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休日の振替、代休

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休日の振替、代休

  著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(19)

Q

前回は時間外労働・休日労働の解説でしたが、今回は休日の振替と代休について教えてください。振替と代休は当社ではほとんど区別せずに運用されていて、実は違いがよく分からないのですが?

A

休日の振替と代休については、就業規則を作成する際等に様々な会社で説明をしますが、なかなか理解していただけない場合があります。

 しかし、この二つは法的に考えても性質は大きく異なるものですし、労務管理上きちんと区別して運用していただかないと賃金支払などでトラブルの原因になってしまうので十分に注意しましょう。

 まず、「振替」の方ですが 振替という言葉どおり、就業規則で決められた本来の休日を他の労働日に振替えるわけです。振替えることによって、その労働者にとっては元々の休日は労働日になって、振替えられた特定の日が休日に入れ替わるというわけです。

Q

例えば休日の土曜日に勤務して、その代わりに翌週の水曜日をお休みにするというようなことですね。振替えるわけですから、事前にその手続が必要になりそうですね。

A

そのとおりです。振替は例えば、労働日である金曜日を休日に振替にして翌日の本来休日である土曜日を労働日にするようなことでもかまいません。

 いずれにしても、いずれか先に到来する日の前までに振替の手続をとることが必要になります。予め定められた休日と労働日の入替えを事前にすませることがポイントと言えます。

 振替というのは法的に言えば、本来の休日を入れ替えるということなので「労働条件の変更」ということになりますね。
 そこで、就業規則で「休日の振替」を行なうことがある旨をきちんと定めておかなければなりません。

(休日の振替)
第×条 業務上必要がある場合には、前条で定める休日を他の労働日と振替えることがある。

 振替をすることで、その労働者にとっての休日と労働日が入れ替わりますから、当初休日とされていた日に労働しても割増賃金の支払いは不要ですし、前回説明した三六協定の締結も特には必要ないということになるのです。

Q

少しわかってきました。一方、「代休」というのは「振替」のような事前の手続をせずに休日に労働し、代わりに後日、休みをとるということだと思います。当社でも、多くの場合はそうなってしまいます。

A

代休という制度は、まず休日労働ありきなのです。休日に労働した後で、後日その代わりにいずれかの労働日の労働を免除するというのが代休です。

 その場合には、休日に労働させたという事実を変更することはできません。すなわち休日労働に対する割増賃金の支払が必要になります。
 これについては法定休日労働なら3割5分増し、所定休日労働でも通常は2割5分増しの賃金支払が必要になるというわけです。

 休日の労働を命じるためには就業規則の定めや三六協定の締結・届出等が必要なのですが、休日労働の後に代休を取らせること自体は、本来の労働日の労働を会社が免除するだけですので、振替のように就業規則上特に「代休」の定めが必要というわけではありません。

 また従業員に代休取得の請求権を認めるような規定の仕方も避けた方がよいと考えます。
 ところで、休日労働(割増賃金支払いが必要)をした後に代休をとった場合の賃金について考えてみましょう。

 例えば、法定休日に働けば135%分の賃金支払が必要なわけですが、その代わりとして会社が後日代休をとるように労働者に命じた場合、その代休日の100%の基礎部分の賃金を控除できるのでしょうか? 実は、当然に控除してよいというわけではありません。

 しかし実務上は、多くの会社でこのような賃金控除がなされていると思います。
 会社としては、代休制度の意味として、代休をとった休日労働日については、100%部分を控除して、残りの35%(所定休日の場合は25%)部分の割増だけを払うという運用の会社がほとんどだと思います。

 トラブルを避けるためにも代休日の賃金は控除する旨を賃金規程等に記載し、従業員にも十分説明するのが望ましいと思います。

Q

わかりました。ところで、代休をとらせるつもりでも業務が多忙でなかなかとれないケースが多いのが当社の実態です。

A

ある法定休日に労働した従業員に対し、代休をとらせるつもりがあっても、同一賃金計算期間内に代休が与えられなければ、「賃金全額払い原則(労基法24条)」との関係で、一旦は135%の割増賃金の支払が必要です。実務的には、次期賃金計算期間内には代休を付与すべきでしょう。

 このあたりが曖昧な会社も見受けられますが、きちんとやっていただきたいところです。

Q

代休と振替の違いが大分わかってきました。会社にとってみれば休日振替を行なうことで割増賃金支払の抑制効果がありそうですね。
ところで休日の土曜日を労働日にして翌週の特定日を休日に振替えたような場合、土曜日に労働したことでその週の総労働時間が週40時間を超えてしまう場合も多いと思うのですが、その場合は割増賃金の問題はありませんか?

A

はい、おっしゃるとおり問題になります。法律上はそのとおりで、振替をしたとしても実際に週40時間を超えた労働時間部分については2割5分増しの賃金支払が必要になります。

 振替を同一週内で行なえば(例えば休日土曜日を前日の金曜日に振替)、そのような問題は回避できますが、通常、休日の振替は直前に就労の必要性が発生し、振替日はそれより後の日になってしまう場合が多いと思いますので会社にとっては悩ましい問題です。

 その点で、一週間の起算日の設定を変えるという方法を紹介しましょう。
 就業規則に特に定めがない場合には「1週間とは日曜日から土曜日とする(日曜日が起算日)」といった行政通達もあるのですが、一般的な土日を休日にする会社の場合、1週間の起算日を土曜日にすれば一定の効果が見込めます。

 すなわち、土曜日から始まるその後の一週間のうちに振替日を指定することができれば週の所定労働時間を40時間に納めることも可能になるというわけです。

 次回からは休暇について解説したいと思います。初回は、「年次有給休暇」について考えてみましょう。

今回のポイント

  • 「振替」は、本来の休日を他の労働日と事前に振り替えるもので「労働条件の変更」にあたるため(振替を行なうことがある旨を)就業規則に定めておく必要がある。
  • 「代休」は、まず休日労働の事実があって、後日その代わりに労働日の労働を免除(代休)するもの。
  • 後日「代休」を取らせるつもりでも、同一賃金支払期間内に代休がとれなければ、一旦は休日労働分(法定休日の場合135%)の賃金支払が必要になる。
  • 「振替」の場合でも、1週40時間の労働時間を超えた部分については割増賃金の支払いが必要になる。

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