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「2022年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2022年6月景況トレンド)

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「2022年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2022年6月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2022年6月9日 夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(32)

日本経済の現状と2022年度上期の見通し

 国内景気は、オミクロン株の感染拡大が一服し、まん延防止等重点措置が解除されたことを受けて、ウクライナ情勢悪化や資源価格高騰によって下振れが懸念される中、緩やかに持ち直している。 少し遡って景気の動きを振り返ると、実質GDP成長率は2022年1~3月期に前期比▲0.4%(年率換算▲1.7%)と2四半期ぶりにマイナス成長に陥った。年明け後のオミクロン株の感染急拡大と一部地域でのまん延防止等重点措置の適用による落ち込みをカバーできず、個人消費が前期比でマイナスとなったことが全体を押し下げた。また、部品不足による自動車の生産制約が再度発生し、自動車購入が落ち込んだことも影響した。

 もっとも、1~3月期の実質GDP成長率は、感染第5波によって前期比▲0.7%(年率換算▲2.8%)となった昨年7~9月期ほどの深い落ち込みには至らなかった。これは第一に、オミクロン株の重症化リスクが小さいこともあり、人流の抑制による景気へのマイナス効果がこれまでの緊急事態宣言発出時と比べ軽微にとどまったためである。そして第二に、オミクロン株の感染拡大が2月上旬にピークアウトし、3月にまん延防止等重点措置が解除されたことで、3月末にかけて対面型サービスを中心に需要が急速に盛り返したためである。

 本来であれば、感染拡大の第6波が収束した3月末までの流れを引き継いで、2022年度入り後の景気は順調に回復することが期待されるところである。しかし、新たな景気の懸念材料が発生した。それがウクライナ情勢の悪化と、それに伴う資源価格の急騰である。そして、ここに急速な円安が加わったことで、景気下振れ圧力が一段と高まっている。

 それでも、これらの要因は景気にとって大きな下振れリスクではあるものの、一気に後退局面入りするほどの強いインパクトではない。企業がコスト増加を販売価格に十分に転嫁することは難しいため業績を少なからず悪化させたとしても、手元キャッシュフローは潤沢なうえ、以前から多額の内部留保を抱えている。このため、慌てて設備投資を先送りする、雇用や賃金を削減するといった状況にはなりづらい。

 また、家計においても、物価上昇という形で一定の負担が課されるが、現在は、消費機会の逸失によって貯蓄が増加している状態にあり、無理に他の支出を削減する必要に迫られているわけではない。加えて、感染第6波の収束後に期待されている旅行、外食、レジャーなどへのリベンジ消費は、主にこれまで積み上がって来た貯蓄を原資として支出されると思われ、食品、エネルギーへの支出が増加しても、その分だけ支出が手控えられるものではないだろう。

 このため、2022年度上期の景気は、感染第6波の収束と3回目のワクチン接種の進展を背景に、個人消費を中心に回復基調が続くと予想される。また、感染状況次第でGoToキャンペーンなどの需要喚起策の再開も可能となって景気を押し上げると見込まれる。

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。

 まず企業業績であるが、2020年度の経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は前年比▲15.6%と、前年の同▲13.1%に続き2年連続で2桁減益となった。金額では、過去最高益となった18年度の86.4兆円に対し、19年度に75.1兆円となり、20年度には63.3兆円まで落ち込んだが、これは13年度以来の低水準である。

 これに対して、2021年度の企業業績は年度初めから順調に改善した。四半期ごとの動きをみると、前年の落ち込みの反動もあって、経常利益は4~6月期に前年比+93.8%とほぼ倍増し、その後も7~9月期に同+35.1%、10~12月期に同+24.7%と高い伸びが続いた。

 業績改善の理由は大きく2点ある。まず、新型コロナウイルスの感染の影響が次第に薄らいでいく中で、売上高が増加している点である。中でもコロナ禍の影響を強く受ける宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、生活関連サービス業といった対面型のサービス業では、2020年度中は極めて厳しい経営状況に直面したが、2021年度に入ると、緊急事態宣言が発出された場合でも、感染対策と経済社会活動をバランスさせていく中にあって、次第に需要の落ち込み幅が小さくなっており、業績が底打ちしている。次に、限界利益率(粗利率)の改善である。これはコロナ禍で世界的に景気が悪化する中で資源価格などが下落したが、その影響が時間差をおいて売上原価の減少に寄与したことによる。

 ただし今後は、コロナ禍からの需要回復によるプラス効果と、資源価格高騰によるマイナス効果の綱引きとなり、業績の改善はいったん足踏みとなる可能性がある。業種ごとの動きでは、コロナ禍の影響が徐々に薄らぐため対面型サービス業で改善が続き、円安の恩恵を受けやすい輸出業種で一段の増益が見込まれる一方、資源価格高騰の影響を受けやすい素材業種や運輸業では、販売価格への転嫁が難しいようであれば、業績の下振れが懸念される。

 次に物価であるが、4月の消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年比+2.1%と高い伸びを記録するなど、このところ急速に上昇圧力が強まっている。携帯電話通信料の値下げ効果一巡による押し上げに加え、国際商品市況の上昇を反映してエネルギーや食品価格が値上がりしており、伸び率が急拡大している。今後は、円安による輸入物価の押し上げ効果の波及が予想され、しばらくは2%程度の伸び率が続く可能性がある。



 最後に雇用情勢である。2021年中は緊急事態宣言発出によって需要が抑制され、企業活動も制限されたものの、産業全体では依然として人手不足感が強いことを背景に雇用情勢の悪化は小幅であった。また、雇用調整助成金制度の拡充などの政策効果や、営業再開時をにらんで労働力を維持しておく必要があるとの観点から、対面型サービス業においても、雇用人員の大幅削減に踏み切るケースは限定的であった。このため失業率は2022年4月に2.5%まで低下するなど、雇用情勢は緩やかに改善している。

 雇用情勢は、今後も緩やかに改善していくと予想される。オミクロン株の感染収束を受けて経済社会活動が徐々に正常化しつつあり、それに合わせて就業者数も増加する見込みである。3月調査の日銀短観における大企業の雇用人員判断DI(「雇用過剰と答えた企業の割合」-「雇用不足と答えた企業の割合」)をみると、製造業、非製造業ともマイナス(不足超過)の状況にある。中でも、コロナ禍において活動が大きく制限された宿泊・飲食業では3月にマイナスとなり、6月までの予測ではさらにマイナス幅が拡大している。また、旅行業や娯楽業を含む対個人サービス業や、建設業、小売業といったコロナ前から人手不足が深刻だった業種でも、一段と人手不足感が強まっている。このため、景気の持ち直しと共に、労働需給は徐々にタイト化していくと考えられる。

2022年夏季賞与の見通し

 以上のように、景気は新型コロナウイルスの感染状況に左右されつつも、企業業績や雇用情勢は改善し、物価の上昇圧力が高まりつつある。

 こうした状況下、4月5日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2021年冬のボーナスの一人当たり平均支給額は38万787円(前年比+0.1%)と下げ止まり、コロナ禍の影響が薄らぐ中で、ボーナスを取り巻く環境が最悪期を脱したことを示す結果となった。なお、ボーナスを支給しなかった事業所に雇用される労働者も含めた全労働者の一人当たり支給額では、同+0.9%に伸び率は高まる。

 以上の状況を踏まえると、同じく「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業の2022年夏のボーナスは、一人当たり平均支給額が38万3,949円(前年比+1.0%)と2年ぶりに増加に転じる見込みである。業種別では、製造業では50万1,356円(前年比+1.8%)、非製造業では36万910円(同+0.9%)と、ともに増加するであろう。コロナ禍の影響が一巡し、昨年大きく落ち込んだ飲食店や娯楽業といった対面型サービス業などでボーナス支給額の減少に歯止めがかかるとみられる。

 なお、ボーナスが支給されなかった事業所で雇用されている労働者も含んだ全労働者ベースの一人当たり支給額では前年比+1.9%と、ボーナスが支給される労働者の増加を受け、支給事業所の一人当たり支給額以上の伸びが見込まれる。

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