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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー5ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー5ー

第5回 『もしドラ』に見るマネジメントの役割(3)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前々回、 前回と、『もしドラ』の主人公みなみの活動を通して、マネジメントの1つ目の役割「自らの組織に特有の役割を果たす」、2つ目の役割「仕事を通じて働く人たちを生かす」について考えました。

 今回は引き続き、3つ目の役割「自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する」について考え、まとめていきたいと思います。

4.高校野球にイノベーションを起こす

 みなみたちマネジメントチームは、「自らの組織に特有の役割を果たす」「仕事を通じて働く人たちを生かす」という役割を遂行しながら、マネジメントの力を高めていきました。そしてこれに伴って、野球部の実力も確実に高まり、練習試合でも徐々に成果が表れるようになっていったのです。

 そうは言ってもみなみには、今のままでは甲子園に出場できるほどの実力ではないことはわかっていました。無名の都立高校が甲子園に行くということは、ほとんど常識はずれ。それを実現するには、根本的に何かを変えるようなことが必要ではないかと考えます。

 そしてみなみは、『マネジメント』に書かれている、「マーケティング」と並ぶマネジメントの機能=「イノベーション」を思い出すのです。

 ドラッカーは、「イノベーションは、新しい満足を生み出すことである・・・イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを、計画的かつ体系的に捨てることである。」と言っています。

 高校野球にもきっとそういう何かがあるはず。そう思ったみなみは、専門家である監督の加地に「何を捨てるか?」を相談します。
 すると加地は、「送りバント」と「ボールを打たせる投球術」と答えます。送りバントは、みすみすアウトを一つとられるばかりか、失敗のリスクもある。

 セオリーではあるが、一方で、バッターが個性的・創造的な行動をとることを妨げる。また、ボールを打たせる投球術は、いたずらに試合を長引かせるだけ、というのが加地の持論でした。
 こうしてみなみたちは、「ノーバント・ノーボール作戦」という、高校野球のセオリーから外れた戦略を採用することになるのです。

5.活動を「社会」へ展開する

 同じ頃、ここまでさまざまな取り組みをしてきたみなみは、マネジメントの第三の役割=「社会の問題に貢献する」について、まだ手がつけられていないことに気づきます。

 ちょうどこの頃、みなみが、かねてからその参画を期待していた正義が、マネジメントチームに加わることになり、二人は、第三の役割に向き合い始めるのです。みなみは、野球部にとっての「社会」とは何かを考え、「まずは学校だ」という結論に至ります。

 そんな折、陸上部のキャプテンの沙耶(さや)が野球部の変化に興味を持っていることを知り、「野球部のマネジメントを、他の部活にも展開していけばいいんだ!」と思いつきます。女子高生のみなみが、コンサルティング活動を始めることになったのです。

 陸上部には、各メンバーに責任を付与することをすすめ、練習への参加率向上を、柔道部には、チーム制の導入をすすめ、体力測定結果の向上をもたらします。

 家庭科部では、フィードバックのしくみを導入することによって、部員の部活への取り組み姿勢が変わり、吹奏楽部では、各人の強みを活かしてバンドを編成し直すことによって、演奏の質が高まるなど、みなみのコンサルティングは次々と成果を出していきました。

 さらにこの活動は、正義のアイディアにより、良好な関係性ができた部活同士のコラボへと発展します。そして、陸上部や柔道部との合同練習により、「ノーボール・ノーバント作戦」のもとで課題となっていた、走力の強化や、ピッチャーの足腰の強化という、野球部自身の実力強化へと跳ね返ってくることとなったのです。

 ほかにも、家庭科部には調理の試食と感想のフィードバックを協力し、吹奏楽部には応援歌のアレンジを依頼するなど、連携が図られていきました。
 他の部活への貢献を目的に始まった活動が、部活間の相互作用、相乗効果で、お互いにとって思わぬ価値を生み出し合うことになったのです。

 また正義は、地域の少年野球リーグに対する野球教室の開催を提案。社会への貢献を、校外へと広げていきました。この活動もまた、部員たちが「教える」ことを通して自分たちの力量を高めるという、副次的な効果をもたらしました。

 一方みなみは、学校がややもてあましていた問題児たちを、野球部のマネジメントチームに加えることで、彼女たちを更生させることに成功します。働きがいのある仕事を任された彼女たちは、責任ある自分の役割に集中するうちに、自然と問題行動から足を洗っていったのです。

 このことは、活動を広げる中で人手の足りなくなってきたマネジメントチームを強化しつつ、学校として頭の痛かった問題の解決に一役買うこととなりました。

 このように、みなみたちマネジメントチームによるマネジメントの3つ目の役割の遂行は、学校や地域社会にさまざまな効果をもたらしたばかりでなく、野球部の能力向上、実力強化にもつながっていきました。
 そしてこれがイノベーションを推し進め、ついには無名校の甲子園出場という快挙を成し遂げる
ことになりました。

6.マネジメントとは

 みなみたちがやってきたことは、

  • マーケティングによって一人ひとりの強みを見出し、それを生かす(2つ目の役割)とともに、
  • 従来当たり前だった手法を捨てるという戦い方のイノベーションによって、
  • 学校・先生・親・地域など、野球部の活動を支援してくれるすべての人たちに感動を与える(1つ目の役割)とともに、
  • 学校・地域など、野球部が属する社会が抱える課題に対して貢献する(3つ目の役割)
    ということでした。

 こうしてみると、マネジメントの役割は、極めてシンプルなことであり、当たり前のことではないかとあらためて思います。
 しかしその「シンプルで当たり前」が、簡単ではない。だから、多くの企業・組織の経営者や管理者が、マネジメントに悩み、試行錯誤を繰り返しているのでしょう。

 ではなぜみなみたちは、それをうまくやりきることができたのか。そこには、『マネジメント』の中に書かれている「真摯さ」があったからではないかと思うのです。

 ドラッカーは、「無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのようなものをマネジャーに選ぶことを許さない。」「知識もさしてなく、仕事ぶりもお粗末であって判断力や行動力が欠如していても、マネジャーとして無害なことがある。

 しかし、いかに知識があり、聡明であって上手に仕事をこなしても、真摯さに欠けていては組織を破壊する。組織にとってもっとも重要な資源である人間を破壊する。組織の精神を損ない、業績を低下させる。」と、強い語調で述べています。

 そして、「真摯さを定義することは難しいが、真摯さの欠如を定義することは難しくない」として、下記の5点を示しています。

【「真摯さ」の欠如したマネジャーは・・・・】

  • 強みよりも弱みに目を向ける
  • 何が正しいかより、誰が正しいかに関心を持つ
  • 真摯さより頭の良さを重視する
  • 部下に脅威を感じる
  • 自らの仕事に高い基準を設定しない

 ここまで見てきた「マネジメントの3つの役割」の基盤は、この「真摯さ」だと私は思います。これが、マネジメントのあり方、管理者のあり方の本質だと感じます。

 管理者の登用にあたり、もっとも重要視すべき判断軸とも言えるのではないでしょうか。 いやそれ以前に、自分自身が管理者という立場にあるのなら、これを常に意識すること、そして、自らの考えや振る舞いがここに根づいているのかを内省し続けることを、身につけていなければなりません。

 しかし、管理者も一人の普通の人間です。自分一人で常に自分を律していくなど、簡単にできるものではありません。自分はできているつもりでいても、周囲から、特に部下からはそうは見えないということもよくあることです。

 だから私は、「組織的内省の場」が必要なのではないかと思うのです。管理者の方々が、日々の悩みを吐露し合い、自分たちの姿勢・あり方を共に振り返る機会を定常的に持つことが、「マネジメントの3つの役割」を担うことのできる真の管理者としての成長につながっていくように思います。

 以上、3回にわたって「『もしドラ』にみるマネジメントの役割」を考えてきました。次回以降はまた別の視点から、「管理者」について考えてみたいと思います。

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