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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー6ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー6ー

第6回 『マネジャーの実像』にみる管理者の役割・仕事(1)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回までは、P.F.ドラッカーの言う管理者の3つの役割を、『もしドラ』を題材にして考えてきました。

 高校の野球部を舞台に高校生がマネジメントを行うストーリーは、新鮮で興味深くはありましたが、「実際はそんなに単純・簡単なものじゃないよ」というのが、大方のビジネスマン、本物の管理職の皆さんの思うところではないでしょうか。
 そこで今回からは視点を変え、現実的な管理者に焦点を当てていきたいと思います。

1.マネジャーとは実践的なもの

 今回取り上げたいのは、ヘンリー・ミンツバーグ(『戦略サファリ』や『MBAが会社を滅ぼす』などでおなじみの、マネジメント・組織論を主たる研究分野とする経営学者)が、『マネジャーの実像』の中で述べている「マネジャーの役割」です。

 ミンツバーグは、「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」という、あの有名なセリフではないですが、「よきマネジャーは教室では育成されない!」と主張し、実践を重視しています。

 この書籍は、そんな彼が、29名のマネジャーに密着し、その仕事ぶりを観察したり、話を聞いたり、彼らの日誌に目を通したりした調査を基に、マネジャーの仕事について考察したものです。

 29名の所属組織はまちまちで、民間企業だけではなく、政府機関、医療機関、非営利団体もあります。業種も、金融、警察、映画制作、航空機製造、小売、通信などさまざまで、規模に至っては、最少30人未満から、最大80万人という極めて大きな違いがあります。また一口にマネジャーと言っても、経営トップ、ミドルマネジャー、現場マネジャーと、その位置づけもいろいろです。

 彼は、この調査以前から、マネジャーの仕事の全体像を表す試みを進めており、その中で一つの「マネジメントのモデル」(詳細は後述)を見出し、発表していました。

 これが、この調査の対象となった多種多様なマネジャーを読み解くことにも役立ちました。この調査が、モデルの検証にもなったとも言えましょう。
 今回取り上げていくミンツバーグの「マネジメントのモデル」は、このように実在のマネジャーに適用できるものであるからこそ、机上の管理者論ではない、現実的な管理者の姿が表れているように思います。

2.マネジャーの仕事

 ところで、「マネジャーの仕事」と言われて私が真っ先に思い浮かべるのは、ドラッカーが『現代の経営』の中で述べている「経営管理者の5つの活動」です。
 その5つとは、①目標を設定する ②組織する ③動機づけを行い、コミュニケーションを行う ④評価、測定する ⑤部下を育成する です。

 これは、組織運営のPDCAそのものを表しています。また、私たちの専門領域である人事制度の観点からすると、目標管理そのものとも言えます。
 トップ、ミドル、現場という階層の違いによって、管轄範囲や責任の重さに違いはありますが、すべての管理者に共通する仕事を、シンプルかつ明快に言い当てていると思います。

 一方で、実際にマネジャーが抱えている複雑多岐にわたる仕事を、これ以上ないまでにそぎ落とした表現とも言えます。現に、管理職研修で、「管理者の仕事はこの5つです!」と自信満々に語ると、「私は自身の担当顧客をたくさん持っていますからね~。正直、こんなことまで手が回りませんよ。」とか、「うちの管理職はみんなプレイングマネジャーですから、こういうことに時間をかけられないんですよ。」「大企業の管理職ならともかく・・・われわれ中小企業では無理ですよ。」などという声が、しばしばしば聞こえています。

 そんな声を聞くたびに、私の心の中には、「じゃあ、管理職って何なのですか? 何のために彼らを管理職にしているのですか?」という疑問がふつふつとわき上がります。しかしそれと同時に、「まあ確かに、それが当事者の実感なのかも」という思いにもかられます。

 これからお話しするミンツバーグの「マネジメントのモデル」は、これよりもう少し具体的・機能的です。マネジャーの役割・仕事を、より実際的・実践的な形でとらえているように思います。

3.3つの次元でマネジャーの役割・仕事をとらえる

 ミンツバーグは、マネジメントの究極の目的は、「組織・部署が役割を果たせるようにすること」と言っています。たとえば開発部長であれば、顧客に喜ばれる新たな機能を持つ新製品を、他社に先駆けて開発すること、A地域をテリトリーとする営業課長であれば、わが社の製品の特性・特徴・価値をお客様に理解・評価してもらい、受注を獲得し、A地域でのシェアを拡大し、売上を伸ばすこと、といったことでしょうか。

 ドラッカーの言う一つ目の役割=「自らの組織に特有の使命を果たす」とほぼ同じと言えるでしょう。  ではそのために、マネジャーは日常的に何をしているのか? 彼はそれをモデル化し、3つの次元として整理しました。それが、
  ①情報の次元でのマネジメント
  ②人間の次元でのマネジメント
  ③行動の次元でのマネジメント
です。

 ここでいう「次元」とは、現場業務からの距離感を表しています。現場業務から遠い順に、①→②→③となっています。

 一般的にマネジャーというものは、価値を生み出す「現場」で直接に腕を振るうことがその中心的な仕事というわけでなく、少し離れたところから「組織・部署がその役割を果たす」ために仕事をするものです。とはいえ現場の仕事をまったくしないわけではありません。

 そこでこのような3つの次元で、役割・仕事が整理できるというわけです。

 この3つの次元においてマネジャーが果たすべき役割があるのですが、その役割には、対外的と対内的の2つの側面あります。なぜならマネジャーというものは必ず、自分が責任権限を持つ組織と、これを取り巻く外部環境に挟まれた位置に存在しているからです。
 これを整理したのが次表です。

 このモデルを見て私は、複雑で多岐にわたる管理者の仕事を、大づかみにばくっととらえられたような感触を得ました。
 意識の中心や優先順位が、この中のどこに置かれているかは、管理者それぞれによって異なるでしょう。しかし、「いやこれは私の仕事を指しているものではない」という管理者は、おそらくいないのではないでしょうか。

 ミンツバーグは、「時代や環境が大きく変わっても、管理者の仕事そのものは、昔と今とで大きな変化はない」と言っています。しかしそれをどうとらえ、解釈するのかについては、さまざまな研究が今なお続けられており、いろいろな提言がなされています。

 なぜかと言えば、管理者の仕事をもっとうまくやりたい、よりよいものにしたいというニーズが、今も変わらずあり続けているからです。

 それだけマネジメントというものは、簡単に語り尽くすことができないものだということではないでしょうか。ある特定のノウハウやテクニックを身につければ、その質を高められるような性質のものではなく、もっと複雑で奥深い、人間の本質に関わるものだと私は思っています。

次回はこの「マネジメントのモデル」を使いながら、「マネジャーとは、一体何をするものなのか?」、組織における管理者の実際の姿を、より具体的に探究していきたいと思います。

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