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2015年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2015年11月景況トレンド)

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2015年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2015年11月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 藤田 隼平
(2015年11月11日(東京)秋季定例研究会ブックレット「年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(12)

日本経済の現状と今後の展望

 2015年9月に内閣府が発表した4~6月期の実質GDPは前期比▲0.3%(年率換算▲1.2%)と3四半期ぶりのマイナス成長に陥った。主な原因は個人消費と輸出の弱さである。食料品など身近な物の価格が上昇する中、消費者の節約志向が強まっていることに加え、天候不順や軽自動車税の税率引き上げによる軽自動車の販売不振などもあって、個人消費は大幅減となった。また、輸出も中国などアジア向けを中心に大きく落ち込んだ。

 こうした状況はその後も大きく変わっていない。7月以降も個人消費の持ち直しの動きは弱く、横ばい圏の動きにとどまっている。また、輸出は中国など新興国の景気減速を背景に弱含んでおり、それに伴い生産も弱い動きとなっている。足元ではメーカーの在庫も積み上がっていることから、今後、在庫調整圧力が強まり、企業の生産活動はさらに抑制される可能性もある。

 もちろん、足元では賃金の増加や企業業績の改善といった明るい材料もある。しかし、内外景気の先行きが不透明な状況の下では、消費者や企業はお金を使うことにあまり積極的にはなれない。結果的にそうした所得面の改善ほど、個人消費や設備投資は増えない可能性が高く、当面、国内景気は横ばい圏での推移が続くことになるだろう。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは15年度の実質GDPを+0.9%と予測しているが、年度中の実質的な伸びは前年から横ばいにとどまる見通しである(注1) 。

 株価については、8月の中国株価の急落以降、軟調な展開となっている。日経平均株価は2万円を割り込み、9月には一時1万6000円台まで低下する局面もあった。足元では1万8000円台前半まで値を戻しているが、内外経済の先行きに対する警戒感は強く、今後も振幅の激しい展開が続く中で上値は重いと予想される。

 ドル円相場も、8月後半には一時1ドル=116円台まで円高が進むなど、激しい動きが見られた。現在は1ドル=120円前後で落ち着いており、当面、日米の金融政策の方向性の違いから緩やかな円安基調が続くと見込まれるが、世界的な金融市場の混乱が生じることで安全資産である円が買われ、一時的に円高に振れる可能性は残っている。

 他方、長期金利については、比較的安定して推移している。金利上昇に対する警戒感は根強いが、日本銀行の国債買い取りによって需給はタイトになっており、当面、長期金利の上昇余地は限られるだろう。

企業業績の現状と今後の展望

 15年4~6月期はマイナス成長に陥ったが、同期の企業業績は改善が続いた。財務省が四半期ごとに公表している「法人企業統計調査」によると、15年4~6月期の経常利益(金融保険業を除く全産業、全規模、季節調整値)は19.2兆円と前期から14.8%増加し、過去最高を更新した。業種別に見ても、製造業は6.9兆円(前期比+23.8%)、非製造業は12.3兆円(同+10.3%)と、ともに過去最高益となった。

 経常利益は前年同期と比べても23.8%増加しており、製造業では「輸送機械」(前年比+13.6%)や「化学」(同+38.5%)、「情報通信機械」(同+67.4%)など、非製造業では「サービス業」(同+8.1%)や「卸売業、小売業」(同+11.7%)、「建設」(同+154.6%)など多くの業種で増加した。また企業の規模別に見ると、経常利益は大企業(前年比+24.2%)だけでなく、中小企業(同+26.0%)でも増加している。

 他方、企業の売上高については、国内、海外ともに需要が弱いことを受けて、製造業は前期比+0.4%、非製造業は同▲0.2%と横ばい圏の動きとなっている。また、前年比で見ても、製造業は+1.2%、非製造業は+1.1%と小幅の増加にとどまっている。

 売上高が伸び悩む中でも経常利益が増えているのは、収益力の高まりによるものである。実際、売上高経常利益率など企業の収益性を図る指標は改善が続いている。主因は資源価格の下落による輸入コストの減少である。特に原油価格は、世界経済の先行き懸念を背景とした需要減少観測やシェールオイルの生産高止まりなどから低迷が続いており、一部の業種を除けば、業績を押し上げる要因となっている。

 

 企業業績は7~9月期以降も改善が続く見通しである。8月の中国株価下落以降、需要面には弱さが見られており、今後も売上高の増加はあまり期待できないものの、資源価格の下落が引き続き企業のコスト減少につながることから、経常利益は増加を続けると考えられる。企業業績は3年連続で過去最高益を更新することになるだろう。

 ただし、「日銀短観」をもとに、15年度における企業の事業計画を見ると、大企業の経常利益は前年比+4.7%と増益が見込まれているのに対し、中小企業は同▲0.1%と小幅減益が見込まれている。これは、需要の弱さに対する中小企業の強い警戒感の表れと考えられる。そもそも中小企業は大企業と比べて売上高の減少に弱い営業構造となっている。

 企業の規模別に足元の損益分岐点売上高を計算すると、大企業では売上高が30%程度減少しても営業黒字を確保できるのに対し、中小企業では15%程度と相対的に余裕がない。今後、内外景気の弱さの解消が遅れるようだと、中小企業を中心に事業計画を下方修正する企業が増える可能性がある。

年末一時金の予測

 企業業績が改善する中、労働者の賃金も持ち直している。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、労働者1人あたりの賃金は緩やかに持ち直しており、ボーナスを算定する上で基準とされることの多い所定内給与(いわゆる固定給)は15年8月時点で前年比+0.2%と増加している。

 この背景にあるのが、労働需給のタイト化である。総務省「労働力調査」によると、15年9月の完全失業率(季節調整値)は3.4%まで低下しており、同月の厚生労働省「一般職業紹介状況」においても、有効求人倍率(新規学卒者を除きパートタイムを含む)は1.24倍と、まだバブル景気の余韻が残っていた1991~92年並みの高水準となっている。

 仕事を探している労働者側では就職しやすくなっている一方、企業側では人手不足が深刻化しているが、雇用のミスマッチの問題から人手不足がすぐに解消されるのは難しく、当面、賃金の上がりやすい環境が続くことになるだろう。

 こうした中、夏のボーナスは少なくとも大企業では増加した模様である。厚生労働省の調査によると、主要な大企業における15年夏のボーナスの平均妥結額は83万2292円と前年から3.95%増加した(注2) 。

 

 他方、大企業から中小企業まで含まれる厚生労働省「毎月勤労統計調査」では、夏のボーナスの大部分が含まれる6~8月の1人あたり特別給与は合算して計算すると前年比▲3.3%と大幅に減少している。厚生労働省の調べによると、6月にボーナスを支給した事業所の割合が前年よりも低くなっており、その影響によるものと考えられる。

 今年1月に同調査の対象事業所が変更になったことによる誤差の可能性を完全には排除できないが、結果をそのまま解釈すると、大企業の夏のボーナスは増えたものの、中小企業においてボーナスの支給を見送った企業が増えた可能性がある。

 このように夏のボーナス結果はもう一つ判然としないところがあるものの、大企業、中小企業ともに業績の改善が続いていることから、冬のボーナスは3年連続で増加すると見込まれる。ただし、繰り返しとなるが、足元では中国など新興国の景気減速を受けて内外景気の先行き不透明感が強まっており、業績の下振れリスクは高まっている。

 冬のボーナスの支給に対して慎重にならざるをえない企業が出てくる可能性は十分にあり、結果的に15年冬のボーナスは比較的高い伸びとなった昨年(注3) と比べると小幅な増加にとどまることになると予想される。

(注1)2015年1~3月期の実質GDP(年率換算値)は530.5兆円と、14年度の525.9兆円よりも0.9%ほど高かった。このため、実質GDPが1~3月期の水準で年度中は横ばいとなっても(年度中はゼロ%成長が続いても)、15年度の実質GDPは530.5兆円となり、数字上(見かけ上)は+0.9%のプラス成長となる。なお、予測値は15年9月時点のものであり、今後、修正される可能性がある。

(注2)資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業のうち、妥結額などを把握できた375社の結果。数値は各企業の組合員数による加重平均値。伸び率は前年を下回ったものの、水準で見ると過去最高だったリーマン・ショック前の07年の84万1817円にかなり近づいている。

(注3)厚生労働省「毎月勤労統計調査」の特別集計によると、14年冬のボーナス支給額は前年比+1.9%(事業所規模5人以上)と00年以降では2番目に高い伸び率となっている。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する
「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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