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採用・提出書類

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採用・提出書類

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(5)

Q

当社の就業規則の第二章は「採用・異動」です。募集や採用に関して、就業規則ではどのようなことを規定すればよいのでしょうか?

A

まず、従業員の採用について考えてみましょう。その会社が新規従業員を募集して採用する際の「募集基準」、「選考方法」、また「採用方法」を就業規則に事細かく記載することも考えられますが、「会社は、入社を希望する者の中から選考し、所定の手続きを行ったものを従業員として採用する。」といった簡潔な記載に留めておくのが無難だと思います。

 そもそも 募集・採用については企業側に採用の自由が保障されていますし、就業規則は基本的には従業員としての地位を確保した者を対象にするわけですから、ことさらに条項を加えて採用の自由を会社自らが制限する必要はないと考えます。

 むしろ、パートタイマーは年齢○歳までとか、職種によっては女性(又は男性)で年齢○歳までといった記載は、「雇用対策法(平成19年6月改正)」や「男女雇用機会均等法」に違反することにもなりますので、記載してはならない内容になります。

Q

採用に際しての提出書類については、どの就業規則にも記載があると思いますが、どのような点に注意すればよいでしょうか?

A

提出書類については任意的記載事項ですが、おっしゃるように、どの就業規則にも記載があると思います。

 これについては、
1) 採用選考段階で提出すべきもの
2) 採用決定時に提出すべきもの
とを、それぞれ分けて記載することも考えられます。

 例えば、「履歴書」は採用選考段階で提出させるでしょうし、「誓約書」や「身元保証書」は採用が決まってから提出させることになります。これらを分けて書けば丁寧でわかりやすいともいえますが、就業規則はあくまで採用された者に適用することが趣旨ですから、必ずしも分けて記載しなければならないとは思いません。

 就業規則には「(採用決定後の)提出書類」として一括に記載し、「ただし、選考に際し提出済みの書類については除く」等の記載で足りると考えられます。

Q

それでは具体的には、どのような書類を記載すべきでしょうか?

A

一般的には、次の3つは必ず提出させることになるので記載しておきましょう。

1)履歴書
2)住民票記載事項の証明書
3)年金手帳、及び雇用保険被保険者証(前職のある者)

 1)の履歴書は会社が本人の能力を評価する上での基本的資料です。
 もし、その記載内容が事実と相違していれば会社と本人との信頼関係を維持することは困難になるでしょう。
 従って、経歴詐称は懲戒事由になり、特に最終学歴、職歴など重要な詐称については、懲戒解雇事由になる場合もあります。

 2)を住民票又は戸籍抄本としている就業規則がありますが、「住民票記載事項の証明書」とするのが正しい記載といえます。
 この書類は、あくまで本人の住所、年齢等(履歴書に書かれた内容)が正しいことを確認することが目的で、必要もないのにそれ以上の内容が記載された住民票や戸籍謄本等の提出を求めることがないように、行政からも通達が出されています(理由は、「就職の差別をなくす」ため)。

 3)の年金手帳(パートタイマー等で社会保険に加入しない場合は不要)や雇用保険被保険者証(前職がある場合)は、会社が厚生年金や雇用保険の資格取得手続きをする上で必要になります。

 この他には、4)身元保証書、5)誓約書、6)最終学歴の卒業(見込み)証明書などを提出させることが多いでしょうから提出書類として記載しておくと良いでしょう。

 更に、健康診断書、所得税の源泉徴収票(入社年に給与所得があった者)、給与所得の扶養控除等申告書、免許証や資格・技能講習修了証の写、通勤経路図等も提出書類とすることが考えられます。
 ただし、網羅的にたくさんの書類の記載をしてしまうと、雇用する労働者(例えばパートタイマーなどの非正規労働者)によっては不要になることもあるでしょう。その場合を見越して、「会社の判断で一部が省略できる」旨の記載をいれるとか、すべてを網羅的に記載することはやめて、労働者共通に必要な書類のみの記載に留めておくことも考えられます。
 いずれの場合でも、提出書類の最後に、「その他会社が必要とする書類」という記載を必ず入れておきましょう。

 なお、提出書類の提出期限については、「採用後2週間以内」といった記載を見かけますが、これでは少し遅すぎるので、「入社後1週間(又は5労働日)以内」程度にするのが適当でしょう。

Q

身元保証書の提出は必要でしょうか。以前、なかなか提出しない社員がいて苦労したことがあるのですが?

A

「身元保証書」を提出させるか否かは会社の判断になりますが、私はなるべく提出させた方がよいと考えています。身元保証については、身元保証人が極端に不利な立場に立たされることがないように、「身元保証に関する法律(昭和8.4.1法律第42号)」が定められていて、身元保証契約の期間については5年以内(期限の記載がない場合は3年)と決められています。(更新することは可)

 身元保証は、保証人が従業員本人の人物や素行を保証し監督するという趣旨ではなく、従業員が会社に損害を与えた場合にそれを賠償することを目的にしています。
 従って、保証人は経済的に独立した者2名で、そのうち1名は父母兄弟などの近親者とする会社が多いようです。

 身元保証書の提出は例えば金融機関や経理担当のような業種や職種によっては必ず提出させる場合があるでしょう。
 一方、新卒者や若年者などに対しては社会人としての自覚と注意喚起の意味で身元保証書を提出させることには意味がありそうです。
 原則は提出させる書類としておき、労働者によっては個別に省略できるように運用するのも一つの方法かもしれません。

 なお、身元保証書を提出させた場合には、その後、従業員の任務や任地が変更になった場合、また業務上不適切または不誠実な行動があって、身元保証人の責任が引き起こされるおそれがあることが分かった場合などには、会社は身元保証人に速やかに通知する等の処置をとることが求められますので、その点も留意してください。

Q

採用時に誓約書をとるのは有効でしょうか?

A

「誓約書」は入社にあたって守るべき約束事項について記載し、それらの事項について遵守することを新入社員自らが誓約するものです。入社後の労使トラブル防止の上でも効果がありますし、誓約させることで個人情報、企業秘密等の漏洩を防止する効果も高まります。

 入社時に「就業規則を始めとする会社の諸規則・ルールを遵守する」と誓約させることは重要な意味があると考えますので、必ず提出させることをお奨めします。

 次回は、「労働契約の締結と労働条件の明示」について解説します。

今回のポイント

  • 「採用の基準」「採用の方法」は簡単な記述に留める方が無難
  • 採用時の提出書類では、履歴書、住民票記載事項の証明書(「住民票」は誤り)、年金手帳、雇用保険被保険者証など必要なものを列記し、最後に「その他会社の必要とする書類」を加える
  • 採用時、身元保証書や誓約書はできるだけ提出させることが望ましい

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