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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー3ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー3ー

第3回 『もしドラ』に見るマネジメントの役割(1)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、管理職のあり方を考える手始めとして、私が出会ってきた上司たちの姿を考察してみました。
 そしてそこに、「調整者」「変革推進者」「管理者」という管理職の発揮すべき機能を見出しました。

 この考察を足がかりとし、今回からは、これまでに多くの研究者やコンサルタントによって語られてきた「マネージャー論」や「マネジメント論」の中から、私にとって印象深いものを取り上げ、「マネジメントとは何か?」をさらに探求していきたいと思います。

1.マネジメントの3つの役割

 皆さんは、2009年に発売され、爆発的なドラッカーブームを引き起こした「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を覚えていらっしゃるでしょうか?
 『もしドラ』は、野球部のマネージャーになった女子高校生、川島みなみが、P.F.ドラッカーの『マネジメント』と出会い、これを参考書として弱小野球部を甲子園出場に導く物語です。

 みなみは、親友である夕紀(=もともと夕紀が野球部のマネージャーだったが、長期の病気療養のため続けられなくなってしまった)を甲子園に連れていきたい一心でマネージャーを引き受けましたが、どうすればそれが実現できるのかがわかりません。

 そこでまず「マネージャー」という言葉の意味を広辞苑で調べてみると、「管理や経営をする人」と書かれていました。

 これを「マネージメントをする人」と解釈した彼女は、書店で「マネージャーか、マネージメントに関する本はありませんか?」と尋ね、この本を紹介されます。
 私は職業柄、『現代の経営』や『マネジメント』を、以前から読みかじってはいました。

 しかし、そこに書かれているマネジメントの意義や機能を、より身近なものとして理解することができたのは、『もしドラ』のおかげだと思います。

 私自身が都立高校の野球部で女子マネをしていた経験とも重なり、深いつながりを感じる、思い入れのある1冊なのです。
 ドラッカーは『マネジメント』の冒頭で、マネジメントの役割を次のように述べています。

 (1)自らの組織に特有の使命を果たす

 (2)仕事を通じて働く人たちを生かす

 (3)自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する

 これらの役割の大前提となるのは、組織の存在です。企業をはじめとする組織は、それぞれが何らかの実現すべき成果、発揮すべき機能を持っています。

 マネジメントの目的は、組織の持つ機能を発揮させ、組織に特有の成果を実現し、顧客や社会に対して何らかの貢献をすることにあります。
そしてその目的を実現するために、マネジメントにはこれら3つの役割があると書かれているのです。

 野球部も組織である以上、何らかの実現すべき成果、発揮すべき機能を持っているはず。みなみはそれをどのようにとらえ、この3つの役割をどのようにして実行していったのでしょうか。以下、それを読み解きながら、「マネジメントの3つの役割」の意味を掘り下げていきたいと思います。

2.野球部の使命

 何から始めていいかわからなかったみなみは、まず、ドラッカーの「われわれの事業は何か?何であるべきか?」という問いについて考え始めます。

 初めは「野球をする組織が、野球部」と考えますが、それでは何か物足りないと感じた彼女は、さらに「『われわれの事業は何か?』の問いは、外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる」という一文を見つけます。そして「野球部の顧客は誰か?」を考え始めるのです。

 答えは簡単には見つかりません。行き詰まったみなみは、夕紀や、後にマネジメントチームの一員となる補欠選手の正義に、「なぜ野球部に入ったのか?」と質問を投げかけ、彼らの想いを聴き出していきます。

 そして夕紀が、小学生の時、リトルリーグで活躍するみなみのプレイに感動し、再びその感動を味わいたいと思っていることや、正義が、起業という夢を持っており、そのためには体育会系の活動をすることが有益だと考えていることなどを知ります。

 また、初めての合宿では、練習風景や部員、監督、後輩マネージャー一人ひとりの振る舞いをじっと観察し、野球部のことをよく知ろうとします。そこから、監督の加地とエースの慶一郎の間にある想いのすれ違いも感じ取ります。
 そんなことをしていくうちに、みなみは下記の結論に思い至りました。

○野球部の顧客は、私たちが野球をやるためにお金を出してくれたり、協力してくれたりする人たち=先生たち、学校、東京都、東京都民、高野連、全国の高校野球ファンである。そして部員自身も従業員であるとともに一番の顧客である。

○顧客が求めているものは感動である。

 みなみは気づいたのです。「『顧客に感動を与えるための組織』というのが、野球部の定義だったんだ!」と。
 そして野球部の目標を、「甲子園に行くこと」とあらためて定めました。野球部の定義に裏付けられ、みなみ自身の目標が、部の目標とつながったのでした。

 ここに至るまでにみなみのたどったプロセスは、「われわれの顧客は誰か?われわれは、顧客に対してどんな価値を提供するのか?」という問いから始まりました。

 そして、その時は無意識ではありましたが、顧客を見つけ(夕紀や正義、また、野球部のみんな)、顧客の想いやニーズを把握する取り組みをしています。これをドラッカーは、マネジメントの機能の一つ、「マーケティング」だと言っています。

 つまりみなみのやってきたことは、マーケティングを通して顧客および顧客の求める成果を定義し、それを組織の使命として掲げること。そしてこれこそが、マネジメントの第一の役割=「自らの組織に特有の使命を果たす」につながっていくのです。

 こうしてみなみは、「野球部の使命は、顧客に感動を与えること」と自信を持って言い切るところまでたどりつきました。
 では、私たちはどうでしょうか?

 私たちの会社・組織の使命は、何なのでしょうか? 私たちは一人の管理職として、それをみなみのように、心の底から湧き上がる自分の言葉で語ることができるでしょうか?
 みなみは、「それができて初めて、マネジメントの第一の役割を果たすことができる」ことを、私たちに教えてくれているように思います。

 さて、みなみと彼女の仲間たちは、その使命を果たすため、これからさまざまな活動を展開していくことになりますが、続きは次回以降に譲ることとします。
 そして引き続き、マネジメントの2つ目、3つ目の役割について、考えていきたいと思います。

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