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前文・総則の構成とパートタイマー用就業規則

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前文・総則の構成とパートタイマー用就業規則

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(4)

Q

当社の就業規則の第一章は「総則」です。通常、どのような構成になっているのでしょうか?

A

総則の内容については、一般的には、「目的」「規則遵守義務」「適用範囲」「従業員の定義」等といった構成になります。また、総則の前に「前文」をおいて、企業理念や就業規則に対する基本的な心構えを記載することも あります。

例:(前文)
この規則は、当社創業の精神「 ・・・  」に則り、従業員の福祉の向上と社業の発展を目的として制定されたものであって、会社と従業員は、それぞれの担当する経営、職務について責任をもって積極的かつ誠実にその業務を遂行することにより、この目的を達成しなければならない。

 労基法では「①労働条件は労使が対等の立場において決定すべきものである。②労使は労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」との規定があります(労基法2条)。
 上記例のような前文もこの労基法の精神に則った訓示規定と考えられます。もちろん「前文」は任意的記載事項ですから、置くか否かは任意に決めて良いのです。

Q

当社の就業規則第2条(目的)には「この規則に定めのない事項については、労働基準法、その他法令に定めるところによる」という記述があります。

A

 就業規則に労基法や労働安全衛生法(以下、「安衛法」。)はじめ労働条件に関する多くの法令をすべて網羅することはできないので、これを補完するためにこのような記述を入れる場合が多いです。

 このような記述がなくても、労基法や安衛法は労働条件の最低基準として必ず存在するわけですが、もしこのような記述を入れる場合には法令の内容はもちろんですが、関連する通達の内容も優先解釈され、それらが就業規則に定めたのと同様に扱われることになると考えられます。その点、会社としては労働条件に係わる法令、過去の通達による解釈等をきちんと把握しておくことが大切だと思います。

Q

当社の総則にある「適用範囲」の規定には「正社員に適用する」と限定していて、パートタイマー、アルバイトは除外しています。そしてパートタイマー用には特に就業規則等は作成していないのですが、これは問題なのでしょうか?

A

就業規則はその事業場で働くすべての労働者について定めをする必要があります。

 正社員とパートタイム労働者を合わせて常時10人以上の労働者がいて、そのうち正社員に適用される就業規則はあるがパートタイム労働者に適用する就業規則がないのであれば、作成義務違反になってしまいますよ。
 パートタイム労働者のように勤務の態様が正社員と異なるのであれば、正社員に適用される就業規則とは別個にパートタイム労働者用の就業規則を作ると良いと思います。

 しかし、パートタイム労働者の数が少ないなど別個に作るのが大変な場合などは、就業規則の適用範囲で「パートタイム労働者、臨時に雇用された者の就業に関する事項は別に定め、定めの無い事項はこの規則を準用する」といった形の記載にしても問題はありません。
 ただし、このように正社員の就業規則をパートタイム労働者等にも準用する形にすると、どうしても範囲が曖昧になりやすく、本来適用対象外と考えていた規定まで適用対象になってしまうリスクも考えられます。  ですから、準用するのであれば、正社員用の就業規則の中でパートタイム労働者にも準用する条項を明確に規定した方がベターと考えられます。

 結局、そこまで規定しなければならないのならパートタイム労働者用の就業規則を別途作成するのと手間は大差ないかもしれませんね。
 就業規則は個々の労働者との労働条件を定めることにもなることから、できたらパートタイム労働者や嘱託などそれぞれの雇用形態に応じて別個に作成することをお勧めします。

Q

パートタイマー用の就業規則を作る上での留意事項などがあったら教えてください。

A

パートタイム労働者用に独立した別規程にする場合には、正社員用の就業規則をベースにして共通に適用すべき部分は残し、内容の異なる部分については作成・修正・削除するといった方法が良いでしょう。

 共通に適用する規定については、将来正社員の就業規則で変更があった場合は、パートタイム労働者用の就業規則にも同様に反映が必要になります。  別規則として作る場合には、こういったメンテナンスにも十分注意が必要になりますね。

 なおパートタイム労働者用の就業規則については、正社員用規則の場合と同様に事業場の過半数労働者等の意見聴取(労基法90条)は必ず必要ですが、それに加えてパートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聴くこと(パートタイム労働法7条)という努力義務が課せられているので、ぜひ覚えておいてください。

 ところで、正社員とパートタイム労働者では賃金・賞与、福利厚生面など労働条件・処遇に種々の差があると思います。
 改正パートタイム労働法(平成20年4月施行)では正社員との差についていくつかの事項(「待遇の決定についての説明義務」、「均衡のとれた待遇の確保の促進」「正社員への転換の推進」等)が盛り込まれていますので、改正法の趣旨に沿ったパートタイマー就業規則になるように留意してください。

Q

当社では正社員と同じ時間働く、いわゆるフルタイムパートがいて「短時間で使用される者」とはいえない場合もあるのですが?

A

そのような労働者がいる場合は、正社員とそれ以外の社員(非正規社員)の定義をきちんとしておかないと問題になりますね。

 例えば自分は短時間勤務ではないので正社員用の就業規則が適用され、正規の退職金ももらえるはずだと主張されるリスクが考えられます。

 いわゆるフルタイムパートがいる場合の非正規社員の定義では、単に「正社員よりも短時間で使用される者」といった記述では足りません。
 例えば、「時給制による有期雇用者で主として補助的な業務に携わる者」等の記述を行い、それぞれの社員が複数ある就業規則のうち、どの規則が適用されるのかを明確にしておく必要があります。

 次回は、採用・採用決定後の提出書類の記載方法などについて解説します。

今回のポイント

  • 就業規則の第一章「総則」は、「目的」、「規則遵守義務」「適用範囲」「従業員の定義」等からなる。「前文」を置く場合もある
  • 常時10人以上の労働者がいる事業場で、パートタイマーなどに適用される就業規則が存在しない場合は作成義務違反になる
  • パートタイマー用の就業規則作成では通常の意見聴取に加え、パートタイム労働者の過半数を代表する者の意見を聴く(努力義務)
  • 複数の就業規則を作成する場合は、従業員ごとにどの就業規則が適用されるのかを明確にする

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