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労働契約の締結と労働条件の明示

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労働契約の締結と労働条件の明示

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(6)

Q

当社の就業規則では、採用時の提出書類に続いて、「新たに採用した従業員に対しては、労働条件通知書を交付するとともにこの就業規則を提示して労働条件を明示する。」という条項がありますが、これはどんな意味を持っていますか?

A

従業員を雇い入れるということは、「雇用契約」「労働契約」を締結するという法律行為に他なりません。

 労働契約の締結に当たっては、労働契約書を作成することは必ずしも必要ありませんが、労基法では、労働条件の一定の項目については、「必ず 書面により明示しなければならない」(労基法15条)と規定しています。

 また、労働契約法では労基法で明示が義務付けられている以外の事項についても「できる限り書面により確認するもの」と規定しています(労契法4条)。

 つまり法律では使用者はできるだけ書面により確認するという行為を通じて積極的に労働契約の内容を労働者に理解させるよう求めているわけです。そのため、貴社の就業規則では「労働条件通知書」を交付することを定めているわけですね。

 ところで、労基法が求めている必ず書面で明示しなければならないのは次の5項目になります。
1) 労働契約の期間に関する事項
2) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
3) 労働日並びに始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
4) 賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与及び賞与に準じる賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期に関する事項
5) 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

Q

就業規則の絶対的必要記載事項にも似たような内容がありましたね?

A

そのとおりです。上記3)から5)は就業規則の絶対的必要記載事項ですから、必要記載事項を満たした就業規則を交付すれば足りることになります。
また交付しない場合は、就業規則の関係条項名を網羅して示してもいいですね。

 なお、3)のうち、「所定労働時間を超える労働の有無」は就業規則の絶対的必要記載事項ではないので注意してください。

 通常、時間外労働が一切ない会社はほとんどないと思いますので、就業規則には「業務上必要がある場合は、所定勤務時間外に労働を命じることがある。」といった規定を必ず記載しておく必要があります。その上で、個々の労働者の雇い入れ時に「残業の有無」を明示するようにしてください。

 次に、1)の契約期間や2)の就業場所や業務については個別契約の問題でしょうから、労働条件通知書に記載するか入社時に辞令で渡す等してください。

 2)の就業場所については、原則として雇入れ直後の場所を書けばよいですが、その後の配転や出向等がある場合はその旨の記述を加えておくとよいでしょう。

Q

いわゆるパートやアルバイトなどの非正規社員に対しても書面による明示義務はあるのでしょうか。短時間勤務の社員には文書を交付していない会社もあるように思いますがいかがですか?

A

パートタイム労働者、アルバイト、日雇い等に対しても当然に労基法15条の労働条件の明示義務があります。

 中途採用者を含めすべての新たな採用者について辞令や労働条件通知書等により所定の事項について書面による交付が必要です。

 それどころか、パートタイム労働者等の短時間労働者に対しては、これまでご説明した明示事項に加えて、以下の3つの事項について明示することが義務付けられているのです。
1) 昇給の有無
2) 退職手当の有無
3) 賞与の有無

 正規社員に対しては、上記の事項が「ない場合(例えば賞与や退職金がない)」には明示義務はないのですが、パートタイム労働者等の場合、昇給、退職手当、そして賞与が「あるか、ないか」をはっきり明示しなさいという意味なのです。

 正規社員より短時間労働者の方が明示すべき事項が多いというのは、何か変な感じもしますが、それだけ雇入れ後にトラブルになりやすい事項なのです。

 なお、これらの事項の明示の方法はパートタイム労働者が希望した場合は、電子メールやファクシミリによる送信でもよいことになっています。

 パートタイム労働者(短時間労働者)とは「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者。」という意味ですので、単に「パートタイマー」という区分だけでなく、アルバイト、嘱託、臨時社員等の呼び名にかかわらず、一週間の所定労働時間が正規社員より短ければ対象になります。

Q

有期労働契約の場合、更新の都度書面による明示を行うのは少々手間になると思うのですが、やはり必要でしょうか?
 また、当社の就業規則では採用時における書面交付は規定されていますが、その後の契約内容変更に際してはどうすればよいのでしょうか?

A

パートタイム労働者は通常、半年や一年等の有期雇用契約になっている会社が多いと思います。

 このような場合、「労働契約の更新」も新たな労働契約を締結することに他なりませんから、その都度、これまで述べた「労働条件の明示」が必要になります。

 仮に会社がこの明示義務を怠った場合には、後日パートタイム労働者の「雇止め」をしたときなどに、労働者側から「自分の契約は期間の定めのない契約に転化したのだから雇止めは無効」と主張されるリスクもあります。

 パートタイム労働者に対する書面での明示事項は正規社員より範囲が広いこともあり会社としては煩雑に思うかもしれませんが、法律で義務付けられた事項ですし、前述したような無用なトラブルを回避するためにも毎回、書面での明示を怠らないように注意をしてください。

Q

入社当初に明示した労働条件がその後変更になるような場合がありますが、就業規則では何らかの定めが必要ですか?

A

例えば、「変更になった労働条件が全従業員に係わるものであるときは、この規則(変更部分に限る。)を交付(電子メールを含む。)し、特定の従業員に係わるものであるときは、文書を交付(電子メールを含む。)することで周知する。」等を就業規則に規定しておくとよいでしょう。

 採用時に明示した労働条件は、遅かれ早かれ変更になるわけですが、変更になった労働条件を明示しないことで労使紛争のトラブルが発生する例も多いのです。

 法律でも労使の合意原則を基本にした上で、「できる限り書面で確認する(労契法4条)」ことを求めているわけですから、労使が変更された労働条件を書面で確認しあい、トラブルを未然に防止することが大切です。

 次回は、「試用期間」について解説します。

今回のポイント

  • 従業員を雇い入れる際には、労働条件の一定項目(契約期間、就業場所や業務、始業終業の時刻等々)については必ず書面により明示しなければならない
  • さらにパートタイマなど短時間労働者には上記に加え、「賞与の有無」など文書の交付等で明示が必要な追加事項がある
  • 有期労働契約の場合は更新の都度、労働条件の一定項目につき書面による明示が必要になる

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