第131回 定額残業手当は労働者が年次有給休暇を取得した場合にも全額支給すべきか
中川恒彦の人事労務相談コーナー
定額残業手当を毎月定額で定めている場合、年休取得分の金額を差し引くことは不適切であると考えられます。
今回は、関連する裁判例を紹介しながら、意外と勘違いしやすい、定額残業手当の控除に関する考え方について解説していきます。(ホームページ編集部)
Q
当社は定額残業手当制を導入しており、適用対象者には基本給に加え、毎月30時間分の定額手当を支給しています。
この定額残業手当は、労働者が年次有給休暇を取得したときにも全額支給しなければならないのでしょうか。
前回の本コーナーで、「年次有給休暇に対する賃金として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を支払うこととしている場合には、裁量労働制に関する協定に基づき支払うこととなっている割増賃金を支払う必要はない」と回答されていましたが、定額残業手当も残業手当であり、年休を取得することによってその日に残業をしていない以上、1日分に相当する定額残業手当を差し引いてもよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか?
A
労働基準法39条は年次有給休暇に対して3種類の賃金を定め、そのいずれかの賃金を支払うべき旨定めているので、年次有給休暇に対する賃金としてはそれによって支払えばよく、定額残業手当は支払いの対象とはなりません。
しかし、定額残業手当は1日ごとの時間外労働時間に対して支払われるものではなく、月間の時間外労働全体に対して支払われるものですから、 1日ごとの欠勤や年休取得を理由としてカットできる性格の賃金ではないと考えられます。