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「2021年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2021年6月景況トレンド)

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「2021年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2021年6月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2021年6月11日 夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(29)

日本経済の現状と2021年度上期の見通し

 国内景気は、新型コロナウイルスの感染状況に左右される状態が続いている。
少し遡って景気の動きを振り返ると、昨年5月に1回目の緊急事態宣言が解除された後、景気は回復に転じ、2020年7~9月期、10~12月期とも実質GDP成長率が年率換算値で2桁増となるなど、景気の回復基調は維持されていた。しかし、こうした経済活動の活性化によって感染が再拡大する中、景気に配慮してGoToキャンペーンの停止など感染抑制策に踏み切ることに躊躇した結果、年明けには緊急事態宣言を再発令せざるを得ない状況となってしまった。目先の景気拡大を優先したことで感染拡大防止と経済活動のバランスが崩れてしまい、かえって景気を悪化させることになってしまったのだ。

 今年1月7日の一都三県での緊急事態宣言の再発令、その後の地域拡大、期間延長を受けて、国内需要は対面型サービスを中心に急速に冷え込んだ。このため、2021年1~3月期の実質GDP成長率(1次速報)は、前期比▲1.3%(年率換算▲5.1%)と3四半期ぶりにマイナス成長に陥った。 

 もっとも、徹底的に需要を抑え込んだ1回目の緊急事態宣言時と比べると、年明けの景気の落ち込みは緩やかにとどまったといえる。前回は感染拡大を食い止めるための手段が手探り状態であったこともあり、経済活動は徹底的に抑え込まれ、人の移動も厳しく制限された。しかし、2回目の緊急事態宣言では、広く社会で感染防止策が浸透し、人々の感染防止意識が高まっていることもあって、経済活動の制限は限定的、集中的なものとなった。また、通信販売やテイクアウトへの対応、テレワーク体制整備などもあり、需要の落ち込みや企業活動の混乱などを、ある程度回避できる体制が整いつつある。実際、1月中旬に新規感染者の発生がピークアウトした後は、緊急事態宣言が順次解除され、感染拡大防止と経済活動再開のバランスを徐々に取り戻す中で、3月には景気は持ち直しに転じている。 

 しかし、緊急事態宣言が解除されて間もなく感染の第四波が発生し、4月25日には東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象にした3回目の緊急事態宣言が発令された。さらに、その後、期間が延長され、対象地域も拡大している。

 

 
 春先に景気がいったん持ち直した流れを受けて、4~6月期については、さすがに小幅ながらプラス成長に復帰することができそうだ。緊急事態宣言の発令も3回目となり、社会全体で感染を防止しつつ効率的に経済を回していくことが可能となっているうえ、海外経済の順調な回復を背景に輸出の増加が続くと期待される。それでも、緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大が続けば、2四半期連続でマイナス成長に陥るリスクは依然として残っている。

 景気をしっかりした回復軌道に戻すためには、できるだけ速やかにワクチンの接種を進めることが必要である。しかし、ワクチンの接種がなかなか進まない中で、感染が拡大すれば経済活動を制限し、一服すれば制限を緩和するという感染状況に応じた政策運営を繰り返すことを余儀なくされそうである。

 なお、東京オリンピック・パラリンピックは、大会規模や観客数は縮小を余儀なくされるため、イベント効果による景気へのインパクトは小規模にとどまる見込みである。また、GoToキャンペーンも、ワクチンの接種率が十分に高まらない中にあって、年内の再開は難しいであろう。

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。
 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は2019年度に前年比▲13.1%と8年ぶりに減益となった。10月の消費増税を受けて減益に陥った後、2020年に入ると新型コロナウイルスの感染拡大の影響が徐々に広がり始め、減益幅が拡大した。

 企業業績の悪化は、2020年度に入ってコロナ禍の影響が本格化すると一層鮮明となった。経常利益は4~6月期に前年比▲46.6%とほぼ半減し、7~9月期も同▲28.4%と厳しい状況が続いた。ただし、10~12月期には同▲0.7%とほぼ前年並みまで持ち直し、2021年1~3月期には同+26.0%と高い伸びとなるなど、影響は徐々に薄らいでいった。それでも、前半の落ち込みを十分には取り戻せず、2020年度全体では同▲15.6%と2年連続での大幅減益となった。これは、財の動きが堅調であることに加え、前年が消費増税で落ち込んだことへの反動もあって、製造業で同▲4.3%と小幅の減益にとどまった一方で、コロナ禍の影響が残る非製造業では同▲20.9%と非常に厳しい結果となったためである。

 非製造業の中でも、コロナ禍の影響を強く受ける宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、生活関連サービス業といった対面型のサービス業では、経常利益は4~6月期に大幅な赤字に転じた後も、赤字基調から脱しておらず、極めて厳しい経営状況に直面している。これは、売上高が急減する中で、人件費や不動産賃貸料などの固定費の負担が重くのしかかっているためである。

 このように、企業業績においては、コロナの感染拡大の影響を受けやすい対面サービスなどの業種と、影響が軽微な業種の間で、二極化の動きが鮮明となっている。この傾向は、2回目、3回目と緊急事態宣言の発令が続く中で、2021年に入っても継続していると考えられる。

 次に物価であるが、消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、4月に前年比▲0.1%と9カ月連続で前年比マイナスとなっており、安定して推移している。足元で原油価格をはじめとした資源価格が上昇しており、川上の物価上昇圧力がいずれ電気料金、ガス料金などの川下の価格に波及してくる懸念がある。一方、4月以降は携帯通話料の値下げによる押し下げ効果が継続する見込みである。このため、均してみると当分の間、物価は安定して推移しそうだ。

 最後に雇用情勢である。2020年4月に緊急事態宣言が発令されると雇用情勢は急速に悪化し、宿泊・飲食サービス業、旅客輸送業、個人向けサービス業などでは一時的に大量の余剰人員が発生し、失業率は10月に3.1%にまで上昇した。

 その後、景気の持ち直しに合わせて、失業率はピークアウトし、就業者数も増加基調に転じたものの、2021年に入って2回目の緊急事態宣言が発令されると、企業のリストラの動きが強まり再び悪化することが懸念された。しかし、その後も失業率の低下は続き、2021年3月には2.6%まで低下した。4月に2.8%に上昇したが、それでも1、2月の2.9%を下回っており、均してみると低い水準にある。この間、就業者数も増加傾向にあり、失業者が就業を諦めて非労働力化したために失業率が低下した訳ではない。こうした雇用情勢の改善については、企業、事業主が事業の継続に対して前向きな姿勢を失っていないことがその背景にあると考えられる。

 2021年3月調査の日銀短観においても、雇用人員判断DI(「雇用過剰と答えた企業の割合」-「雇用不足と答えた企業の割合」)は、大企業、中小企業とも改善しており、足元の雇用情勢の改善の動きと一致している。特に非製造業では企業規模にかかわらず大幅な不足超過の状態が維持されており、先行きも不足感は続く見通しである。 

2021年夏季賞与の見通し

 以上のように、景気は新型コロナウイルスの感染状況次第という不安定な状態にあるものの、企業業績や雇用情勢の改善は進みつつある。

 こうした状況下、4月6日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2020年冬のボーナスの一人当たり平均支給額は38万646円(前年比▲2.6%)と2年連続で減少した。コロナ禍が景気に与えた影響が深刻であった割には、減少は小幅だったように見えるが、これはボーナスを支給しなかった事業所が対象から外されるというテクニカルな要因が影響している。ボーナスを支給しなかった事業所に雇用される労働者も含めた全労働者の一人当たり支給額では、同▲6.1%と低下幅は拡大する。

 以上の状況を踏まえると、同じく「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業の2021年夏のボーナ
スは、一人当たり平均支給額が37万4,654円(前年比▲2.3%)と、20年冬のボーナスに続き減少が見込まれる。業種別では、製造業では47万1,797円(前年比▲4.1%)、非製造業では35万3,722円(同▲2.0%)と、ともに減少するであろう。

 なお、ボーナスが支給されなかった事業所で雇用されている労働者も含んだ全労働者ベースの一人当たり支給額では、ボーナスの支給を取りやめる事業所の割合上昇を背景に、前年比▲4.8%と大幅な減少が見込まれる。

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