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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー19ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー19ー

第19回 『マネジャーに必要な素養とは?』(10)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 さて、ここまで、現代マネジメント研究会代表 菅野篤二氏の提唱する「管理者に必要な5つの技法」のうち、「リーダーシップの技法」「目標管理の技法」「コミュニケーションの技法」を取り上げてきました。
 今回はその4つ目、「部下育成の技法」についてご紹介します。

1.部下育成のスキルとは?

 菅野氏は、部下育成の具体的なスキルを、集団に対する育成と、個人に対する育成という観点で整理しています。要約すると下記のようになります。

 組織における教育は、職場内訓練=OJTと職場外研修=OFF-JTに分けられますが、上記のうち、【集団に対するスキル】は主にOFF-JTで、【個人に対するスキル】は主にOJTで使われるものと言えるでしょう。
 これらのスキルには、それぞれに特徴があり、育成する内容と状況によって、効果的なものを使い分けていくことが必要です。

 たとえば、営業活動におけるお客様への対応を学んでもらうには、お客様とセールスマンになる者を定めて実演を行い、参加者全員でその実演を振り返るような、「役割演技法」が効果的でしょう。いわゆるロールプレイングですね。

 また、苦情が発生した場合、その日の夕方など、記憶がホットなうちに「実例研究法」で学ぶ機会を設ければ、組織全体での生きた学びになると思われます。

 事務処理で間違いが発生した際には、「こう訂正しなさい」と指導するよりも、どうして間違ったと思うか、規定・マニュアルを見直して、その原因を考えさせるようにする「原因自覚法」が効果的です。

 一方、事務処理は確実で早いが、笑顔が不足している社員には、「笑顔が不足している」と注意するのではなく、ある場面で笑顔を見せた時、「その笑顔をお客様の前でも見せるといいよ」というように動機づけていく「コーチ法」が、本人の成長につながりやすいのではないでしょうか。

 このように、管理者として、部下育成の機会を見極め、適時適切に部下育成のスキルを使っていくためには、各スキルの特徴をよく理解し、咄嗟に繰り出すことができるよう、十分に習熟しておくことが大切です。

2.部下育成に対する管理者としての心がけ

 ところで、各スキルを理解し、習熟しておけば、部下育成がうまくいくのかというと、そういうわけではありません。その根っこに、部下育成に対する管理者としての考え方をしっかりと持っておくことが大切ですし、しっかりした心がけを持つことでスキルを効果的に活用することができるのです。

 菅野氏は、部下育成に必要な心がけとして、次の5つを上げています。

①日常部下から信頼感を得られる行動を取ること

②部下にアドバイスするという程度で考えていくこと

③自分のレベルで部下に要求しないこと

④部下は教えたとおり理解しているとは思わないこと

⑤相手によって教え方を変えていくこと

 1つ目は、部下から信頼される上司であろうとすることです。部下は、教えてくれる相手を信頼できなければ、何を教えられても耳に入ってきませんし、伝わってきません。教える側と教わる側の信頼関係の度合で、育成効果は大きく変わることを肝に銘じておかなければなりません。

 2つ目は、「教える者」として構え過ぎないということです。上司は、すべての面で部下より優れていなければならないということはありません。「今どき、そんな上司はいない」ことは、組織で働く誰もがよくわかっていることです。

 管理者として教えなければならないという構えを捨て、「ヒントを与える」「アドバイスする」「一緒に学ぶ」「一緒に考える」「部下に聞く」「部下に教えてもらう(教えるには自分も勉強しなければなりませんので、部下の育成が自身の自己啓発に結びつきます)」というスタンスを持つことが、部下の主体性を育むことになるでしょう。

 3つ目は、部下を、いきなり自分のレベルまで引き上げようとしないということです。なんとか早く一人前になってほしいという思いの表れなのか、部下にそんな期待(というより要求)をしてしまう上司を、よくお見受けします。しかし、成長にはステップが必要です。すぐに自分のレベルまで到達しないから、ヤル気がない、能力が低いと思ってしまうのは行き過ぎです。過度な期待が、かえって、部下の成長意欲を阻害することがあることを、よく知っておかなければなりません。

 4つ目は、「自分が教えた=部下が理解した」ではないことを認識しておくことです。上司と部下の間には、理解力にも、仕事に対する考え方、価値観にも差があります。したがって、上司としては丁寧に教えたつもりでも、部下が理解したとは限らないことに留意しなければなりません。  もちろん、一度教えたら身につく「はず」という思い込みも捨てなければなりません。上司には、部下が理解しているかどうかを都度確認しながら、一定の時間をかけて習熟を見守るスタンスが必要なのです。

 5つ目は、部下に応じて、その部下にふさわしい教え方があることを知っておくことです。部下に何かを教える際、部下の行動が変われば、教えた効果が実感できますが、行動がなかなか変わらない場合には、何度も繰り返し教えることになります。

 しかし、行動が変わらない原因は、部下一人ひとりによって異なります。知識が理解できていないから行動が変わらない場合もあれば、知識は理解しているけれど行動に結びつかない場合もあるでしょう。その原因がどこにあるのかを、部下との対話を通して探っていき、その部下にふさわしい教え方を自ら見つけていこうとする姿勢が大切です。

 このような姿勢・スタンスと、各種スキルの理解、習熟があれば、部下育成は、相応の効果を上げていくように思います。

3.部下が育つと職場が変わる

 ここでひとつ、部下育成が効果を上げた事例をご紹介しましょう。
 去年の3月から1年間、毎月1回、管理職研修を行ってきたクライアント企業で、先日、こんなうれしい話を聞きました。

 1年半ほど前に新任管理者となった方(以下、Aさんとします)の話なのですが、管理職研修を始めた頃には、2名の部下との関わりにすごく悩んでいました。

 Aさんは、優秀で仕事ができ、几帳面な印象を与える方です。そのためか、部下に対する要求レベルが高く、部下の能力や仕事ぶりがなかなか高まっていかないことを嘆いていました。ちょうど私が訪問した際に、部下の大きな失敗が原因で、返品や納期遅れのトラブルが起き、どうやってリカバリーしようかという深刻な事態になっていたこともありました。

 ところが先月の研修時に、Aさんが、「自分のチームが、今とてもいい状態にある」ということを話してくれたのです。この会社は、半年前に、目標管理と職務行動評価をアレンジした「成長支援制度」というものを導入したのですが、Aさんは、そのツールを媒介に、毎月1回、部下2名との面談を欠かさずやってきたそうです(ちなみに、月1回の面談は、制度のルールとして会社が定めたわけではなく、Aさんが、自ら始めたことです)。

 そうすることで、従来不足していた部下とのコミュニケーションの機会が増え、情報交換や意思疎通ができるようになってきました。その結果、情報伝達不足(伝えたつもりが伝わっていない)で生じていたミスやトラブルが少なくなったばかりでなく、部下が本当に何を考えているのか、その思いに目が向くようになったことで、関係性もよくなったとのことでした。

 まさに、「①日常部下から信頼感を得られる行動を取ること」「③自分のレベルで部下に要求しないこと」「④部下は教えたとおり理解しているとは思わないこと」などを心がけて、部下に向き合っていたことが感じられました。

 管理者が、このような姿勢・スタンスに立ち、効果的なスキルを活用しながら真摯に部下と向き合い続ければ、部下は少しずつ着実に育っていくことを、管理者自身が実感された良き事例だと思います。

 もちろん、部下の変化・成長は、まだその兆しが見えたに過ぎず、十分に成長したと言えるまでには、まだまだ長い道のりがあるでしょう。しかし、このような姿勢・スタンスを持って取り組みを継続していけば、それは、能力の習得や習熟、仕事ぶりの変化だけにとどまらず、やがては、より内面的な成長にもつながっていくことが期待されると思います。

 内面的な成長とは、組織の一員として組織にどのように貢献していけばよいかを、自ら考え、内省と学習を繰り返す者になっていくことです。

 それこそが、本当の意味での組織における部下育成の効果であると私は思っています。そして、そこに至るまでには、Aさん自身もさらに広く深く、管理者としてのマインドやスキルを学び、練習し、実践していくことが必要になるでしょう。そのことはまた、別の機会に考えてみたいと思います。

 さて、このような一人ひとりの部下の成長は、やがて職場全体に良き影響を及ぼし、組織の大きな力として結集することにつながっていくはずです。
 次回は、菅野氏の提唱する5つ目の技法である「ヤル気の出る職場づくりの技法」について、これまでの4つのテーマとも関連づけながら考えていきたいと思います。

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