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2021年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2021年11月景況トレンド)

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2021年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2021年11月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2021年11月9日 秋季定例研究会ブックレット「年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(30)

国内景気の現状と展望

 国内景気は、緊急事態宣言の発出と解除、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加と減少に合わせて経済活動の制限と緩和が繰り返される中で、均してみると緩やかに持ち直している。
 4月に感染第4波が発生すると3回目の緊急事態宣言が発出され、その後、期間が延長され、対象地域も拡大された。このため、宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、観光業、娯楽業など対面型サービス業では厳しい経営状況に直面した。一方、海外景気の回復を背景に輸出の増加が続くなど、コロナ禍においても財の動きは活発であり、製造業を中心に対面型サービス業以外の業種では需要の回復が続いた。

 このように新型コロナウイルスの影響の度合いによって業種間で活動状況に大きな格差が発生する中、全業種の需要の合算値といえる実質GDPは、21年4~6月期に前期比+0.5%、年率換算+1.9%とプラス成長に復帰した。中でも、実質個人消費は前期比+0.9%と順調に持ち直した。緊急事態宣言発出はマイナス要因だったが、感染拡大の落ち着きと共に夏前にかけて人々の動きが活発となったことに加え、度重なる発出を受けて、緊急事態宣言に対する緊張感が失われ、需要抑制効果が薄らいできたことが回復の理由と考えられる。ただし、こうした緊急事態宣言慣れや節約疲れが消費の押し上げにつながり、これが7月に入ってからの感染第5波を引き起こした可能性がある。

 その他、実質設備投資が前期比+2.3%と堅調に増加したことも成長率を押し上げた。業績改善を背景に企業の設備投資意欲は強く、製造業を中心に機械投資や情報化投資などが増加したとみられる。また、実質輸出は海外需要の持ち直しを背景に前期比+2.8%と4四半期連続で増加した。



 その後、感染第5波の発生を受けて7月12日に東京都に4回目の緊急事態宣言が発出され、対象地域も追加されたことで、再び景気の悪化懸念が強まった。このため、7~9月期の実質GDP成長率は前期比でマイナスに転じた可能性があり、中でも個人消費は対面型サービスを中心に夏休み期間中の需要が抑制されたことで前期比マイナスとなる可能性が高い。

 しかし、9月に入ってから感染第5波はピークアウトし、10月には緊急事態宣言が全面的に解除されたため、秋以降は対面型サービスを中心に個人消費が持ち直し、景気回復のけん引役となることが期待される。それでも、油断は禁物である。これまでは、ワクチンの接種が進めば感染は収束に向かい、コロナ禍で使う機会が無いまま溜まってきたお金が一気に消費に回り、景気回復を加速させると期待されてきた。
 しかし、いったん沈静化したとはいえ、デルタ株の爆発的な感染力を勘案すると、今後も感染第6波が発生することへの警戒感は払拭されない。このため、しばらくは感染防止のための行動制約は残り、短期間で個人消費が急回復することは難しいであろう。加えて、半導体不足や、東南アジアでの感染拡大によるグローバルサプライチェーンの目詰まりなどによって、自動車工業など製造業の生産活動の一部に影響が出ている。このため、これまで堅調であった財の動きが一服することも心配される。

 以上より、21年度後半の国内景気は、ワクチン接種の進展とともに経済活動への制約が徐々に薄らぐと期待されるほか、企業の設備投資の増加が続くこと、世界経済の回復が続くことなどを背景に、持ち直し基調は維持されよう。しかし、感染収束までには至らない以上、感染拡大防止と経済活性化を慎重にバランスさせていく状況が続くと考えられ、景気は緩やかな回復ペースにとどまらざるを得ない。21年度の実質GDP成長率は前年比+3.0%と、前年度の落ち込みと比べて小幅のプラスにとどまる見込みである。

年末賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、年末賞与に影響する企業業績と雇用情勢の状況をみていこう。
 まず企業業績であるが、20年度の経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は前年比▲15.6%と、前年の同▲13.1%に続き2年連続で2桁減益となった。金額では、19年度の75.1兆円に対し63.3兆円と13年度以来の低水準まで落ち込んだ。
 しかし、最も厳しかった時期は初回の緊急事態宣言が発出された20年4~6月期であり、その後は景気の持ち直し、需要の回復を受けて業績は着実に改善している。ただし、コロナ禍の影響を強く受ける宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、生活関連サービス業などの対面型サービス業の業績は足元でも厳しいままであり、それ以外の業種との格差が拡大している。業種別の経常利益の推移をみると、製造業では21年4~6月期に前年比+159.4%と大幅な増益を達成している。一方、非製造業の経常利益も製造業ほどの勢いはないものの、同+64.2%と増益ペースが高まってきたが、対面型サービス業については依然として赤字基調から抜け出せていない。

 原油などの国際商品市況の上昇、半導体不足深刻化による自動車の生産制約、グローバルサプライチェーンの停滞などは業績悪化の要因であるが、ペースは緩やかとはいえ景気回復の継続が見込まれる中で、21年度下期も製造業を中心に業績の改善は続く見込みである。また、感染第5波収束と緊急事態宣言の全面的解除を受けて、対面型サービス業でも業績の底入れが期待される。このため、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、21年度の経常利益は前年度比+35.8%と3年ぶりの増益となり、水準も86.0兆円と過去2番目の水準まで回復すると予測している。

 次に雇用情勢であるが、20年4月の初回の緊急事態宣言の発出をきっかけに急速に悪化し、失業率は20年10月に一時3.1%まで上昇し、就業者数も減少した。それでも、近いうちに感染が収束するとの期待感も根強かったため、雇用情勢の一段の悪化は回避され、その後、景気が持ち直すと改善に転じた。
 しかし、21年春に再び悪化するなど、感染状況に合わせて悪化と改善を繰り返しつつあり、均して見ると横ばい圏で推移している。

 雇用情勢は、しばらくは横ばい圏での動きが続く見込みである。ウィズコロナ期が想定以上に長期化するという見方が広がれば、企業の後ろ向きの動きが強まり、それを反映して雇用情勢も悪化する懸念がある。ただし、その場合でもリストラ圧力が強まるのは対面型サービス業などコロナ禍の打撃を受けやすい一部の業種においてであり、雇用情勢が大きく悪化することはないと考えられる。このため、失業率は当面、3.0%程度を中心に横ばい圏で推移した後、新型コロナの感染状況が落ち着いてくれば、再び低下基調に転じると予想される。 

2021年の年末賞与の見通し

 以上みてきたように、企業業績が順調に改善し、雇用情勢も横ばい圏内で推移するなど悪化に歯止めがかかっていることを背景に、賃金は緩やかに増加している。
 厚生労働省「毎月勤労統計」における現金給与総額の動きを見ると、20年度は前年度比▲1.5%と落ち込んだものの、経済活動の再開に伴う所定外労働時間の増加から所定外賃金が増加したことや、業績の好調な企業において所定内賃金の引き上げの動きがあったと考えられることから、21年3月にプラスに転じた。さらに、6、7月とも夏季賞与を含む特別給与が減少したため伸び率は縮小したが、それでもそれぞれ前年比+0.1%、同+0.6%とプラスを維持しており、緩やかな増加基調にある。

 もっとも、経団連が発表した21年夏季賞与・一時金の最終集計結果では、大手企業の総平均妥結額(全産業、加重平均)は、20年度の90万1,147円(前年度比▲2.17%)に対し、82万6,647円(同▲8.27%)と3年連続で減少しており、夏のボーナス支給額だけでみると減少している可能性がある。また、厚生労働省発表の民間主要企業夏季一時金妥結状況では77万3,632円(前年比▲6.59%)と、20年の82万8,171円(同▲2.04%)から減少している。こうした状況から判断すると、21年夏季賞与は前年水準を割り込んだものと考えられるが、対面型サービス業以外では既に業績が改善に転じている業種も多く、コロナ禍にあっても落ち込み幅は小幅にとどまった可能性がある。

 以上より、21年の年末賞与を取り巻く環境は徐々に好転しつつある。ただし、業種によって格差があり、支給が大幅に抑制される、ないしは支給が見送られる企業もあると思われる。それでも、企業部門全体で見れば21年度は大幅な増益に転じると予想されること、アフターコロナ期を見据えてインセンティブを高めていく必要があることなどを勘案すると、年末賞与は下げ止まる可能性が高い。
 大企業については、「夏冬型」の企業が多いことから、通常であれば夏並みの落ち込みとなる可能性があるが、その後の環境変化がある程度、反映される可能性もあり、夏季賞与ほどの落ち込み幅にはならないであろう。

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