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時間外労働時間の上限規制について

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時間外労働時間の上限規制について

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第11回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説    

Q

当社は中小製造業ですが納期が切迫した際などには月100時間を超えて残業する社員が発生する状況で対策が必要と考えています。働き方改革関連法では労働時間の上限をどのように規制しているのか教えてください。

A

この度成立した「働き方改革関連法」の中では、「時間外労働の上限規制(長時間労働の制限)」が労使共に関心の高い改正項目といえるのではないでしょうか。これまでにも原則1カ月45時間、年間360時間等の限度基準(H10.12.28労働省告示第154号)は示されていましたが、法律には明記されておらず、三六協定の「特別条項」により残業時間については事実上青天井になっていて問題視されていました。今回の法改正で時間外労働の上限時間について法律に明記されることになりました。以下、ポイントを整理して解説します。

法律に明記された限度時間

 労働基準法では法定労働時間(原則、1日8時間、1週40時間)が決められていますが、三六協定の締結と届出があればこれを超える時間外労働や休日労働が認められています(法36条)。
 この基本的な枠組みは変わりませんが、改正法では、第36条に以下のような限度時間が盛り込まれました。

〇原則
(1)上限時間は1カ月45時間、1年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は1カ月42時間、1年320時間)
〇特例(臨時的な特別な事情がある場合)
(2)1カ月100時間未満(休日労働含む)、1年720時間以内、また、月45時間超の時間外労働は年6回まで
(3)複数月(2,3,4,5,6カ月)各平均80時間以下(休日労働含む)

(1)の原則はこれまでは前述の告示で定められていた点を法律に格上げしたものです。
 続く(2)(3)は「通常予見することができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」の特例ですが、(2)は上限として1カ月100時間(休日労働含む)未満、1年につき時間外労働720時間以下が限度となります。また、月45時間を超えて時間外労働できるのは年6回までで、慢性的に月50時間の時間外労働を1年続けるような働かせ方は法律で禁止されます。
(3)は新たな規制で、まだ正しく認識されていない方も多いと思われます。1カ月の上限が100時間未満であるとはいっても、例えば1月に99時間残業した場合、2月は2カ月平均で残業80時間以内に収めなければならないので61時間(99 + 61=160)が上限となり2カ月以上繁忙期が続くケースでは対応が容易ではありません。さらに、仮に2月にその労働者が上限ぎりぎりの61時間残業したとすると、翌月の3月は残業時間の上限は80時間が限度となります(下図を参照)。

時間外労働時間と休日労働時間の区別

 以上のように労働時間の上限規制では、覚えるべき数字がいくつかでてきますが、それぞれ休日労働を含むのか否かをしっかり理解しておくことも重要です。

 労基法でいう休日とは法定休日(1週間に1日、または4週間に4日の休養日)を指し法定休日に働いた時間は時間外労働とは別枠となります。例えば、土日が休みの会社ではいずれか1日(通常、日曜日)が法定休日で他の休日(法定外休日)の労働は休日労働ではなく時間外労働の扱いになります。

 
時間外労働時間 1日8時間又は1週40時間を超えて働いた時
(法定外休日に働いた時間を含む)
休日労働時間 法定休日に働いた時間

 規制される時間数が労基法上の時間外労働時間だけなのか時間外労働時間と休日労働時間を合わせた時間なのかを以下まとめてみましょう。

 なんともややこしい話ですが、月100時間未満や複数月平均80時間以下は、過労死等の労災リスクが高まる労災認定基準との関係で時間外労働と休日労働を合算して規制しているのに対し、それ以外の上限時間は時間外労働だけを対象にしていて休日労働時間を除外しています(この点、上限規制の抜け道との批判もあります)。

 なお、上限規制適用の例外として①自動車運転の業務、②建設事業、③医師、④鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業については5年の猶予期間を設けた上で規制を適用等することになっています。また、新技術・新商品等の研究開発業務については医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用除外となります。

まとめ

 以上、説明したとおり改正法では時間外労働や休日労働について厳しい上限規制が盛り込まれました。制度が施行されるのは平成31年4月1日から(中小企業での適用は1年遅れ)の予定です。

 冒頭の相談者の会社では繁忙期には月100時間を超える残業があるとのことですが、改正法では休日労働含め月100時間未満(複数月平均80時間)を上限とし違反企業には罰則が科されます。この時間は従来から過労死ラインと呼ばれていた水準でもあり是正が強く求められます。また、月45時間を超えて時間外労働が許されるのは年6回までなので、長時間労働が恒常化している企業では時間外労働の削減に多大な努力が必要になることが予想されます。

 一方、社員にとっても残業減は収入減に直結します。労使が協力して働き方改革の成果を労働者に還元する仕組みを検討することも重要といえるでしょう。

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