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2020年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2020年11月景況トレンド)

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2020年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2020年11月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2020年11月11日 秋季定例研究会ブックレット「年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(27)

国内景気の現状と展望

 新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年度に入って国内景気は戦後最悪の落ち込みを記録した。感染防止のために、日本を含め世界中で経済活動の思い切った自粛、抑制が実施され、人の移動が厳しく制限された結果、個人消費と輸出が急速に落ち込んだことが悪化の主因である。日本では、4月の緊急事態宣言の発令後、不要不急の外出を自粛する動きが広がり、個人消費は宿泊、外食、旅行、レジャーなどのサービスへの支出を中心に急減した。
 また、海外においても感染が急速に拡大し、都市封鎖や国境封鎖など、日本よりも厳しい対応をとる国もあった。このため海外景気も急減速し、これを受けて輸出も大きく落ち込んだ。さらに、訪日外客数がほぼゼロとなり、インバウンド需要が消滅した。

 この結果、4~6月期の実質GDP成長率は、前期比▲7.9%(年率換算値で▲28.1%)と、戦後最大のマイナス幅であったリーマンショック時の2009年1~3月の同▲4.8%(同▲17.8%)を大きく超える落ち込み幅となった。もっとも、5月に緊急事態宣言が解除された後、経済活動は緩やかに持ち直している。
 このため、景気はすでに最悪期を脱し、6月以降は回復局面入りした可能性が高く、7~9月期の実質GDP成長率が前期比プラスに転じることは確実である。中でも、特別定額給付金支給やGoToトラベルなどの政策効果もあり、個人消費が宿泊、外食、旅行、レジャーへの支出を中心に持ち直すと期待される。 

 さらに、海外での経済活動の再開を背景に、輸出も回復しており、それに伴って国内での生産活動も持ち直している。中でも、落ち込みの大きかった自動車の生産、輸出の増加が著しい。また、通信販売の増加、テレワークの推進、リモート化の流れの中で、データセンター向け、パソコン向けに加え、5G向けの半導体需要が世界的に盛り上がっており、電子部品・デバイスの生産、輸出も持ち直している。


 このため、内外需要の回復が維持され、実質GDP成長率は、2020年度下半期も前期比でプラス成長が続くと予想される。ただし、当分の間は、感染拡大防止と経済活動推進の両立を目指す状態が続くことになるため、景気の回復ペースは緩やかにとどまる見込みである。海外でも感染拡大の収束は遅れており、インバウンド需要の回復には目途が立たない状況が続こう。このため、20年度通年の実質GDP成長率は▲6%程度と大幅なマイナスに陥る見込みである。 

 景気の下振れリスクも大きい。国内では首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が依然収まっておらず、緊急事態宣言の再発令といった最悪の事態に陥れば、景気は失速し、二番底をつける可能性がある。また、企業が業績悪化や景気低迷の長期化に備えて、雇用調整や賃金カットなどのリストラに踏み切る可能性もある。今後、企業の倒産、事業からの撤退、店舗閉鎖といった景気の下振れ要因が増えれば、雇用・所得環境の悪化が進み、景気回復ペースが急速に鈍化することになろう。
 加えて、感染の再拡大により世界経済の回復が遅れる懸念もある。特に米国では、引き続き多くの感染者が生じているほか、大統領選の行方、政府と議会との対立、中国との関係悪化など政治的な不透明な要因が多く、これらが世界経済の悪化、世界的な株安、リスク回避の円高につながる可能性は残る。 

年末賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、年末賞与に影響する企業業績と雇用情勢の状況をみていこう。
 まず企業業績であるが、2019年度の全産業の経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は、8年ぶりに減益になるとともに、減益幅も▲13.1%と2桁に達した。金額では過去最高益更新である18年度の86.4兆円に対し、75.1兆円にまで落ち込んだ。
 さらに、2020年度に入り業績は一段と悪化している。全産業の経常利益は、20年1~3月期の前年比▲28.4%に続き、コロナ禍の影響が本格化した4~6月期には同▲46.6%とほぼ半減した。これは、緊急事態宣言により売上高が急減する一方で、人件費や不動産賃貸料など固定費の負担がほとんど軽減されなかったためである。中でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響をまともに受けている宿泊・飲食業、旅客輸送業、娯楽業といった業種では、経常利益は赤字に陥った。 

 緊急事態宣言の解除後、企業活動も徐々に持ち直しており、業績悪化に歯止めが掛かっている。しかし、感染拡大防止のために経済活動の再開を緩やかに進めていかざるを得ず、売上高を急速に伸ばしていくことは難しい。一方、固定費の負担はそのままである。このため、経常利益は徐々に回復していくが、20年度下半期も前年水準を下回る状態が続くであろう。特に非製造業では、コロナ禍の影響が薄らぎ、一連のGoToキャンペーンの効果が高まると期待されるが、感染拡大が完全に収束しない限り、宿泊・飲食業、旅客輸送業、娯楽業を中心に業績回復の下振れリスクが残る。このため、20年度の経常利益は54.1兆円(前年度比▲28.0%)と2年連続で減益になろう。

 次に雇用情勢であるが、総務省統計局「労働力調査」によると、2019年中は労働需給が極めてタイトな状況が続き、完全失業率(季節調整値)は12月に2.2%と92年以来の水準まで低下し、一部の業種や地域では深刻な人手不足に陥った。同じく労働力調査の就業者数(実際に働いている人の数、季節調整値)も、19年12月に6,765万人と過去最高を更新した。しかし、この極めて良好な状態も、新型コロナウイルス感染拡大により一気に悪化に転じた。完全失業率は、20年9月時点で3.0%まで上昇し、失業者数は昨年12月の152万人から206万人まで増加した。


 雇用情勢は、今後も悪化が続く可能性がある。日銀短観の大企業の雇用人員判断DI(「雇用過剰と答えた企業の割合」-「雇用不足と答えた企業の割合」)をみると、6月調査時点で、製造業では不足超から一気に余剰超に転じ、非製造業では不足感が急速に後退し、9月時点でも同様の状態にある。中でも新型コロナウイルス感染拡大の影響で、宿泊・飲食業、旅客輸送業、娯楽業、百貨店などにおいて、営業自粛や業務縮小によって余剰人員が発生しつつある。これらの業種では非正規雇用者の割合が高いこともあり、営業の制約や需要低迷が長期化すると判断されれば、就業者の削減が進むことが懸念される。このため、完全失業率は20年度下半期中に3%台半ばまで上昇する可能性がある。

2020年の年末賞与の見通し

 以上みてきたように、企業業績の厳しさが増す中、雇用情勢の悪化を反映して、賃金も弱含んでいる。
 厚生労働省「毎月勤労統計」で現金給与総額の動きをみると、2019年度は景気の低迷もあって前年度比横ばいとなった後、20年度に入ってからは前年比マイナスで推移している。コロナ禍の影響で、企業の営業自粛の動きや在宅勤務の増加によって残業時間が減少して所定外賃金が急減したこと、夏季賞与が減少したことが原因である。夏季賞与の含まれる6、7月において、賞与も含む特別給与はそれぞれ前年比▲2.5%、▲2.4%と落ち込んだ。

 また、経団連が発表した20年夏季賞与・一時金の最終集計結果では、大手企業の総平均妥結額(全産業、加重平均)は、19年の92万1,107円(前年比▲3.44%)に対し、20年は90万1,147円(同▲2.17%)と2年連続で減少した。厚生労働省発表の「民間主要企業夏季一時金妥結状況」でも、19年の84万5,453円(前年比▲2.9%)に対し82万8,171円(同▲2.04%)と減少が続いた。こうした状況から判断すると、20年の夏季賞与は前年水準を大きく割り込んだものと考えられる。ただし、新型コロナウイルス感染拡大が本格化したのはこれらの金額の妥結後であり、実際の支給額はさらに下振れした可能性がある。

 以上より、20年の年末賞与を取り巻く環境は、夏季賞与の支給時と比べて一段と厳しくなっている。コロナ禍での業績悪化が夏季賞与に十分に反映されていないことに加え、経営環境の先行き不安感が残る中では、企業としても支給額を絞り込まざるを得ないであろう。
 大企業については、「夏冬型」の企業が多いため、通常であれば夏並みの落ち込みが予想される。しかし、業績悪化を踏まえて一時金の大幅削減や支給見送りを表明している企業も散見され、夏季賞与を超える減少幅となる可能性が高い。リーマンショック後の09年の年末賞与の実績は前年比▲9.4%(厚生労働省「毎月勤労統計」ベース、事業規模5人以上)であったが、それに近い落ち込み幅となっても不思議ではない。

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