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「2019年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2019年6月景況トレンド)

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「2019年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2019年6月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2019年6月4日(東京)夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(23)

日本経済の現状と2019年度上期の見通し

 足元の日本経済は弱含んでいる。景気に減速感が出ているのは中国向けを中心に輸出が弱いためであり、これを受けて製造業の生産活動を示す鉱工業生産指数も弱含みで推移している。さらに、景気の動きと概ね一致する日銀短観の大企業製造業の業況判断DIが、3月調査において急低下したため、景気はすでに後退局面入りしているとの見方が増えることになった。

 加えて、景気一致CIによる景気の基調判断が「悪化」に引き下げられたことで、景気に対する懸念が一段と高まることになった(※)。景気は、一致CIの結果だけで判断する訳ではないが、「悪化」との基調判断が下された場合、「景気は後退の可能性が高いことを示す」と定義されている。

 実質GDP成長率で景気の動きを確認すると、2018年中に、1~3月期、7~9月期で前期比マイナスとなるなど一進一退の動きとなった後、2019年1~3月期に前期比+0.5%(年率換算+2.1%)と高めの伸びとなった。しかし、中身をみると、個人消費と設備投資がいずれも前期比マイナスとなるなど内需に強さはなく、外需寄与度が大きかったことが全体の成長率を押し上げた。しかも、内需の弱さを反映した輸入の急減が外需寄与度の大幅な改善をもたらしたに過ぎない。

 こうした中でも、政府は景気の拡大が続いており、2019年1月に戦後最長の景気拡大記録を更新したとの認識を示している。しかし、その後発表された経済指標をみると、昨年の秋以降、景気が減速し始めており、新記録達成が幻に終わる可能性も出てきた。景気が後退局面入りしたかどうかは、正直、五分五分の状態であるが、どちらに振れるのか、その鍵を握るのが輸出であり、さらには海外景気の動向や米中貿易摩擦の行方に左右されることになろう。

 米中の貿易摩擦については、両国の対立が現状の第3弾の関税引き上げ合戦の追加分にとどまり、これ以上のマイナスのインパクトがない状態が維持されれば、日本経済および世界経済に与える悪影響は比較的軽微にとどまろう。しかし、トランプ政権が検討している第4弾の引き上げは、消費財が多いなど対象品目の中身から考えても、輸入元である米国経済に及ぼす打撃は大きい。

 その他、中東、北朝鮮情勢などの地政学リスク、トランプ大統領と議会との対立や英国のEU離脱問題を巡る欧米での政治的な混乱などをきっかけに、リスクオフの動きが強まり、世界経済が悪化する懸念もある。これらの海外経済のリスクが顕在化すると、輸出の減少を内需の持ち直しではカバーできず、景気の悪化が進むことになろう。

 しかし、こうした下振れリスクを回避できれば、景気は徐々に持ち直していく見込みである。これは第一に、労働需給が一段とタイト化するなど個人消費を取り巻く環境が良好であるためだ。加えて、改元に伴う祝賀ムードや大型連休の効果により、旅行・レジャーなどサービス支出が堅調であり、年度前半の個人消費はかなり高い伸びとなる可能性がある。

 そして第二に、企業の設備投資が底堅いためである。東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えてインフラ建設などの需要の強さが続くほか、業務の効率化、情報化、人手不足への対応のための投資も増加が見込まれる。

 このように短期間で景気が回復軌道に復帰することになれば、2019年度の実質GDP成長率は、前年比+0.8%と5年連続でプラスを達成し、伸び率も2018年度の同+0.6%を上回るであろう。

 消費税率の引き上げについては、米中の貿易摩擦がリーマンショック級のマイナスの事態を引き起こすまでにエスカレートするとは想定しづらく、予定通り10月に実施されるであろう。ただし、引き上げ幅が2%と小幅であるため、駆け込み需要・反動減とも前回と比べて小規模にとどまり、景気へのマイナスのインパクトも大きくないと見込んでいる。東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えていること、雇用・所得情勢の改善が続いていることもあり、消費者マインドの悪化も一時的となろう。さらに、軽減税率導入、幼児教育の無償化、プレミアム商品券の導入など増税ショックを軽減する政策の効果が見込まれることも、消費の落ち込みを緩和させると期待される。

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。

 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は2017年度に前年比+6.9%と6年連続で増益となった後、2018年度前半も同+10.9%と堅調な動きが続いた。しかし、年度後半に状況は一変し、10~12月期は同▲7.0%と減益に転じた。

 これは、内外需要の減速によって売上高の伸びが鈍ってきたことや、原油など資源価格の上昇を受けて投入コストが膨らんだことに加え、人件費の増加が影響している。人手不足が深刻化する中、企業は人件費コストを積み増してでも雇用を維持・増加させる方針に切り替えつつあるようだ。

 今後も、内外景気が持ち直していく半面で、人件費などコスト負担の増加が見込まれ、企業業績を取り巻く環境は厳しさを増していこう。年度でみると、2018年度は前半の貯金もあって前年比+2.1%と7年連続で増益となる見込みだが、2019年度は同▲4.5%と減益に転じると予想される。

 次に物価であるが、消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、エネルギー価格の上昇や一部の食料品などの値上げによって上昇圧力がかかっているが、それでも前年比で1%をやや下回る緩やかな伸びにとどまっている。今後は、エネルギー価格上昇の影響が一巡するうえ、2019年度上期に予定されている携帯電話料金の値下げも物価の下押し要因となる。このため、10月の消費税率引き上げで消費者物価は押し上げられるが、同時に実施される幼児教育無償化が下押し要因となることから、2019年度の消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年比+0.5%(増税の影響を除けば同+0.0%)と、2018年度の同+0.8%から鈍化する見通しである。

 最後に雇用情勢である。景気が弱含んでおり、循環的な要因による労働需給のひっ迫度合いは薄らいでいるはずだが、生産年齢人口(15歳~64歳人口)が減少するという構造要因に変化はなく、労働需給は極めてタイトな状態にある。総務省「労働力調査」によれば、2018年度の完全失業率は2.4%と低水準にあるうえ、就業者(実際に働いている人の数)も増加しており、足元で6,700万人超と過去最高水準にある。今後も、景気が弱含む中で雇用情勢の改善ペースがやや鈍ることがあっても、ひっ迫度合いが薄らぐことはなさそうだ。

2019年夏季賞与の見通し

 以上のように、内外景気に弱さがみられる中で、企業業績の拡大に歯止めがかかり、先行きについても厳しい見方が広がっている。それでも、人手不足の深刻化を背景に、企業も賃金を引き上げざるを得ない状況にある。

 4月5日発表の厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2018年冬のボーナスの一人あたり平均支給額は38万9926円(前年比+1.0%)と3年連続で増加したものの伸びは鈍化した。業種別では、製造業(前年比+0.2%)、非製造業 (同+0.6%)ともに増加は小幅なものにとどまった。また、規模別では、30人以上の事業所で前年比+2.1%、中でも500人以上の事業所で同+5.9%と高い伸びとなったのに対し、5~29人の事業所では同▲5.4%と大きく減少し、大企業と中小企業の格差が拡大する結果となった。

 以上より、厚生労働省「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2019年夏季賞与は、一人あたり平均支給額が39万0,321円(前年比+0.8%)と4年連続で増加するが、増加幅は前年の+4.2%から大幅に鈍化すると予想する。人手不足の深刻化が平均支給額を押し上げる一方で、足元の企業業績の動向やボーナス額が少ない非正規労働者の割合の上昇が 平均支給額を下押しするであろう。

 業種別では、製造業では52万4,568円(前年比+0.5%)、非製造業では36万1,312円(同+0.9%)と、支給額はともに増加すると見込まれる。

 大企業では、今年の春闘でもベースアップの実施が決定されたことは支給額増加の要因となるが、業績拡大の鈍化や主に海外経済の先行き不透明感が重荷となり、増加幅は縮小するだろう。一方、中小企業(5~29人の事業所)では冬の支給額が前年比▲5.4%と減少したが、人手不足が一段と深刻化していることを背景に、夏は大きく減少することはないとみられる。

(※)景気一致CIとは、景気の現状を把握するために、生産、雇用など景気の動きと一致する指標を合成することで作成された指標であり、毎月内閣府が作成し、発表している。

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