自分を突き動かしている原動力のようなものが、おぼろげながら見えてきます。そして、「過去の自分があって今の自分がいる」「これまでやってきたことが今につながっている」という何とも言えない安心感(私自身は、「地に足がついている感」と言っています)が生まれます。

 2つ目に、「自分は結構がんばってきたじゃないか」「苦しいことやつらいこともたくさんあったけれど、ここまでやってくることができたじゃないか」と、自分に対する肯定的な感情が湧いてきます。「こうしてみると、自分も捨てたもんじゃないな」という、ちょっとした自信が生まれるのです。

 3つ目に、「みんなそれぞれ違っている。それでいて、みんな同じなんだ」という感覚が生まれます。相手の話をじっくり聴くと、その人なりの生き方や考え方が見えてきます。誰にも、自分と同じように、それぞれの生き方や考え方があるのだ、ということが感じられてきます。

 さらに、「彼もいろんなことに悩み、考えながらここまできたんだ」「彼のような人でも、若い時にはそんな風に思っていたんだ」というような共感が生まれ、「悩んでいるのは自分だけではないんだ」といった仲間意識のようなものも芽生えるのです。

 自分のこれまでを振り返って語る。それを真剣に聴いてくれる人がいて、質問やフィードバックをもらえる。たったそれだけのことで、一人ひとりの内面にそんな考えや思いがめぐるのです。

 すると不思議なことに、場の空気が深く学習しようという雰囲気になります。外から注入される知識を受け身に聞くモードから、すべてを「自分事」として取り込んでいくモードに切り替わるとでもいうのでしょうか。

 講師の私は、お堅い内容もぐんと入りやすくなるように感じるのですが、学ぶ内容が、遠くにある難しいものではなく、日常の身近なものに感じられる、自分にとって役に立つものだと感じられるようになるからではないかと思います。

3.キャリア開発と管理者マインド

 研修終了時の感想共有の場では、下記のような声が出てきました。

◆今までこんなことを、あらためて考えたことなかった。(考えてみることができてよかった、というニュアンス)
◆20年前は、自分のことしか考えてなかったのに、今、部下の成長を働く喜びとする自分がいる。組織の中で、人って成長するんだなあ。
◆これからもっと部下と話をしてみたい。部下が何を考えているのか、もっと知りたい。
◆部下のプライベートなことにも、ある程度、関心を持たないといけないのかもしれない。
◆組織の長として、求められる結果ばかりに目が行き、メンバーにもつい「結果」だけを求める指導になりがちだった。メンバーには、結果よりも、その結果に間接的に貢献すること、まずは技術を習得させることを指導していかなくてはならないことに気づいた。etc...

 このような感想は、管理者の役割や、評価制度の枠組みや作法を理屈だけで学ぶ研修では決して生まれないと思います。今回、こうした発言をされた方々は、これからきっと、真摯に部下と向き合う努力を積み重ねていかれることでしょう。

 人にはそれぞれ多様な個性があり、働くことに対する価値観も、何が喜びになるのかも、人によって異なります。そのことを実感していることが、管理者マインドのベースに必要ではないでしょうか。

 研修終了後、「みなさん、よく考えていらっしゃいましたよ」と、社長に報告したところ、「渡辺さんの魔法にかかったんじゃないですか」と言われ、はっとしました。このメニューは、「キャリア開発」という人事施策につながる、最も素朴なワークの一つですが、なるほど、確かに魔法のワークなのかもしれません。

 一億総活躍、多様な働き方、働き方改革が、政府主導で大きなうねりとなっている今、中堅・中小企業にとっても「キャリア開発」という施策が、これからの人と組織の成長・成熟のキーワードになっていくのではないかと思います。
 次回はもう少し踏み込んで、「キャリア開発」について考えてみたいと思います。

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