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第14回 報酬システム(6)役割責任に基づく昇格・降格

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第14回 報酬システム(6)役割責任に基づく昇格・降格

 第13回では、「ゾーン型賃金表」の特長について説明しました。

今回は、賃金管理とも関係の深い等級異動(昇格・降格)について考えを述べていきます。

 

報酬システム(6) 役割責任に基づく昇格・降格

(1)昇格・降格の人事が経営を左右する

 昇格・降格の運用は、組織上の役割責任に従わなければなりません。つまり、上位等級に相当するより大きな役割責任についた場合や、つかせる場合にのみ昇格させるということです。

 任せる仕事や組織、果たしてもらう責任も無いのに、「勤続年数が長いから」「多くの同期が課長になっているから」などといった処遇上の理由のみで昇格させるのは間違いです。そのようなことをしては、単に人件費の膨張を招くだけでなく、組織に混乱をもたらします。

 例えば、同じ部の中に、課の組織を率いる本物の課長と、 部下もいない肩書きだけの課長とが同じ等級で混在していたらどうなるかを考えてみてください。

 果たしてこの二人を同じ役割責任とみなしてよいのでしょうか?二人の評価や賃金は、同じ土俵のうえで決めてもよいのでしょうか?このようなことをしたら、たちまち頭を抱える問題になることが分かるはずです(等級制度については、第11回もご参照ください)。

 一般的な能力主義の人事制度では、昇格したときは基本給や資格給なども昇給するのが当たり前のように受け止められています。

 しかし私たちが推奨する役割責任と実力に基づいて基本給を決める仕組みでは、昇格させた場合でも、直ちに大幅な昇給(昇格昇給)を行うは必要ありません。

 基本的には昇格前の基本給と同額のまま上位等級の賃金表に読み替えます。上位等級の賃金表と同じ金額がない場合には直近上位の金額とします。

 ただ「昇格した」ということだけでは自動的に優遇せず、むしろ上位等級では仕事や目標をハイレベルなものに変え、評価基準も厳しくするのです。その中で実力のある社員と競争させ、それでも良い成績を収めて実際に頭角をあらわしてきたら優遇すればよいのです。

 一見すると、昇格昇給もなく、競争相手も厳しくなるのでは、社員にとって昇格するメリットが何もないように思えるかもしれません。

 しかし前回紹介した「ゾーン型賃金表」は、上位等級に移ると、賃金表の号差金額も大きくなります。そのため、昇格して成績がよほど悪くならない限り、1年後の昇給額は、昇格以前と比べて大きくなるはずです。

 将来的な昇給余地も下位等級で滞留するよりも大きくなるので、昇格に対する報奨効果は十分にあるのです。

 昇格とは反対に、役割責任をはずれ下位等級の仕事に付かせる場合には、下の等級に異動させます。

 厳しいと感じる方もいらっしゃるでしょうが、組織編制の原則に照らして考えればそれが最善の選択となりますし、人事や賃金の正当性を保ち、適切な運用を行うということから考えても、それが最善の決定です。

 下位等級に異動させにくいとお考えの方は、おそらく、2つのことを懸念されていると思います。1つは等級異動と同時に基本給が下がるのではないかということです。

 私たちが推奨する「ゾーン型賃金表」では、等級が下がったからといって直ちに降給にはしません。昇格とは逆に、下位等級の賃金表の同額または直近下位の金額に読み替えるだけです。

 下位等級の仕事を1年間やってもらい、その評価に基づいて昇給か降給かが決まるのです。この場合、すでにある程度基本給が高くなっていた人が降格になると、下位等級の賃金表上では相対的に高いゾーンに位置づけられます。成績もそれに見合う高い水準が求められ、そこで低い評価しかとれなければ、残念ながら賃金はマイナス調整されることになります。

 ただし、降格になったことで任せられる仕事のレベルは下がっているはずですので、上の等級では実力が発揮できなかった人でも、下位等級では十分に実力を発揮できる可能性があります。その場合は、今までの基本給を維持できる可能性も十分あるでしょう。

 このように、昇格イコール賃金アップ、降格イコール賃金ダウンと決めつけるのではなく、役割責任に対して発揮した実力に応じて基本給を運用していくやり方のほうが、社員のやる気と緊張感を引きだす働きがあることがお分かりいただけるでしょう。

 2つ目の懸念は、社員の能力が下がったわけでもないのに等級は下げられない、等級を下げると能力が落ちたという判断を会社がしたと思われる、ということではないでしょうか。

 この点は、役割責任と能力評価は別物であるということを、経営者も社員も十分に認識しておく必要があります。私たちが推奨している責任等級制度は、能力にランクをつけて等級を決めるものではありません。

 任されている仕事の役割やその責任によって等級を決めますので、事業の再編や組織体制の変更により、仕事の役割や責任に変化があれば等級も当然に変わるものです。それは能力が上がった、下がったということとイコールではなく、あくまで任されている仕事がどう変化したかということなのです。

 仮に課長を任せられるくらいの能力がある社員がいても、課の責任者としての仕事がなければ課長という役職や待遇を与えることはできません。

 そして、プライムコンサルタントが推奨する賃金表では、上の役職や等級になれなくても、与えられた仕事で成果を出し責任を果たせば、ある程度は上位等級並みの賃金をもらえるようにしていますので、昇格・昇進できないと賃金が上がらないという不満は起きません。

 ところで、昇格・降格のどちらも、配属と並んで組織管理の最重要事項の1つであり、社員はその人事に敏感に反応します。昇格にも降格にも細心の注意を払い、本人の実績と将来性を十分に配慮して決定しなければなりません。

 人事の決定ほど経営トップや部門責任者の価値観を如実に表すものはありません。人事の決定は、組織全体に象徴的な、強力なメッセージを発信するものですから、決して情実や年功、学歴などで安易に決定してはいけません。

 経営者は、将来の経営を担う人材を真剣に育て、その上で誰もが「なるほど、あの人なら納得できる」と認める昇格人事が行えるように、全力で取り組む必要があります。


 次回は手当についての考えを述べたいと思います。


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