1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント
  5. 退職ー2ー

プライムCメディア

退職ー2ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
退職ー2ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(29)

Q

「自己都合退職」について伺います。当社の規定では「原則として1ヶ月前までに届け出て会社の承認を得ること」とされています。ところが、ある社員から、「退職は2週間前に申し出ればよいはず、民法でそうなっているので当社の就業規則はおかしいのではないか」とのクレームがあったのですが、その点はいかがでしょうか?

A

よく「自己都合退職」という言葉が使われますが、厳密には、「合意退職(合意解約)」と「辞職」とに分けて考えるとよいでしょう。

 

 「合意退職」の場合には、労働者が 「退職願」のような文書で退職の申し込みの意思表示をし、会社側がこれを承諾することで、労働契約が解消、すなわち退職に至ると考えられます。
 ですから、貴社の就業規則で「原則として1ヶ月前までに届け出ること」と規定しているのは、「合意退職」を前提にして「1ヶ月前」と規定しているのだと思います。

 この場合、1ヶ月前までに「退職の申し込み」の意思表示をすれば、会社がこれを承諾し「合意退職」が成立するというのが前提なのですが、もし、会社が承諾しない、あるいは承諾を遅らせるようなことがあると、結果として労働者は退職することができず、地位が不安定になってしまいます。

 そこで、民法では会社が承諾するか否かに係らず、「退職の意思表示から2週間を経過すれば雇用契約は終了する」という規定があるのです(民法627条1項)。

 社員の方は、そのことを知っていて、「2週間前に届け出ればよい」と言っておられるのだと思います。その場合は、「合意退職」ではなく労働者側からの一方的な退職の意思表示(辞職)ということになります。

Q

そうすると、「辞職」ということであれば、その社員が主張していることは正しいということになるわけですね。

A

はい、労働者には、退職の自由があるので、会社が退職の希望を強制的に拒むことはできません。

 ただし、2週間という点については「時給」や「日給」の場合は、辞職の意思表示から2週間で雇用契約は終了する(627条1項)のですが、正社員は「月給制」の場合が多いでしょうから、その場合は例えば給与計算期間が毎月1日から月末までの会社の場合、15日までに辞職の意思表示をした場合は、その月の月末、16日以降の場合は翌月の月末が退職日と解されます(民法627条2項)。

 少し細かい話になりましたが、月給者の辞職の場合はタイミングによって最短で2週間、最長の場合(16日に辞職申し入れ)には1ヶ月半もかかってしまうことになります。

 そういうわけなので、会社が合意退職を前提に「少なくとも1ヶ月前までに届け出ること」と規定しているのは理があるわけで問題はないと考えます。

Q

なるほど「自己都合退職」には、「合意退職」と「辞職」があることはわかりましたが、就業規則ではこれらを区別して記載する必要はありませんか?
また、実務での留意点を教えてください。

A

ひとつの規定方法として、「自己都合退職」の場合、就業規則では、原則は「合意退職の申し込み」として扱い、貴社の就業規則でもあるように、例えば少なくとも1ヶ月程度期間の余裕をもって届出を出すように記載するのがよいでしょう。

 それでも、民法の規定(辞職)も有効なので、その旨も定めておくとベターだと思います。

例:(自己都合退職)
第○条 従業員が自己の都合で退職する場合は、原則として少なくとも1ヶ月前までに退職願いを提出し会社の承諾を得なければならない。ただし、退職の届出に対し、会社の承諾がない場合には、民法第627条の手続きにより、労働契約を消滅させることができる。

 なお、「合意退職」の場合には、会社が承諾の意思表示をするまでの間は、労働者は一度提出した「退職の意思表示」を撤回することができるとされています。

 「退職願」を出してきた社員から再び「撤回」したいという申し入れをされても困るようであれば、会社は承諾の意思表示を早めに出すのが良いでしょう。
 なお、「辞職」の場合には、提出後の撤回は原則できないものとされています。

 それから、「年休」の際にも説明しましたが、自己都合退職の届出をした社員が、業務の引き継ぎもせずに残った有給休暇をすべて消化してから退職したいと申し出る場合があります。
 このような行動を完全に防止することは難しいのですが、「退職に際しての業務の引き継ぎ」については、例えば次のような規定を置いておくとよいでしょう。

規定例:(業務の引継ぎ)
第○条 退職をする者は、退職日まで従来どおり業務に従事するとともに所属長の指示に従い、必要な事務の引継ぎを完了しなければならない。この規定に反して引継ぎを完了せず、業務に支障をきたした場合、懲戒処分を行うことがある。

Q

引継ぎもせずに退職するような場合の懲戒処分として、例えば「退職金の減額」といったことも可能でしょうか?

A

実際にそのような労働者の行為により会社が損害を受けるような場合、また「退職金規程」で退職にあたり懲戒処分を受けた場合には支給減額をするといった規定があれば、減額に限度はあるでしょうが可能だと考えます。

 少なくとも、このような規定を記載しておくことにより、退職者のマイナス行動(過剰な権利行使等)はある程度防ぐ効果があると思います。

 次回は、「解雇」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 「自己都合退職」には「合意退職」と「辞職」があり意味合いが異なる。
  • 就業規則では原則は「合意退職の申し込み」として扱い、1ヶ月程度の期間の余裕をもって届出を出すように記載する。
  • 会社が承諾の意思を示さない場合は民法の規定(辞職)が有効になる。
  • 退職の届出をした社員が、業務の引き継ぎもせずに残った有給休暇すべての取得を要求するような行動を防ぐために、「退職に際しての業務の引き継ぎ」をきちんと規定する。
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ