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2019年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2019年11月景況トレンド)

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2019年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2019年11月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2019年11月7日秋季定例研究会ブックレット「2019年 年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(24)

(1)国内景気の現状と展望

 足元の国内景気は、外需の悪化という下振れリスクをはらみつつも、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要と反動減の動きを均してみると、なんとか横ばい圏内で踏ん張って推移している。
 2019年度上期の景気の動きを、実質GDP成長率の動きで確認すると、まず19年4~6月期は前期比+0.3%(年率換算+1.3%)と堅調な伸びとなった。改元に伴ってゴールデンウィークが10連休となったことで、旅行や娯楽などのレジャー関連支出が盛り上がり、内需の柱である個人消費が堅調に推移して全体を押し上げた。また、もう一つの内需の柱である設備投資も、五輪関連需要は一巡しつつある中で、人手不足に対応するための投資や、生産性を高めるための投資に加え、情報化投資、研究開発投資などが増えており、プラス基調を維持した。

 これに対して輸出は弱い動きが続いた。半導体などの情報関連財に持ち直しの動きが見られるが、中国など海外経済の減速を反映して、半導体製造装置など一般機械類の輸出が弱い。
 夏場以降も、海外経済の減速により、輸出は力強さに欠ける動きが続いている。それでも、内需が底堅く、7~9月期の実質GDP成長率も前期比プラスを維持するであろう。特に個人消費は、10月からの消費税率引き上げを控えた駆け込み需要によって堅調に増加し、景気全体をけん引した。
今回の消費増税に際しては、前回の引き上げ後に景気が急速に悪化した反省も踏まえ、様々な対策が講じられた。具体的には、軽減税率の適用、プレミアム付き商品券の発行、中小店舗でのキャッシュレス決済時のポイント還元、幼児教育の無償化などであり、増税幅が2%と小さいことも加わって、駆け込み需要が抑制され、反動減を伴う需要の大幅な落ち込みが回避されると期待された。もっとも、夏場こそあまり見られなかった駆け込み需要であるが、9月末にかけて高額商品や大型家電などの販売が急増しており、そこそこ強かったといえる。
 駆け込みが大きければ反動減も大きくなる。このため、10~12月期の実質GDP成長率は、個人消費の減少によって前期比マイナスになることは避けられない。しかし、後述するように、雇用、所得・賃金といった個人消費を取り巻く環境は良好な状態にあり、個人消費の落ち込みは遅くとも年内には一巡しよう。したがって、消費増税をきっかけとして景気が腰折れする事態には至らない。
 年度末にかけては、①増税後のマイナス効果剥落による個人消費の持ち直し、②半導体など情報通信関連需要の増加、経済対策効果による中国経済の回復、金融緩和などの諸政策を背景とした米国経済の底堅さの継続などによる輸出底打ちによって、実質GDP成長率は再びプラスに復帰すると予想する。

 この結果、2019年度の実質GDP成長率は前年比+0.4%となる見込みである。消費増税の影響によって伸び率は鈍るが、それでも5年連続でプラス成長を達成するであろう。
 景気の最大の下振れリスクは、米中貿易摩擦が深刻化することである。10月の両国の閣僚級会議において中国が米農産品の輸入を増やすことなどを約束したため、トランプ大統領は制裁関税の引き上げ(第1~3弾分への上乗せ)を先送りすると表明し、対立の激化はひとまず回避された。しかし、第4弾の残り(9月1日に一部を発動済み)が12月15日に実施される予定に変更はなく、対立激化を受けて両国の景気が悪化し、それが世界経済に波及するリスクは残る。また、世界経済の悪化を懸念して、世界的な株安や、リスク回避のために急速な円高が進む可能性もある。
 その他、中東、北朝鮮などの地政学リスク、トランプ大統領と議会との対立、英国のEU離脱問題を巡る欧米での政治的な混乱、香港でのデモの広がりなどをきっかけに、リスク回避の動きが強まり、世界経済が混乱し、悪化する懸念もある。このように、世界経済の行方は国際政治、中でも米国の意向に大きく振り回される状況がしばらく続きそうだ。

 

(2)年末賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、冬のボーナス動向に影響する企業業績、物価、雇用情勢の状況をみていこう。
 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は、2018年度に+6.2%と7年連続で増益を達成した。金額では86.4兆円に達し、6年連続での過去最高益更新である。
 しかし、2019年度に入って企業業績を取り巻く環境は徐々に厳しさを増している。4~6月期には、人件費、オフィス賃貸料といった固定費が増加し、経常利益は前年比▲12.0%と大幅な減益に転じた。

 中でも製造業では、輸出低迷や円高進行が影響して4四半期連続で減益となったうえ、減少幅も同▲27.9%にまで拡大した。一方、非製造業は、内需が底堅く、改元効果のメリットを享受した業種もあって、同▲1.5%と小幅の落ち込みにとどまった。
 続く7~9月期は、駆け込み需要が小売業など一部の業種の利益を押し上げるなどのプラス効果が見込めるが、10月以降にその反動が出るため、年度下期の企業業績は下振れが避けられない。
 前年度よりも円高が進み、海外需要が低迷する逆風の下で、米中関係の状況次第でさらに需要が落ち込むリスクがあることを勘案すると、特に製造業で業績が厳しくなるだろう。非製造業でも、増税による需要減や人件費の負担増加によって苦戦を強いられよう。
 このため、19年度の経常利益は82.3兆円(前年度比▲4.8%)に減少すると予測している。それでも、水準は過去最高を更新した18年度に次ぐ過去2番目の高さである。

 最後に雇用情勢であるが、労働需給は極めてタイトな状態が続いている。総務省「労働力調査」によれば、完全失業率(季節調整値)は2019年7~8月は2.2%まで低下した。これは1992年10月以来の低水準である。就業者(実際に働いている人)も増加しており、同じく労働力調査の就業者数(季節調整値)は、8月に6735万人と過去最高を記録した。
 雇用情勢の改善は今後も続くと予想され、企業の人手不足感は続くと見込まれる。景気の下振れリスクが高まり、企業の生産活動や家計の消費行動が鈍化したとしても、それが直ちに雇用情勢にまで波及することはなさそうである。

(3)2019年の年末賞与の見通し

 以上みてきたように、企業業績は厳しさが増す一方、雇用情勢の改善を反映して、賃金は基本的には緩やかに増加している。
 厚生労働省「毎月勤労統計」における現金給与総額の動きをみると、2018年度の前年比+0.9%に対し、サンプルの入れ替えの影響によって2019年1月以降はマイナス基調で推移している。もっとも、前年も対象となった事業所(共通事業所)に限定した集計値では、18年中と同程度の伸びが続いており、賃金の増加基調は維持されていることがわかる。

 しかし、夏場にかけては、6月に急増した後、7、8月に急減するという不規則な動きとなった。これは夏季賞与の含まれる特別給与が急増後に急減したためであり、これらの結果を均すと、19年の夏季賞与は前年を下回った可能性が高い。また、経団連が発表した19年夏季賞与・一時金の最終集計結果でも、大手企業の総平均妥結額(全産業、加重平均)は18年の前年比+8.62%に対して同▲3.44%の92万1107円と減少に転じた。さらに、厚生労働省発表の「民間主要企業夏季一時金妥結状況」でも、19年は前年比▲2.9%の84万5453円と、過去最高を更新した18年の87万731円(前年比+5.52%)から減少した。

 以上より、19年の年末賞与も、夏に続き前年水準を下回る可能性がある。深刻な人手不足の状態が続くと予想される中で、企業経営者も大幅に年末賞与を減らすことは難しいだろう。しかし、景気の下振れリスクの高まりや企業業績の悪化の可能性など、19年の年末賞与を取り巻く環境は、夏と比べて一段と厳しさを増している。
 大企業については「夏冬型」の企業が多いことから、夏季賞与の実績も踏まえると年末も前年比マイナスとなる可能性がある。中小企業では、増税直後であり、支給額を引き上げることには消極的だろう。このため、多くの企業で前年を下回る可能性が高い。ある大手自動車メーカーで大幅な引き上げを予定しており、その影響で全体の数字が押し上げられる可能性はあるが、その影響を除けば基調は弱いであろう。

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