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「2024年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2024年6月景況トレンド)

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「2024年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2024年6月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2024年6月12日 夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(38)

日本経済の現状と2024年度上期の見通し

 国内景気は、物価高による内需の低迷を背景に足踏み状態にある。

 少し遡って景気の動きを振り返ると、昨年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類となってからは、経済社会活動の正常化の動きが加速し、需要の回復の勢いが強まった。百貨店やレジャー施設の売上高が急回復し、観光地は多くの人で賑わった。また、株価も上昇を続け、日経平均株価は2024年に入って史上最高値を更新し、水準も一時4万円を超えた。

 もっとも、これらは全て名目の数字の動きである。物価が上昇したことで支払金額や取引額が増加し、結果として様々な数字が伸びており、景気は回復しているとの「実感」は強まっている。しかし、物価上昇分を除いた実質値の動きは鈍く、景気の「実態」はむしろ弱含んでいる。家計にとってみれば、物価高で出費は増えたが、実際に買えたものは増えていない状態である。

 そして、2024年1~3月期には、実質GDP成長率は前期比▲0.5%(年率換算▲2.0%)と2四半期ぶりのマイナス成長に陥った。内需が4四半期連続でマイナスとなるなど内容も弱く、景気が足踏み状態にあることを改めて示す結果である。中でも個人消費は、品質不正問題による自動車の生産停止の影響などにより耐久財が急減したほか、物価高の影響による節約志向の高まりによって非耐久財や半耐久財の低迷が続き、4四半期連続で落ち込んだ。

 ただし、景気はこのまま低迷するのではなく、4~6月期にはプラス成長に復帰し、その後もプラス基調は維持されるであろう。第一に、自動車の生産、出荷が3月より増加に転じており、4月以降は回復の動きがさらに強まり、景気を押し上げる見込みである。次に、個人消費の底打ちが期待される。2024年春闘の5%を超える高い賃上げ率が反映されることで名目賃金が順調に増加するうえ、物価上昇圧力も次第に弱まり、実質賃金のマイナス幅の縮小が見込まれ、個人消費の押し上げに貢献しよう。6月より導入される1人4万円の定額減税も消費にとってプラス要因である。また、業績改善を背景に企業の投資意欲の強さも維持され、設備投資は底堅さを維持しよう。人手不足がさらに厳しさを増す中にあって、省力化投資や情報化投資を中心に増加が予想される。

 こうした内需の回復に加え、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らいでおり、横ばい圏で推移している輸出も回復基調に転じると思われる。円安を背景に外国人旅行客の増加が続くことや、世界的にIT関連需要が回復していることも、景気にとって追い風となる。

 一方、2024年度に入って円安が加速しており、1ドル=150円を超える円安が定着すれば、輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げることになる。その場合、消費者マインドが悪化し、家計の節約志向が強まることで個人消費の低迷が続き、景気が下振れるリスクについては注意が必要である。

 それでも、コロナの感染状況に景気が左右されないアフターコロナ期に移行することによる需要回復効果は大きい。このため、内需を中心に緩やかな景気回復が続き、景気の悪化は回避される見込みである。

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。

 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は2022年度の前年比+8.8%に対し、2023年度はそれをさらに上回る同+12.1%と順調に増加し、3年連続での最高益を更新したと見込まれる。

 四半期ごとの動きでみると、経常利益は4~6月期に前年比+11.6%、7~9月期に同+20.1%と順調に増加した後、10~12月期も同+13.0%と3四半期連続で2桁の増益が続いた。業種ごとの内訳では、年度前半は製造業が低迷する一方で非製造業が好調であったが、10~12月期は非製造業の伸び率鈍化を製造業がカバーすることで、全体の増益が保たれた。

 製造業は資源価格高などのコスト高が負担となって2022年度後半から減益となっていたが、コスト高のマイナス効果一巡や販売価格への転嫁の進展が利益の改善につながった。また、自動車の生産制約が解消に向かったことや円安が進んだこともプラス材料となった。一方、非製造業は、年度前半はコロナ禍明け後の需要回復に支えられて売上高が順調に増加したことが増益要因となったが、同時に人件費の負担も増加しており、それが10~12月期の増益ペースの鈍化の要因となった。

 今後も、製造業、非製造業ともに原材料費や人件費の増加といったコスト高が業績を押し下げる要因となるとともに、2024年1~3月期には能登半島地震や品質不正問題を受けた自動車の生産停止の影響も業績に悪影響を及ぼすと考えられる。もっとも、製造業では、緩やかに国内需要の持ち直しが続いていることや、一部に円安メリットを享受する業種があり、均してみれば業績は底堅く推移しよう。自動車の挽回生産や、世界の半導体需要の回復もプラス材料である。一方、非製造業では、対面型サービス業を中心に需要の回復や販売価格の引き上げが進むと予想され、コスト負担が高まる中でも業績は改善傾向で推移するとみられる。円安が進む中でインバウンド需要が順調に増加することもプラス材料である。このため、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、2024年度の経常利益は前年比+7.6%と増益となり、4年連続で最高益を更新すると予想している。

 次に物価であるが、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の伸び率は、2023年1月に前年比+4.1%と約41年ぶりの高さまで上昇した後は、政府の物価高対策の効果や、資源価格のピークアウトなどによって、緩やかに伸びが鈍化し、2024年1月に同+2.0%まで低下した。2月以降は政策効果の一巡によって押し下げ効果の一部が剥落したため、3月に同+2.6%まで上昇しているが、物価の基調は次第に安定に向かっており、2024年度中は上昇圧力が後退することが見込まれる。もっとも、政府による物価高対策の効果が期限切れとなり、石油元売り企業への補助金もいずれ打ち切りとなるため、エネルギー価格の水準が切り上がり、2024年度中の伸び率は2%を上回って推移すると見込まれる。このため、年度ベースでは2023年度の前年比+2.8%に対し同+2.4%と、伸びは鈍化するものの小幅の低下にとどまろう。

 最後に雇用情勢である。完全失業率は、コロナ禍にあった2020年に一時的に3.1%まで悪化した後は低下に転じている。この間、月次ベースでは上昇する局面もあったが、これはコロナ禍が終息に向かったことで職探しを再開した人や、より良好な労働条件を求めて離職する人が増えたためであり、2024年1月には、2020年2月以来の水準である2.4%まで低下するなど良好な状態が維持されている。企業の人手不足感は一段と強まっており、選ばなければ即座に職に就ける状態にある。

 今後も景気回復が続くことで、労働需給のタイト化が一段と進むと予想される。宿泊・飲食サービス業など、コロナ禍において営業活動を制限せざるを得なかったことから離職者が増加した業種では、その後も十分に労働力を手当できておらず、人手不足による供給制約の問題に直面している。こうした中で、働き方改革関連法によって2024年4月からは時間外労働時間の上限が、自動車運転業務で960時間、建設業で720時間に制限された。業務の効率化・簡素化、企業間での連携推進などの効果によって、現時点では大きな混乱は生じていないが、生産年齢人口が着実に減少するという構造的な要因がある中で労働者数を十分に確保できている訳ではなく、今後、人手不足が深刻化するリスクがある。

 このため完全失業率は今後も低下基調をたどると予想され、2023年度の2.6%に対し、2024年度には2.5%に低下する見込みである。就業者数も、女性や高齢者の労働参加率の上昇を受けて、緩やかながらも増加していくであろう。

 

2024年夏季賞与の見通し

 以上のように、景気は足踏み状態にあるものの、内需を中心に今後は持ち直していくと見込まれ、企業業績も増益が続く見込みである。また、雇用情勢の改善が続いており、今年の春闘での賃上げ率は33年ぶりの高さになったと見込まれている。

 こうした状況下、4月8日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2023年冬のボーナスの一人当たり平均支給額は39万5,647円(前年比+0.7%)と3年連続で増加した。ただし、賃金を取り巻く環境が良好な状態にある割には小幅の伸びにとどまった。しかも、全事業所における労働者一人当たりの支給額(ボーナスが支給されなかった事業所で雇用されている労働者も含んだ額)の前年比は▲0.2%と、冬のボーナスとしては3年ぶりのマイナスとなった。

 業種別では、製造業(同+1.9%)で好調だったが、非製造業(同+0.4%)では小幅増加にとどまった。コロナ禍で停滞した経済活動が元に戻りつつある中、回復が遅れていた運輸、郵便業(前年比+5.4%)や生活関連サービス業等(同+3.6%)に加え、需要の強い情報通信業(同+7.7%)の伸びが大きかったものの、医療、福祉(同▲5.9%)や不動産業(同▲5.1%)が減少して、全体を押し下げた。

 それでも、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2024年夏のボーナスは堅調な増加が見込まれ、一人当たり平均支給額は40万8,770円(前年比+2.9%)と3年連続で増加し、伸び率も昨年夏(同+2.0%)を上回るであろう。先述したように2024年春闘の賃上げ率は、最終的に33年ぶりに5%を超える可能性が高まっており、こうした動きを勘案すると、ボーナスでも同様に支給額が上乗せされる可能性が高い。また、全労働者ベースの一人当たり支給額でも前年比+3.1%と、堅調な伸びが見込まれる。

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