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第15回 報酬システム(7)諸手当の役割

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第15回 報酬システム(7)諸手当の役割

第14回では、責任等級制における昇格・降格についての説明をしました。

今回は、毎月の賃金を考えるうえで切っても切り離せない、諸手当について考えていきます。

報酬システム(7) 諸手当の役割

(1)基本給と諸手当の役割

 毎月の賃金を大きく分けると、基本給と諸手当に整理されます。
 基本給とは、主に役割責任や実力などの「仕事の質」の要素に応じて決定するもので、所定労働時間に対応する固定給の中心と位置づけられます。

 それに対して諸手当は、賃金の変動的な問題や一部の従業員だけの問題を受け止め、基本給を補完する重要な機能を持っています。具体的には、基本給がカバーしきれない「仕事の量・種類・場所」、「生活条件」という4つの要素を賃金に反映するためのものです。

 基本給の面倒な運用を避けたいと思ってからか、基本給はおざなりな年功的な運用で済ませ、手当によって細かな処遇差をつけている会社を時々見受け ます。
 しかしこのような本末転倒のやり方ではかえって賃金体系が複雑になって運用が難しくなります。実際、自分たちではもはや整理できないほどに手当項目や金額が膨らんでいるケースも少なくありません。

 基本給と手当の役割の違いをしっかりと認識し、それを上手に使い分けることが、限られた人件費を効果的に使う上でも大事なポイントになります。

(2)手当の使い分け

 前述のように、諸手当は「仕事の量・種類・場所」、「生活条件」という4つの要素を反映させるものです。

 1つめの「仕事の量」に対応する手当とは、主に時間外・休日・深夜勤務手当のことです。これらは労働基準法にも詳しく規定されており、当ホームページの連載「中川恒彦の人事労務相談コーナー」でも取りあげる予定ですので、ここでは詳しく述べませんが、法定の労働時間を超えた労働時間について、割増賃金を支給するという形が基本です。

 また、この時間外割増賃金と併せて考えるべきものが管理職手当です。時間外・休日の割増賃金が適用されない管理職には、一般社員の賃金との逆転現象が起きないように配慮する必要があり、管理職手当はその役割を担っています。
 この管理職手当の額が低すぎると、いわゆる「名ばかり管理職」問題に発展する恐れがあります。

 2つめの「仕事の種類」に対する手当とは、特殊な技能・資格を持つ社員や、特に負担の大きい作業をする社員に対して支給するものです。
 例えば、税理士や医師・看護師・薬剤師などの資格所有者、粉じん・高温など作業環境の悪い職場に勤める従業員、有害・危険物質を扱う作業を行う従業員などに支給する場合があります。

 3つめは「仕事の場所」に関して支給される手当です。代表的なものとして地域手当があげられます。
 大都市と地方では物価事情の違いなどから賃金水準にも格差があります。事業所が各地に分散している会社では、賃金水準の低い地域に合わせて賃金表すなわち基本給を設定し、賃金水準の高い地域には地域手当をつけて調整すると、人件費の節約につながります。
 ただし、人事異動に伴い地域手当も増減することとなりますから、運用には注意が必要です。特に、減額になる場合は、ある程度の調整期間をおく必要があります。

 4つめは「生活条件」に関する手当で、代表的なものとして家族手当や通勤手当などがあげられます。
 日本では新規学卒初任給からスタートし、徐々に昇給していく長期雇用型の賃金システムが一般的で、いまでも、賃金は年代に応じた必要生計費に配慮されるものだという考え方が残っています。そのため、家族を形成する年代層では、家族手当は一定の効用があります。

 家族のことは直接的に仕事とは関係がありませんが、必要生計費に対する従業員満足度ということを考えると、特に基本給を高く設定できない企業は、配偶者には1万5,000円~3万円程度、子どもは1人つき5,000円~1万円程度を支給すると支給効果があるはずです。

 家族手当以上に広く普及しているのが通勤手当です。
 こちらも仕事と直接的な関係はありませんが、給与課税から免除されるため支給することが半ば常識のようになっていますので、支給しないと、従業員満足や採用競争の面で若干不利になると思われます。

 しかし、無条件に全額を支給する必要はありません。税法上の非課税限度額は10万円となっていますが、自社の通勤事情にあった適切な上限額を設けたほうがよいでしょう。

(3)諸手当はシンプルに最小限で

 これまで、4つの手当の分類とそれぞれ代表的な手当名をあげてきましたが、一般的には、本稿であげている手当で足りるはずです。
 手当の設定の仕方ひとつで社員に大きな影響を与える場合もありますので、特定の個人のみを対象とした属人的な手当や、支給目的の不明確な手当を安易に設定・支給するべきではありません。

 例えば、班長・主任・係長・課長代理・・・などの細かな役付手当を設定し、必要以上に社員に序列意識をつけたり、営業や配送、生産、事務などの職種ごとに細かな手当の設定を行ったりしている場合があります。

 これらは、社員の意識を組織全体の成果ではなく組織内の序列に向かわせ、人事の硬直化を招く遠因にもなります。前回まで説明してきた、役割責任と実力に応じた基本給が支給されていれば、このような細かな手当は不要になります。

 管理職手当にしても、十分な処遇や役割・権限もなく、ただ時間外手当を支給しなくてもよいという安易な考えで管理職扱いにしたのでは、社員も働く動機を失いますので厳に避けるべきです。

 会社のコスト削減を優先するあまり、組織全体の成果に向かう意欲を失わせてしまっては、せっかくの人材も、支払った賃金も無駄になりかねません。

 手当はできるだけシンプルにし、支給するにしても、基本給を通して社員に伝えたいメッセージを第一優先におき、必要な手当と不要な手当を見極めてメリハリのきいた支給基準を設定すべきでしょう。

次回は賞与についての考えを述べたいと思います。

 連載の内容は、『原因×集中×結果の人材マネジメント方程式』(菊谷寛之著)に詳しく書かれています。興味を持たれた方は、当社のホームページからお申込み・ご購入ください。

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