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安全衛生

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(32)

Q

今回は安全衛生についての規定方法について教えてください。

A

安全衛生については、どの会社の就業規則にも記載されている場合が多いと思いますが、法的には就業規則の相対的必要記載事項で「安全衛生に関する定めをする場合には就業規則に明記しなければならない」、ということになります(労基法89条第6項)。

 通常、安全衛生に関する「遵守義務」や「健康診断」について規定することになりますが、「遵守義務」については、基本的な心構えについてのみ簡単に規定する場合と、会社の業務内容や作業実態に沿って具体的な定めをする場合とがあります。

 例えば、建設業・土木業、また有害物を取り扱う業種では、 安全衛生法上の規制も多いので、詳細に定める必要がある場合も多いでしょう。ただ、就業規則の本則にあまり事細かに安全衛生に関する事項を記載するのは賛成できませんので、委任規定として別に定めるのがスマートだと思います。

Q

職場によってはかなりの危険を伴うような場合もあるでしょうから、そこで働く社員の生命・身体を守るうえで、安全衛生に関する事項を定めたり労働者への教育を行うことは重要だと思います。

A

そのとおりですね。労働契約法の第5条には「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と使用者の安全配慮義務が規定されています。

 きちんとした安全衛生教育をしないと、事故が発生したとき会社の安全配慮義務違反が問われかねません。就業規則(又は別規程)には安全衛生に関する作業手順や危険回避措置等、必要に応じて遵守すべき事項や安全衛生教育について定めておくと良いでしょう。

Q

安全衛生の章では、定期健康診断についての規定をすると思いますが、どんな点に注意すべきでしょうか?

A

会社は採用時と毎年定期に健康診断を実施するよう義務付けられています。

 これを怠れば労働安全衛生法違反となります。労基署の定期調査で定期健康診断を未実施のため是正勧告を受け、是正報告を提出した中小企業も多いと思います。
 悪質な場合には書類送検や50万円以下の罰金が課せられることにもなります。

 健康管理は労務管理上の重要なテーマですから、定期健康診断により労働者の健康状態を正確に把握し適切な労務管理を実施するようにしてください。

Q

定期健康診断の実施が会社に義務付けられていることはわかりましたが、これに従わない社員がいるという話を聞くことがあります。会社としてこれを放置してはまずいのでしょうね。

A

定期健康診断は社員側にも受診義務が課せられていますが、社員が会社の行う健康診断を受けることを希望しない場合に、他の医師の健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出するという医師選択の自由は認められています(安衛法66条5項)。

 実際にはそのような例はまれでしょうし、多忙だとか自分は健康だとか言って社員が受診拒否したままになるような場合が多いと思います。
 しかし、会社もそのまま放置すると社員に対する安全配慮義務を怠ったことになり、万一、過労死等の労災事故が発生した場合には、その責任を問われかねません。

 就業規則では会社が行う健康診断を受けることは社員の義務であって、受信拒否は業務命令違反として懲罰処分の対象になることを定めておくようにしましょう。

規定例:(健康診断)
第○条 会社は常時雇用される従業員に対し、入社の際及び毎年1回定期的に健康診断を行う。
2 従業員は前項の定期健康診断を受診しなければならない。正当な理由なく定期健康診断を受診しない場合、第×条の規定により懲戒処分とすることがある。

 なお、粉じん作業や有機溶剤を使用する業務に従事する労働者には6ヶ月に1回定期に特殊健康診断を実施しなければなりません。従事する業務に応じて規定に定めるようにしてください。

 それから通常の定期健康診断については50人以上の労働者を使用する事業者は労働基準監督署長への報告書提出が必要ですが、特殊健康診断(定期のもの)は事業所の規模に関係なく報告義務があるので注意してください。

Q

安全衛生に関連して、数年前に新型インフルエンザが社会的な問題になったことがあったと思います。社員が伝染性の強い病気に感染した場合に就業を禁止するなどの規定を定めておく必要はありませんか?

A

はい、社員に対する安全配慮義務の観点からも、そのような規定は重要だと思います。

 労働安全衛生法68条では「事業者は、伝染病の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところによりその就業を禁止しなければならない」として病者の就業禁止を定めています。
 そこで、以下のような就業禁止の条文を定めておくと良いと考えます。

規定例:(就業禁止)
第○条 次の各号の一に該当する従業員については、就業を禁止する。
(1)病毒伝ぱのおそれのある伝染病の疾病にかかった者
(2)心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病状が著しく憎悪するおそれのある疾病にかかった者
(3)感染症法等の法令に定める疾病にかかった者

 新型インフルエンザに罹患している場合には、本人の意思にかかわらず上記規定例のように就業を禁止する必要があります。また、本人ではなく例えば、同居の家族が伝染性の病気に感染した場合等には、会社(所属長)への報告義務を定めておくとよいでしょう。

 なお、実務的にはインフルエンザが疑われるような場合、「新型」か否か等は難しい判断になるので会社の判断によらず最寄りの保健所や医療機関などに連絡して、その指示により対応することになるでしょう。
 そのような場合は、通常の体調不良による欠勤や早退と同様の扱いで、会社に給与の支払い義務は生じないと考えられます。

 ただし、新型インフルエンザの感染拡大を防止するため、家族の感染や一部の社員の感染の報告を受け、会社の自主的判断で社員本人を自宅待機させるような場合は、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いが必要になる(労基法26条)ので注意が必要です。

 次回は、安全衛生と表裏の関係にある「災害補償」についての規定を検討します。

今回のポイント

  • 安全衛生に関する定めをする場合には就業規則に明記する必要がある(就業規則の「相対的必要記載事項」)。
  • 建設・土木業、また有害物を扱う業種など安全衛生について詳細に定める必要がある場合は委任規程(別規程)を作成し安全衛生教育を徹底する。
  • 定期健康診断は従業員にも受診義務があり受信拒否は懲罰の対象になることを規定する。
  • 伝染性の強い病気にかかった者への就業禁止規定、また同居家族が感染した場合の報告義務等を定めるようにする。

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