1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント
  5. 賃金ー3ー

プライムCメディア

賃金ー3ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
賃金ー3ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(27)

Q

当社では主任クラスの社員に「主任手当」を支払っていますが、これはいわゆる「定額残業代」という意味付けにしています。このような規定方法は法的に問題ありませんか?

A

いわゆる、「定額(固定)残業代」と言われるものなのでしょうか?規定の内容を詳しく見てみないと合法・違法の判断はできませんが「1.定額残業代として毎月支給する」ことが明記されていて、「2.当月の実際の残業代がこれを超えた場合には差額を別途支払う」ということであれば、 合法と考えられます。

 定額残業代は実際にその月の残業時間が少ない場合にも全額支払い、その月の残業が多く残業代の総額がその額を超えた場合には、その差額もきちんと支払うというわけですから、会社にとってのメリットは考え難いといえます。したがって、あまり積極的にお勧めできる方法とは思えません。

 しかし、社員の立場にたつと、効率的に、規定の時間より短時間で作業を行えば、労働単価を高めることができます。使用者側としても社員が「ダラダラ残業」せず、そのようなインセンティブをもって労働してくれれば業務効率を高める効果は期待できそうです。

Q

なるほど。また、給与を支払う側からすると、給料支払い額を毎月ある程度固定化できるというメリットもあるかもしれませんね。
さて、賃金規程では欠勤や遅刻など、不就労に対する賃金の減額の仕方についても定めが必要なのでしょうか?

A

完全月給制を採る場合は、欠勤、遅刻、早退等があっても賃金は控除しません。しかし、ノーワク・ノーペイの原則で欠勤・遅刻等がある場合には、その部分の賃金を控除するのが一般的です。例えばハローワーク等の求人票に、「日給月給制」と書いてあるのはそういう控除があるという意味だと思います。

 遅刻・欠勤した時間分の賃金を控除する場合の計算方法については、法律上の規定があるわけではなく合理的で社会通念上妥当であれば問題ありませんが、従業員ごとや月ごとに計算方法が異なるのでは社員の理解が得られませんから、どんな場合にどのような計算で控除するのかを正しく規定しておく必要があります。

 減額する際の賃金項目では「基本給」だけなのか、各種手当を含むのかも重要です。一般的には「基本給」部分のみを減額する場合が多いかもしれませんが、割増賃金の計算方法と同じように、その他の手当も含めた「(割増賃金の)算定基礎額」から算出するような方法でもかまいません。いずれにせよ、その旨を就業規則等で明文化してください。

Q

なるほど、減額の計算の対象になる賃金項目を明確にしないと賃金控除の正確な計算ができませんね。それと、減額の際の「日額」や「時間単価」を計算する際の分母はどうするのかも明文化すべきでしょうね。

A

そのとおりです。例えば日額の計算では、1.その月の所定労働日数、2.年間の所定労働日数の月間平均(またはその近似値)、3.(その月の)暦日数、などが考えられますので、きちんと定めるようにしましょう。

 欠勤・遅刻・早退の場合以外にも、例えば賃金計算期間中に入退職する社員の賃金計算もこのような日割り計算によって支払う必要がでる場合もあるでしょう。

Q

リーマン・ショックの後に、工場労働者などに対し会社が休業を命じて、「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)」を受給した企業が多数でましたね。
そのような場合には、労働をしなくても最低60%の賃金を保障しなければならないと聞きましたが、これも賃金規程に記載が必要ですか?

A

はい、これも年次有給休暇の場合と同様に「ノーワク・ノーペイの原則」の例外で賃金の支払いが必要になります(労基法26条)。

 したがって、賃金規程には次のような規定をいれておきましょう。

規定例:(休業中の賃金)
第○条 会社の責めに帰すべき事由により従業員を休業させた場合、平均賃金の100分の60を支給する。

 もちろん、賃金規程でこのように規定(最低基準)しても、別途労使協定等を結んで平均賃金の6割以上を支払うようにすることは可能です。
 雇用調整助成金が受給できるような場合には、別途労使協定を結んで労基法で定める最低基準(平均賃金の100分の60)以上の休業時賃金を支払った会社も多かったと思います。

Q

賃金規程には賞与に関する条文が記載されると思いますが、規定上の留意点はありますか?

A

賞与は退職金と同様に、法律上当然に使用者が支払い義務を負うものではありません。

 しかし、賃金規程(就業規則)に支給することが明示されているような場合には労働契約上支払い義務が発生します。
 規定する際の留意事項としては、賞与は会社の業績の悪化によっては支払えなかったり支給日を変更することもあり得るでしょうから、例えば以下のような規定にしておくと良いでしょう。

規定例:(賞与)
第○条 賞与は、毎年7月及び12月に会社の業績を考慮して支給する。ただし、会社業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給日を変更し、又は支給しないことがある。

Q

賞与の支払日前に退職した者には賞与は支給しないという「支給日在籍条項」は有効と聞いたのですが、賞与支給日前の6月や11月に定年退職になるような社員など不公平という声も聞くのですがその点はいかがでしょうか?

A

賞与は過去(支給対象期間)の労働に対する報酬としての意義だけでなく、将来の労働に対する期待の意義もあると考えられるので、原則として「支給日に在籍する者」に支給すると規定することは有効と考えられます。

 しかし、こうした規定は労働者が退職の日を自由に選択できる自発的退職者についてのみ有効で、定年や人員整理等の会社都合による退職の場合は、本人が退職日を選択できない以上、不利益を被ることもあるので合理的であるか否かの判断は微妙になる場合があると思います。

 そこで会社都合による退職者(定年退職者、整理解雇者)については、勤務期間に対応した金額を支給するといった規定をおくことも考えられます。

 「賃金」についてはこのくらいにして、次回からは、「退職」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 「定額(固定)残業代」は、当月の実際の残業代がこれを超えた場合には差額を別途支払う等すれば、合法である。
  • 欠勤・遅刻の場合の賃金控除については、計算方法を含めきちんと就業規則(賃金規程)に定めておく。
  • 会社の責めに帰すべき理由で休業する場合は平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払はなければならない。
  • 賞与の支払いについては、会社業績の著しい悪化等の場合は、支払い時期を遅らせたり支払わない場合があることを明記しておく。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ