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第11回 報酬システム(3)

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第11回 報酬システム(3)

第10回では、賃金表と評価基準という賃金決定のツールについて、その意味、考え方を述べました。
第11回は、人事制度の中心となる等級制度について、私たちが推奨する「役割責任」を軸とした等級制度の考え方を解説したいと思います。

報酬システム(3)

(1)報酬システムの構築・運用

 何十人、何百人、何千人という従業員の毎年の賃金を決めるには、報酬システムが必要不可欠です。

 皆さんの会社の報酬システムは、どのようにして構築され運用されていますでしょうか?

 昔からあるものを使っているのでどういう経緯で作られたかわからないという方もいれば、一生懸命に悩みながらシステムを構築された経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 通常、我々がお手伝いをさせていただく場合、次の三段階の手順を踏んで 報酬システムの構築・運用を行います。

 まず初めに、組織が必要とする等級制度を整備し、等級格付を行います。

 等級制度とは、配分・育成・評価・賃金決定などの人事管理を行うために従業員を区分する基準のことで、従業員一人ひとりをその基準に当てはめて等級格付を行います。

 基準の中で等級の位置づけが上がることを昇格、その逆を降格といいます。

 次に、等級別に賃金表を設定します。その会社の従業員の賃金実態、将来的な支払い能力、世間相場に照らして、それぞれの会社にふさわしい水準を設定します。

 基本給だけでなく、諸手当の支給基準も見直し、一人ひとりの賃金の移行措置を決めていきます。報酬システムの設計で最も気を配り、手間をかける部分です。

 報酬システムができあがったら、いよいよ実際に個別賃金の運用を開始します。

 等級ごとに従業員の貢献度を定期的に評価し、毎年の賃金決定や等級異動を進めていきます。

 賃金の昇給・昇給停止・降給、そして等級の昇格・降格が一人ひとり決定され、その人にふさわしい賃金表上の位置に段階的に移動させていきます。

 こうして、個別の賃金だけでなく総額人件費の合理的な配分を組織的に管理できる仕組みが整います。

 このように、報酬システムを構築するには、最初に等級制度の整備が必要になります。賃金表の設定や運用については次回に詳しく述べます。 

(2)等級は能力ではなく仕事中心に決める

 上述のように、等級制度とは、組織的な人事管理を行うために従業員を区分し昇格や降格を運用する制度のことです。

 実際問題として、従業員全体を単一のグループとして扱うことや、逆に全員をバラバラの存在として扱うことは人事管理を進めるうえで不便な場合が多く、そのため、従業員をいくつかのランクに区分することが一般的に行われています。

 等級制度はそのランク分けのルールによって、大きく3つの種類があります。

 1つは、従業員の職務遂行能力で区分する「能力等級(職能資格等級)」です。多くの日本企業で採用されてきたもので、ひょっとしたら自社でもこの制度を使っているという人が多いのではないでしょうか。

 2つ目の職務等級を実施するには、職種1つ1つの仕事の内容を具体的に列挙した職務記述書を作成し、これに賃金額を対応づける手続きが必要です。

 しかし日本では、そもそも企業と従業員の契約関係は包括的かつ長期的であることが前提のため、個々の仕事ごとにこのような文書を作成したり、賃金を合意したりする習慣がありません。

 また、職務等級の場合、配置する仕事によって賃金が違ったり、仕事内容が変わると賃金が上下したりする場合もあるため異動させづらく、組織や人事が硬直的なものになる可能性があります。 

(3)役割責任を明確にする等級制度

 どのような等級制度であろうとも、従業員が仕事においてより良い成果をあげ組織に貢献するには、仕事の目標は何か・自分の責任は何か・どのような貢献が求められているのか・成果を上げたらどのように評価されるのか、ということを知っておく必要があります。

 そして、このことを従業員がきちんと理解するためには、明瞭な組織編制であることに加え、組織における個々人の役割責任が明確になっていることが必須条件となります。

 組織編制や組織内の責任体制がわかりにくいと、指揮命令系統も曖昧になりがちです。

 さまざまなことが不透明な状態では仕事も評価しづらく、従業員の力を成果に向けて十分に発揮させることができません。

 個々人の役割責任に焦点をあて、役割責任に基づいて等級を決める方式をとることで、このような問題を抜本的に改善する糸口をつかむことができます。

 では、責任等級による人事制度を作り上げるにはどのような手順を踏む必要があるのでしょうか。

 まず行うことは、「組織の棚卸し」です。個々人の組織における仕事のポジション、上司・部下の関係、指揮命令系統と仕事の範囲を整理し、そこに改めて人を配置します。

 そして、それぞれの役割責任の段階に応じて大くくりの等級を決め、役割責任を定義します。ここでは、全社共通のものとして幅広く定義しておくほうがよいでしょう。

 定義の中身は、役職階層・職位段階に求められる組織上の役割、職責、課題解決の方向性を一般的に定めておけば十分です。

 能力で等級を決めるわけではないので、職種別に能力を定義するようなことはありませんし、必要もありません。

 そのうえで、半期または一年ごとの具体的な目標を立て、求める仕事の成果と責任を明確にします。目標は、等級の高さにふさわしいものとし、達成すべき仕事や成果の基準も定めます。

 この目標は、営業所長の目標や商品開発担当者の目標、人事部長の目標といったように個別に設定し、達成度合いを評価します。

 求められる能力、知識、スキルは時代とともに変化しますし、仕事の進め方、システムも常によりよいものへと変化が求められます。

 実際の業務との関連が分かりにくい能力や、固定的な職務記述書の仕事の内容などで等級を決めるのではなく、役割責任に応じて等級を決め、具体的な目標や評価基準をその都度決めていく方が実際的であり、流動的な仕事の実情に合っています。 

(4)責任等級による等級格付けと報酬

 一般的な職能別組織のもとでは、組織階層と役職、等級は三位一体的に対応づけることが原則です。

 例えば営業部門に複数の営業所がある場合、それぞれの営業所の所長の役割責任はほぼ共通だと考えてよく、営業所長は原則、同じ等級となります。

 ただし、等級が同じだからといって賃金まで同じにする必要はありません。

 等級は組織階層や役職に連動して決めますが、各営業所長には実力の違いがあるはずです。発揮された実力を評価し、賃金表の中で実力にふさわしい賃金の位置に近づけていきます。

 役割責任に応じて等級を決め、発揮された実力によって賃金を決める以上、個人の処遇のための等級や役職は必要ありません。

 組織は人の処遇のためにあるわけではなく、成果をあげるため、市場・顧客に向かって作らなければなりません。

 役割責任の違いがはっきりしない中間的な職制は設けず、組織階層もできるだけシンプルなものにすることをお奨めします。

 中規模企業の場合、上位の役職階層は部長クラス、課長クラス、係長・職長クラスの3階層が基本形です。小規模企業であれば、部長クラス、課長クラスの2階層でも十分です。

 その下の一般従業員の階層は、指導職(熟練業務)、担当職(判断業務)、一般職(定型業務)の3階層が妥当なところだと思います。

 このようにして等級を区分し、そこに従業員を格付けしたら、次は賃金表を設定していくことになります。

 次回は、賃金表の設定と基本給の運用について解説していきたいと思います。

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