1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント
  5. 年次有給休暇ー2ー

プライムCメディア

年次有給休暇ー2ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
年次有給休暇ー2ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(21)

Q

前回、年休の申請は「少なくとも2日前までに所属長に届け出ること」といった規定をして運用しても問題ないというお話でした。
 当社では、社員から当日の朝になって「今日は年休にして欲しい」と連絡が入ることがあり、承認しないと言ったところ社員から不平が出たケースがありました。これについてはどのように考えればよいのでしょうか。

A

年休は労働者の権利であって、使用目的なども会社が干渉することはできないことは前回説明したとおりです。

 その点、当日の朝申し出られたという理由だけで年休取得を拒否することは 多少問題が残るかもしれません。

 しかし、会社としても当日の朝に申し出られたのでは休暇に対する対応策を講じる時間的な余裕が全くない、または著しく困難であるという事情があれば、そのような申出を拒否してもよいと私は考えます。

 ただ、いつも事前の申出をきちんとする社員がたまたま体調不良で当日の朝になって出勤不能で年休に振替えて欲しいと要求してきたような場合、会社としてはできるだけ承認してあげるほうが良好な労使関係を築く上では良いのではないでしょうか?

 したがって承認するか否かの裁量権はあくまで会社にあるという前提で、例えば以下のように規定にしたらいかがでしょうか。

年次有給休暇を取得する際は......少なくとも2日前までに届け出なければならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、事前に届け出ることが困難であったと会社が承認した場合に限り、事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振替える場合がある。

Q

わかりました。次に年休の翌年への繰り越しについて説明してください。当社では勤続年数の長い社員は1年で最高40日の年休取得ができるケースが多くなります。

A

未消化の年休の話ですね。年休を取得する権利は労基法上の諸権利の時効と同じで2年間となります(労基法115条)。

 これを前提に就業規則では、「翌年度に限り繰り越すことができる。」といった規定をしていると思います。

 仮に就業規則で「年休は翌年度に繰り越すことはできない」等と規定したらどうでしょうか?その場合でも、「年休権は消滅しない」とする通達がありますので、そのような規定をしても無効ということになります。

 時効の起算日は取得可能になった時点とされているので、入社日に3日、その後6ヶ月経過で7日付与といったような場合、最初の3日については入社日、6ヶ月経過後の7日は入社6ヶ月経過時点から2年間ということになります。

Q

年休日数が多く残ってしまう問題の解決策の一つとして、年休の計画的付与という制度があると聞きましたが、具体的にはどのような方法でしょうか?

A

年休は原則として社員自らが取得時季を指定して申し出るものですが、「年休の計画的付与」とは年休のうち年5日を超える部分に限り、会社が指定した時季に年休を取得させることができるという制度です。

 これには組合又は労働者代表との労使協定の締結(届出は不要)が必要になります。

 具体的なやり方としては、例えば、夏季とか年末に所定休日にするのではなく、従業員一斉に年休を取得させるという取扱いにするのです。
 その他に、班別に交替で取得させたり、個人毎に休暇計画を決めて取得させることでもかまいません。

Q

計画年休を取得する日の扱いなのですが、その日はあくまで労働日であって休日ではないわけですね。
例えば事業場全体で一斉に計画年休を実施するとして、その日を会社の所定休日にする場合と比べどんな違いが考えられますか?

A

メリットとしては、年休の消化が進み社員の年休取得率向上につながりますね。年休の未消化が大量に残るといった問題も一部解消できるかもしれません。

 また、その日は会社休日ではないので会社の稼動日数としては年間の総労働日数にはカウントされます。
 したがって、例えば割増賃金の単価がその分低く押さえられるといった効果があります。もっともこれらは会社側のメリットという意味ですが。

 一方、事業場で一斉に年休の計画的付与を行うような場合に問題になることとしては、社員の中には年休が5日を超えて残っていない社員もいると思います。
 そのような社員は年休を消化させることはできないことになります。

Q

なるほど。しかし、他の社員が一斉に計画年休で休んでいるわけですから、そういう社員だけ出勤させるのは問題がありそうですね。

A

例えば、そういう社員には別の休日に出勤してもらって一斉の計画年休の日は振替休日にするといった裏技も考えられます。

 しかし、それも難しければその社員については計画年休の日の労働は会社の責に帰す理由で休業扱いとして休業手当(労基法26条)を支払うという方法も考えられます。
 実際には、このような場合はその社員には有給の特別休暇を与えるなどして処理する会社も多いようです。

Q

いろいろと考慮すべき点はありそうですが、「年休の計画的付与」は当社の就業規則にも定めがあるので、具体的な実施を検討してみたいと思います。
社員が健康で文化的な生活を送るためにも、日頃から年休の取得率を向上させる努力は会社として必要だと考えています。

A

その点は私も同感です。
ところで年休は本来暦日単位で取得するものですが、使い勝手を良くし年休の取得率を向上させるために、午前とか午後とか半日単位で認めることも可能です。

 必ずしも会社は年休の半日付与を認める義務はありませんが会社の裁量でそのようにすることが可能です。

 さらに、平成22年4月に施行された労基法改正で労使協定を締結することを前提に、年間5日間に限って年休の「時間単位の付与」をすることが可能です。
 これは、以前から公務員では認められていた制度なのですが、法改正により民間企業でも可能になりました。

Q

次の質問ですが、年休は有給休暇ですから取得日の賃金が補償されるわけですが、就業規則ではどのように定めるのが普通でしょうか?

A

年休を取得した日の賃金については、以下の3つのいずれかを支払うこととされています。

1)平均賃金
2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
3)健康保険法による標準報酬日額に相当する金額(労使協定が必要)

 このうち通常は、2)所定労働時間労働した場合に支払われる賃金を選択する会社が多いと思います。
 その場合、就業規則では「年次有給休暇を取得した日の賃金は所定労働時間労働した場合に支払う通常の賃金を支払う。」というように規定すれば良いでしょう。

 ただ、パートタイマーなどで一日の労働時間が毎回のシフト表によって異なるような場合には、一日の所定労働時間が何時間なのか不明確になることもあるので、その場合は、1)平均賃金を支払う、というような規定方法も考えられます。

 ところでパートタイマーの話をしましたが、週の所定労働日数が短いパートもいると思いますので、次回は年休の比例付与他について説明したいと思います。

今回のポイント

  • 当日の朝になって突然年休を請求してくるような場合は必ずしも承認する必要はないが、会社の裁量で状況により承認することがある旨を就業規則で規定するようにする。
  • 年休の時効は取得が可能になった日から2年となる。
  • 年休の消化を進めるために年休のうち5日を超える日について「年次有給休暇の計画的付与」を活用する方法がある。
  • 年休を半日単位、または時間単位で与える方法がある。
  • 年休取得日の賃金は、「所定労働時間労働した場合に支払う通常の賃金」、「平均賃金」などを支払う必要がある。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ