第186回 当社従業員が他社で副業をした場合の割増賃金支払い義務について-1-
中川恒彦の人事労務相談コーナー
今回は、行政が推進している「副業・兼業」に関する実務的な問題を取り上げます。
副業・兼業によって労働時間が8時間を超えた場合、時間外労働の取り扱いはどうなるのか?割増賃金の支払い義務者はどちらになるのか?兼業・副業による長時間労働の歯止めは誰がするのか?
これらの疑問に対する行政の対応は、は兼業・副業を推進しながらも、これらの問題に対して全く不十分なものにとどまっています。兼業・副業に関する本質的な労務問題に鋭く切り込みながら、具体的な対応策について検討していきます。ぜひご確認ください。(ホームページ編集部)
Q
行政は、労働者に副業・兼業を推奨しているように見えます。
ところで、今後のためにお聞きしておきたいのですが、当社従業員が当社での勤務終了後他社で労働した場合、その日の労働時間が8時間を超えることになります。その場合の割増賃金支払い義務は当然その他社が負うべきと思いますが、それでよろしいでしょうか。
また、当社の休日を利用して、当社従業員が他社で勤務した場合も同様に考えていいでしょうか。
A
「労働時間は、事業場を異にする場合も通算」されますから、2つの事業場での労働時間を通算して8時間を超える場合は割増賃金支払いの義務が生じます。
日中にA社で8時間労働した労働者を、B社が夜間にたとえば4時間労働させた場合、通常はB社が割増賃金支払い義務を負いますが、労働者がB社と先に労働契約を結んでおり、その後A社でも働くようになった場合は、A社が割増賃金支払い義務を負うことになります。その他にも、A社が割増賃金支払い義務を負うケースがあります。
8時間労働で週休2日制のA社で月曜から金曜まで勤務し、休日である土曜日にB社でアルバイト勤務をした場合、B社は当該労働者に対し時間外労働割増賃金の支払い義務を負います。
〔解説〕