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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー13ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー13ー

第13回 『マネジャーに必要な素養とは?』(4)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、私たちのパートナーである現代マネジメント研究会・菅野篤二氏が提唱している「管理者に必要な5つの技法」から、「リーダーシップの技法」を取り上げました。
 次は「目標管理の技法」を取り上げたいと思います。今回はその前段として、目標管理の本質について考えていきましょう。

1.目標管理にありがちな問題点

 先日ある企業(小売業)から、「わが社はMBO(注)をやっているがうまくいっておらず、社員から不満の声が上がっている」というご相談がありました。(注)Management By Objectives=「目標管理」の原語

 目標そのものに対する納得度も、評価結果に対する納得度も低い、どこかに問題があるとは思うものの、何が問題でどこを修正すべきなのかがわからないということでした。
 目標管理のフォーマットはあるものの、中身は次のようなもので、明文化されたルールがほとんどないまま運用されているようでした。

 ちなみに店舗部門の個人売上数値が(昨年実績値)とあるのは、昨年実績を確保する目標という意味です。
 同社のしくみには、主に3つの問題があると考えられます。
 1点目は、店舗部門の個人売上数値については、本人が自主的に目標を設定する余地がないことです。

 日本の多くの中堅・中小企業に、長年にわたって目標管理の導入を支援されてきた菅野氏は、「目標管理とは、組織目標と個人目標を話し合いによって統合し目標を達成していく技法」と定義され、「目標管理はノルマ管理ではない」と言っています。

 目標管理の産みの親であるP.F.ドラッカーによる、その原語が「Management by Objectives and Self control」であることから見ても、目標管理の本来の主旨は、「目標の設定とその達成に向けての管理を、本人自身が行う」ことにあるのです。

 そうすることによって、本人が自身の目標に責任を持ち、自ら目標を達成しようと主体的に行動することになるからです。

 目標が、与えられたものなのか、自ら考え自主的に立てたものなのかによって、達成に向けるモチベーションが大きく異なるのは、人間の自然な心理です。

 昨年の実績数値が自動的に今年の目標になるというのは、ノルマ以外の何物でもありません。まして達成度で評価されるとなれば、がんばるほどにノルマが厳しくなるのですから、前向きな意欲につながるはずがありません。

 2点目は、個人の目標と組織の方向性や役割との関連が見えないことです。
 売上数値以外については自身で目標を立てることになりますが、そのもとを「自身の仕事」においています。もちろんそれも間違いではありません。

 ただ、そもそも目標は、仕事を網羅的に記述するものではなく、組織が成果を上げるための優先度・重要度の高い課題を取り上げるものです。したがって、「今の自分の仕事」という目線で考える前に、所属する組織に対して、自分がいま貢献すべきことは何なのかという視点で考えることが必要になります。

 いきなり本人がゼロベースで目標を考えるのではなく、その前にやるべき大事なことがあります。それは、組織責任者の視点で、わが組織の方針や目標が何なのか、組織の役割・機能・成果を実現するために、組織を構成するメンバー一人ひとりが何を担うべきなのかを、全体を俯瞰しながら戦略的に考えることです。

 だからと言って、組織責任者が考えたものをトップダウンでメンバーに示すのでは、やはりノルマ管理になってしまいます。

 本人が、自分のこととしてその目標の必要性を感じ、「自ら」引き受け、取り組もうというスタンスになってもらうために、組織責任者自身がストーリーを描き、十分な対話によってその意味を理解してもらう工夫が大切になります。

 3点目は、目標のレベル感の目安がないことです。
 たいていの組織には、その組織を統括する責任者とメンバーがいます。組織には、事業部、部、課といった階層がありますので、同じ組織責任者であっても、階層に応じて役割責任の大きさには違いがあります。

 またメンバーの中にも、アシスタント的な仕事、担当者としてある程度の自己裁量で行う仕事、自身の仕事に加え後輩の指導や上司のサポートを含む仕事などのように、任されている仕事によって役割責任の大きさに違いがあります。

 したがって、それぞれの役割責任を定義し、これに見合ったレベル感の目標を立てることを約束事としておかないと、組織への貢献や本人の成長につながらない、意味のない目標が立てられてしまうおそれがあります。
 このような観点で、目標管理のしくみやルールを見直せば、目標設定や評価の納得度も、ある程度高めることができると思われます。

2.目標管理の本質

 ところで、そもそもの目標管理は、ドラッカーの原語からわかるように、一人ひとりが自身で目標を立て、その達成に向かって自律的に工夫しながら業務を遂行するためのマネジメントツールであって、個々人を評価するためのツールではありません。

 ドラッカーは、「現代の経営」や「マネジメント」の中で、経営管理者の仕事を明快に述べており、図に示すと次のようなサイクルになります。これは組織運営のPDCAとも言えますが、目標管理はまさに、このPDCAを回していくためのツールやインフラとも言えるのではないでしょうか。

 ところが日本では、バブルが崩壊したころから、成果主義とセットになって、報酬を決める評価のための目標管理が広まっていくことになりました。個人にノルマを課し、その結果を直接的に報酬と関連付けるツールとして使われるようになったのです。

 成果主義は、行き過ぎた個人主義を招き、日本企業が長年培ってきた強みであるチームワークや組織力を損ね、業績に悪影響を及ぼしたため、早々に修正がかかりました。
 しかし、「目標管理は評価の道具」という考え方は根強く残り、今なお多くの企業が個人を評価するために目標管理を使っています。

 もちろん、目標管理を評価に使うことによって、社員の自主性の開発、能力や専門性の向上、本人と上司の間のコミュニケーションの活性化や相互理解、評価の納得性の向上などの効果をもたらしている事例もたくさんあります。

 しかしその一方で、「評価に使う」からこそ、目標管理の本来の意味をゆがめてしまうケースも見受けられます。以下は、その典型的な例です。

①目標項目の統一化
 3人の営業マンが、次のような目標を立てました。
 Aさん:新規顧客からの売上1千万円を達成する
 Bさん:既存顧客との面談の質を上げる(必ず、新規サービスの紹介をする。他部署でのニーズを聞き出すためのトークをする)
 Cさん:サービス価値の説明の工夫、付帯サービスの充実により1件あたりの受注金額を10%アップする

 3人とも、ミッションは個人の売上の拡大です。これに向かってそれぞれが自主的に考えて、自身がヤル気になれる目標を立てることは、目標管理の本来の主旨にかなっています。
 にもかかわらず、これでは直接的な比較ができず公平な判定が難しいからという理由で、職種ごとに目標項目を統一することにこだわっている会社が非常に多いのです。

②目標設定基準の複雑化
 評価されることを意識すると、必ず達成できる目標や、努力せずに簡単に達成できる目標を立てようという気持ちが働くことがあります。これでは、組織への貢献と本人の成長につながる意味のある目標になりません。

 これを回避するために、難易度という考え方を取り入れたり、あるべき目標のレベル感を詳細に規定しようとして、目標設定の基準やルールが複雑化しがちです。それでいて、いくら突き詰めても誰もが納得するものはできず、すっきりとした解決には至りません。

 このように、評価の公正性を期するあまり、目標管理の本来の意図を見失った使い方が多く見受けられます。その裏には「報酬」の問題が隠れています。社員にも経営にも、「評価が報酬を決めてしまう」という強い思い込みがあるために、評価に対して、必要以上に敏感になってしまうのです。

 冒頭にご紹介した小売業の場合も、報酬の問題が陰に潜んでいるため、なかなか問題の整理ができず、適切な対処が見出せないようでした。

3.目標管理を機能させる工夫

 その会社では、これまで取締役と社長だけで行っていた社員の評価を、課長クラスに権限移譲することにしました。あわせて、これまで使っていた一般的な評価基準に加えて、目標管理を導入しようということになりました。

 しかし検討を進めていくうちに、「初めて評価をする人たちが、いきなり評価に使うことを前提に、目標管理を運用するのは無理だ!」という結論に至り、以下のような枠組みとしたのです。

【目標管理】
〇管理職に、まずは目標管理の意味をよく理解してもらい、使いこなせるようになってもらう。具体的には下記を運用していく。

【評価】
〇職群・階層別に、社員に求めたい行動を体系化した「職務行動基準」を作り、これを評価基準とする(従来の、全社一律の一般的な評価基準を抜本改定)
〇「職務行動基準」の中に、「目標設定」や「進捗管理」、「目標達成」という項目を盛り込む
〇目標管理の運用を通してメンバーと話し合った内容を含め、目標管理の結果も踏まえて、「職務行動基準」により総合的に各メンバーの業績や行動、意欲を評価する

 このような考え方に立てば、目標管理のために取り決めておくべきことは、緻密な基準やルールではなく、大まかなガイドラインで十分となります。

 組織責任者は、評価の重荷から解放され、思い切って目標管理を運用してみることができます。ガイドラインを守りながら、詳細なルールに縛られることなく、自身で考えながら経験を積み、都度振り返りを重ねていくことで、だんだんと目標管理を使いこなせるようになっていくはずです。

 運用のこつやポイントが身についてくれば、いずれ目標項目ごとに評価点を出すことも、できるようになるかもしれません。
 菅野氏がこれまで指導されてきたクライアントの中には、10年、20年と目標管理の経験を積み上げて、管理職を育て、組織力を高めてきた会社がいくつもあります。

 基準やルールの精巧さよりも、丁寧に運用し続ける地道な努力こそが目標管理を組織運営に活かす鍵であることは間違いありません。だとするならば、組織責任者が安心して「目標管理を使ってみる・使い続ける」環境を整える工夫こそが、目標管理を組織に定着させる近道なのではないでしょうか。

 最近、あるクライアント企業で、「目標管理を行うが、直接評価点をつけない」というやり方を試みようとしています。

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