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退職ー1ー

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退職ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(28)

Q

今回は「退職」について伺います。就業規則の絶対的必要記載事項の最後に「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」とあります。「退職」と「解雇」はどのように違うのでしょうか?

A

「解雇」も「退職」の一形態ですが、「解雇」は使用者の一方的な意思表示による労働契約の解約のことで、それに対して「退職」とは 通常は解雇以外の理由による労働契約の終了と分類する場合が多いと思います。

Q

「解雇」という場合は労働者の意思とは無関係に使用者の意思により労働契約を解約することですね。懲戒解雇、普通解雇、また整理解雇といった解雇が思い浮かびます。

A

解雇は会社側からの一方的な労働契約の解約ということですが、解雇する場合の「解雇事由」などは就業規則に事細かに規定する必要があるので、別途検討することにしましょう。

 そこで、まず「退職」の規定についてですが、退職には労働者の意思による退職(辞職)、また、「期間満了」「定年」「死亡」また「役員就任」といった一定の事実の到来による退職(自然退職・当然退職といったりします)があります。
 そこで、就業規則では「退職事由」について、きちんと規定しておきましょう。

規定例:(退職事由)
第○条 従業員が次の各号の一に該当するときは、退職とする。
1)自己の都合により退職を願い出て会社から承認されたとき
2)期間を定めて雇用されているものが、その期間が満了したとき
3)第×条に定める休職期間が満了し休職事由が消滅しないとき
4)取締役等の役員に就任したとき
5)死亡したとき
6)会社に連絡がなく30日を経過し、会社が所在を知らないとき

 3)は休職期間が満了しても、休職事由が解消しない場合で、「解雇」ではなく「自然退職」とする定めにしています。以前、「休職・復職」(第10~12回)の項でも説明しました。

 それから、最後の6)について少し解説しましょう。このような規定をおいていない就業規則も多いと思いますが、もしこのような規定がないと、従業員が行方不明になって連絡がつかない場合の解雇手続きが少々面倒になるのです。

 すなわち解雇するためには「解雇の意思表示」を相手に伝える必要が生じるのですが、行方不明の場合には、民法に定められている「公示送達」(裁判所の掲示場に掲示し、かつ掲示があったことを官報に掲載等の手続き)といった手続をとる必要があるとされています。

 しかし、このような手続きはかなり面倒なので、実務上は行方不明になった日から「無断欠勤」が続いているとして一定期間(1~2ヶ月程度)経過後に会社が解雇手続をとる場合が殆どだと思います。

 

 そこで、6)のような規定をいれておけば、行方不明から一定期間(30日等)が経過すれば、(解雇でなく)自然退職として処理できるので、無用なトラブルを回避する上でより適切だと思います。

Q

そういえば、知人の会社で昨年の東日本大震災で津波にのまれて行方不明になった従業員がいると聞きました。

A

そうですね。そのような場合、上記6)の規定があれば「無断欠勤」による解雇ではなく、行方不明後、一定期間(上記例は30日)の経過により自然(当然)退職ということで対応ができると考えます。

Q

ところで、上記の退職事由には「定年」による退職は含まれていないのですか?

A

よいところに気が付きましたね。
「定年」も退職事由の一つですから、当然、上記の「退職事由」に加えて記載してかまいません。

 ただ「定年」については「継続雇用制度」で引き続き再雇用される場合も多く、独自の制度として整理するのが一般的なので、次のような新たな条文の中で別途「定年」について規定すると良いでしょう。

規定例:(定年等)
第○条 従業員が満60歳に達した日をもって定年退職とする。
2)「継続雇用規程」に定める基準を満たす従業員が希望した場合、引き続き再雇用し、満65歳に達するまでを限度として雇用を継続する。

 定年は、一定年齢に達した従業員は自動的に雇用関係が終了するものです。
 現在、定年年齢は満60歳を下回ることはできませんので60歳としている会社が多いと思います。

 さらに現在の法律(高年齢者等雇用安定法)では、(1)65歳までの定年年齢引き上げ、(2)65歳までの継続雇用制度(勤務延長又は再雇用制度)の導入、(3)定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければならないことになっています。
 そこで、上記の例では定年は満60歳とし65歳までの継続雇用制度を規定しています。

Q

「定年」は解雇ではないので、いわゆる「解雇予告」などの手続きは不要と考えてよいでしょうか?

A

はい。定年退職は、従業員が一定年齢に達したとき当然に労働契約が終了する制度といえるので「解雇予告」の問題は生じません。

 ただ、本人に定年退職を自覚させるため、会社は1ヶ月程度前を目安に本人に通知するルールを設けておくと良いでしょう。

 それから、60歳が定年といっても退職日についてはいくつかの選択肢があると思います。
1)満60歳の誕生日
2)満60歳の誕生日の属する月の末日
3)満60歳の誕生日の後の最初の賃金締切日
4)満60歳の誕生日の属する年度の末日(3月31日)

 このあたりは、各企業ごとに定めて就業規則(「定年等」)に明記するようにしてください。

Q

当社も定年退職は満60歳の誕生日としていますが、希望する従業員で継続雇用制度対象者の基準に該当する社員は65歳までは嘱託として働いてもらっています。

A

継続雇用希望者全員ではなく、一定の基準に基づいて選抜する場合には、会社が従業員代表と締結した書面による協定で、継続雇用制度対象者の基準(例:過去1年間無断欠勤がない、過去○年間の勤務成績が平均以上、職務に耐えられる健康状態にある等)を決めなければなりません。

 昨年(平成23年3月31日)までは、中小企業(常時雇用労働者300人以下)は特例的に会社が就業規則等の中で継続雇用者の対象基準を決めても良かったのですが、今では必ず労使協定で定める必要がありますから、まだ未対応の中小企業は注意が必要です。

 そして、いよいよ平成25年度からは男性の場合ですが、60歳から特別支給の老齢厚生年金が受給できない世代が60歳を迎えることになります。

 先日、国会では希望者全員の雇用を段階的に65歳まで確保するよう企業に義務付ける「高年齢者雇用安定法」の改正案が成立しました(平成25年4月1日施行)。

 年金の支給開始年齢に合わせ、今後、雇用は65歳まで継続するのがあたりまえという時代になっていくと思われます。
 就業規則も法律の改正に合わせて改定が必要になりますね。

 次回も、「退職」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」は就業規則の絶対的必要記載事項である。
  • 「退職」には労働者の意思による退職(辞職)、と「期間満了」「定年」「死亡」また「役員就任」といった一定の事実の到来による退職(自然退職・当然退職)がある。
  • 会社に連絡がなく、従業員が行方不明になった場合には一定期間の経過後に自然退職となる旨を規定するとよい。
  • 「定年」を定める場合には、定年年齢(60歳以上)と実際の退職日(誕生日、誕生日後の最初の賃金締切日等)を明記する。
  • 「定年」後の再雇用制度で、継続雇用制度対象者の基準を作る場合には就業規則で定めるのではなく労使協定の締結が必要になる。

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