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「2020年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2020年6月景況トレンド)

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「2020年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2020年6月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2020年6月10日 夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(26)

日本経済の現状と2020年度上期の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により足元の国内景気は悪化し、後退局面に入っている。
 昨年10月の消費増税や、大型台風の襲来や暖冬などの天候不順により個人消費が急減し、10~12月期の実質GDP成長率は前期比マイナスに転落した。米中両国が貿易問題で対立したことで海外景気の拡大ペースが鈍り、輸出の低迷が続いたこともマイナス要因となった。
 しかし、2020年に入ると景気に持ち直しの動きが出てきた。消費増税、天候不順といった悪材料が剥落したことや、キャッシュレス決済時のポイント還元などの増税対策効果に加え、雇用・所得の改善が続いたことで個人消費が回復してきたためである。さらに、貿易交渉で米中両国の対立深刻化が回避されるなど、明るい材料も出てきた。加えて、国土強靭化が推進される中で、台風被害からの復旧・復興のために、大型の経済対策が策定され、景気を押し上げるとの期待が高まった。

 このように、消費増税の悪影響は軽微にとどまり、夏の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてイベント効果が高まり、2020年の景気は順調に回復していくかと思われた。
 しかし、中国で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた1月下旬以降、まずは中国からの観光客減少によってインバウンド需要が落ち込み、続いて中国経済悪化によって中国向け輸出が減少するなど、景気の先行きに不透明感が広がり始めた。2月下旬からは中国以外の国に感染が広がり始めたことで海外経済の減速の動きが強まり、輸出は一段と悪化した。さらに日本においても、イベント中止、外出の自粛、学校の休校などによって個人消費が抑制され始めた。



 3月下旬以降は国内でも感染拡大が加速し、企業の営業自粛や不要不急の外出自粛要請が強化された。海外では、米欧で感染が急拡大し、人や物の動きが大幅に制限される中で世界経済は一気に悪化した。そして、ついに東京オリンピック・パラリンピックの開催の1年延期が決定された。
 このように急速に景気が悪化した結果、2020年1~3月期の実質GDP成長率は前期比▲0.6%(年率換算▲2.2%)と2四半期連続のマイナス成長を記録した。

 2020年度に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が本格化し、景気は一段と厳しさを増している。4月7日に政府より緊急事態宣言が発令された後、16日に対象が全国に拡大された。さらに、期限も5月6日から31日まで延長されたことで経済活動が大幅に制限され、外食、旅行、レジャー関連への支出を中心に個人消費は急減し、景気は一気に冷え込んだ。
 緊急事態宣言は5月14日に特定警戒都道府県以外の地域で、残る地域でも25日に解除され、経済活動の再開に向けて舵が切られるなど、足元で景気は最悪期を脱しつつあるが、それでも緊急事態宣言中の個人消費の落ち込みを取り戻すことは不可能であり、4~6月期は大幅なマイナス成長が見込まれる。リーマンショック時は、2009年1~3月期の前期比▲4.8%(年率換算▲17.8%)が実質GDP成長率の最大の落ち込みだったが、2020年4~6月期はそれに匹敵する悪化幅となるであろう。

 それでも、緊急事態宣言の解除後に、自粛要請も徐々に緩和されており、実質GDP成長率は7~9月期にはプラスに復帰すると予想される。雇用が比較的良好な状態にあることや、ひとり一律10万円給付などの政策効果もあって、外食、旅行、レジャー関連支出が回復し、個人消費が持ち直し、景気をけん引すると期待される。また、中国をはじめとする海外での経済活動の再開や、世界的なIT関連需要の持ち直しで輸出は底打ちする。
 ただし、景気がV字回復する可能性は低い。「新しい生活様式」の下で、感染拡大防止と経済活動の両立を目指すのであれば、需要が一気に盛り上がることは難しいためである。緊急経済対策の解除後も、経済活動の再開は段階的に進められるため、企業や店舗の営業活動や家計の消費支出が一気に感染拡大前の元の水準に戻ることはないであろう。

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。
 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は2018年度に前年比+6.2%と7年連続で増益となった後、2019年度は同▲14.0%と8年ぶりの減益に転じた。なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた2020年1~3月期では同▲32.0%であり、いかにコロナショックのインパクトが大きかったかがわかる。

 製造業では、輸出の不振を背景に2018年後半からすでに減益基調に転じていたが、それに新型コロナウイルスの感染拡大のマイナスの影響が加わったことにより、2019年度では同▲22.4%と大幅な減益となった。
 一方、非製造業では、2019年夏場の天候不順や、10月の消費増税の影響などもあり、経常利益は前年並みでの推移が続くなど苦しい状況にあったが、同様にコロナショックを受けて、2019年度では同▲9.5%に落ち込んだ。
 2020年度入り後も、営業自粛や国内外の需要減退により、企業経営は厳しい状況にある。宿泊・飲食業、レジャー、旅客輸送業などの一部業種では、一時的に売上高がほぼゼロにまで落ち込んでいるほか、多くの上場企業が2020年度の業績見込みを発表できないでいる。4~6月期には減益幅はさらに拡大すると見込まれ、それ以降は、徐々に状況は好転してくると期待されるものの、増益に転じるまでには時間がかかりそうであり、2020年度通年では2年連続で大幅な減益を余儀なくされるであろう。

 次に物価であるが、消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、消費増税による押し上げの一方で、原油など資源価格の下落によってエネルギー価格に低下圧力がかかっていることや、旅行代金や携帯電話通話料などのサービス価格が下落していることから、2020年4月時点で前年比▲0.2%と3年4か月ぶりのマイナスに陥った。消費増税による押し上げ効果が約1%と試算されるため、物価の下落幅は実際にはもっと大きい。今後、エネルギー価格の低迷が続くと見込まれるうえ、景気の悪化を受けた需要減少によって物価の下押し圧力が続くと予想され、伸び率はゼロ近辺で推移しよう。

 最後に雇用情勢である。景気が急速に悪化している中、総務省「労働力調査」によれば、2020年4月時点の完全失業率は2.6%と低水準にあり、今のところ労働需給に大きな緩みはない。このため、営業活動が徐々に再開され、いずれ元の状態に戻っていくと期待されるのであれば、慢性的な人出不足の状態にある宿泊・飲食サービスなどでは、大幅な人員削減に踏み切らないであろう。
 ただし、コロナショックの影響を強く受けている業種は、いずれも非正規雇用者の割合が高いという特徴がある。このため、感染の第2波の襲来や需要回復の鈍さなどによって、業績の一段の悪化が避けられなくなれば、非正規雇用者を中心に一時的に人員削減に踏み切る企業も現れると考えられ、実際に、失業予備軍ともいえる休業者(就業者の状態にはあるが、実際には仕事を行っていない人)が急増している。リーマンショック時のように、企業が一斉にリストラにかじを切り、失業率が一気に跳ね上がることはなさそうだが、一時的に3%台にまで上昇することはありそうだ。

2020年夏季賞与の見通し

 以上のように、景気はリーマンショック並みと言われるほど急速に悪化しており、2020年夏のボーナスを取り巻く環境は非常に厳しい。
 しかも、4月7日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2019年冬のボーナスの一人当たり平均支給額は38万9,394円(前年比▲0.1%)と4年ぶりに減少している。このため、2020年の夏のボーナスはさらに大きく落ち込むものと考えられ、一人当たり平均支給額は35万2,366円(前年比▲7.6%)と、リーマンショック以来(2009年夏の前年比▲9.8%)の減少幅に達すると予想する。

 企業業績の悪化が、一人当たり支給額を押し下げる最大の要因である。足元では新型コロナウイルスの感染拡大が多くの企業の営業活動を阻害し、資金繰りが厳しくなる企業が増加している。このため、ボーナスの減額、あるいは支給を取りやめる企業が増えるとみられ、一人当たり支給額を押し下げる要因になる。特に、大企業と比較して財務体質が脆弱な中小企業では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、日々の資金繰りへの対応に追われている状況であり、ボーナスを増額する余裕はない。また、大企業であっても、業績悪化を理由として、春闘時に決めた支給額の見直しに着手する可能性もある。

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