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年次有給休暇ー1ー

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年次有給休暇ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(20)

Q

今回から就業規則での休暇の規定について説明してください。休日と休暇の違いについては以前少し説明がありました。

A

そうでしたね。休日というのは従業員が労務提供義務を負わない日、すなわち労働日以外の日ということです。一方、休暇というのは厳密な定義はないのですが、一般的には本来の労働日において特定の事由が発生したことによって労働者が請求することによって労働が免除される日といった意味合いになります。

 ○○休業という言い方もありますが、休暇が長期にわたるような場合、例えば「育児休業・介護休業」といった言い方をすることがあります。

Q

それでは、種々ある休暇の中でまず年次有給休暇(以下、「年休」)から説明してください。会社では短く「年休」と言ったりします。

A

年休は「労働者の健康で文化的な生活の実現に資する」ために、 一定日数の休暇を有給で補償する制度です。年次有給休暇は労基法第39条に次の規定があります。

 使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。(労基法第39条1項)

 すなわち、労働者は雇入れられてから半年経過すれば10日の年休が与えられるということになります。もちろん、条文にもあるように入社から6ヶ月間の出勤率が8割以上でなければなりません。

 そして、2回目以降の年休の付与にあたっては、同法の第2項に定められていて初回(6ヶ月後)から1年を経過する毎に一定の日数の年次有給休暇が付与されることになります。
 この場合も前年1年間の出勤率が8割以上ということが年休付与の条件になります。

Q

なるほど、出勤率が重要で8割未満の場合、年休は与えられないわけですね。
例えば、入院が長期にわたって欠勤や休職が長期間にわたるような場合は出勤率8割が達成できない場合もありえますね。

A

はい、そのような場合には原則として年休は与えられないことになります。

 もちろん労基法は労働条件の最低基準を定めたものですから、そのような場合でも会社がその労働者に恩恵的に年休を与えてもかまいません。

 出勤率を計算する上で、1.業務上の負傷や疾病で療養のために休業した期間、2.産前産後休業期間、3.育児・介護休業法に基づいて取得する育児・介護休業期間、それから4.年休を取得した期間については出勤したものとして扱わなければならないことになっているので注意しましょう。

 勤続年数と年休の付与日数について通常の労働者の場合には、労基法39条2項では次表のように決まっています。
 2年6ヶ月経過以降は毎年2日ずつ加算して勤続6年6ヶ月以上で最長20日となります。

 この部分は、平成11年4月の施行以前は1日ずつの加算だったので古い記載のままになってしまっている就業規則をたまに見かけます。正しい日数で記載してください。

Q

勤続年数の考え方なのですが、例えば60歳で定年となりその後嘱託として再雇用するような社員の場合はどう扱えば良いのでしょうか?

A

勤続年数は、労働契約の存続期間(在籍期間)とされています。

 従って、定年退職・再雇用の場合のように一旦定年退職して退職金の支払をした上で再雇用するような場合であっても、実質的には労働契約は継続していると考えられるので勤続年数を通算する必要があります。
 したがって、定年後再雇用される嘱託者向けの就業規則でもその旨を規定しておく必要があるでしょう。

(嘱託社員の就業規則規定例)
嘱託職員の年次有給休暇の付与については正規社員の就業規則第×条(年次有給休暇)を適用し、退職時の有給休暇残日数の繰越し及び継続勤務期間の通算を行う。

 これは、例えばパートタイマー等を正規社員に切り替えるような場合も、勤務の実態が継続していると考えられる場合は同様に扱う必要があります。

Q

次に年休の事前申請手続きについては、どのように規定するのがよいでしょうか?当社では、「少なくとも2日前までに所属長に届け出ること」となっていたと思います。

A

年休は勤続要件と出勤要件を満たせば当然に発生する労働者の権利です。

 原則的には使用者は労働者が請求する時季に年休を与えなければなりませんが、労基法には使用者にも一定の場合、時季変更権が定められています。

 実務上も、会社は従業員が年休を取得したことによる業務支障に対する対応策が必要なわけですから、その前提として事前の申請を求めるのは当然のことだと考えます。
 そのために、年休を取得する2日前までに届出を義務付けるのは特には問題ありません。

Q

わかりました。さて、届出をする際の年休使用目的なのですが、ある社員から年休の利用方法は労働者の自由だから、申請理由は書きたくないとのクレームがありましたが、その点いかがでしょうか?

A

確かに、年休をどのように利用するかは労働者の自由で使用者が干渉することはできません。

 ですから、その社員が言うように休暇請求理由の記入を義務付けることはできないと思います。
 しかし、年休を請求する社員が複数重なって休暇付与対象者を選ぶ必要があるような場合には、休暇請求理由も選択判断の要素にはなり得るでしょうから、請求理由を強制ではなく任意で記載させるのは可能だと考えます。

 なお、連絡先などを書かせるのは長期休暇の場合は緊急時の対応として必要でしょうが、休暇の長短に関係なく一律に記入を義務付けることは避けた方が良いでしょう。

Q

わかりました。それから使用者側の時季変更権ですが、業務繁忙程度で年休の時季を変えさせることは認められないと聞いたのですがいかがでしょうか?

A

時季変更権が認められるか否かは、年休取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かということになります。これは、1.会社の規模、2.担当業務の内容、3.代替者の配置の難易度、などによって変わってくると考えられます。

 「人員不足の上に業務が繁忙」であるとか、「代替者配置が困難」といった場合でも、それは使用者が通常の努力や配慮をすれば回避できる範囲のことなら「時季変更権」は簡単には認められないと考えるべきです。

 重要なことは、実務では労使の信頼関係を築くこと、そして年休については社員と会社相互の利益を調整した上で、労働者の同意を得て運用するということだと思います。

 次回も、年休について検討します。

今回のポイント

  • 年次有給休暇(年休)は労基法で定められた有給の休暇制度で継続勤務要件(6ヶ月以上)と出勤率要件(8割以上)を満たした労働者に与えられる。
  • 出勤率を計算する上で、出勤したものとして扱わなければならない場合(産前産後休暇期間等)がある。
  • 定年後の再雇用のような場合であっても、実質的に労働契約が継続していると考えられる場合には勤続年数は通算して計算する。
  • 年休の事前申請を求める規定は有効だが、使用者が年休の時季変更を命じるためには「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当する必要があり、安易な変更は認められない。

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