1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント
  5. 時間外労働・休日労働

プライムCメディア

時間外労働・休日労働

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
時間外労働・休日労働

 著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(18)

Q

今回は就業規則で時間外労働・休日労働を定める際の留意点について教えてください。

A

時間外労働や休日労働は「残業」と呼ばれ多くの会社で当たり前のこととして行なわれていることも多いと思います。

 しかし、労基法では原則1日8時間、1週40時間を法定労働時間とし、これを超える労働を規制しています。
 もし、この規制に違反して労働させた使用者は、 労基法119条1号で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることになります。

 実際には規制されたままでは事業活動は困難ですので、労働者代表との三六協定を締結し所轄の労働基準監督署長に届け出ること、また原則として2割5分増し(法定休日は3割5分増し)の割増賃金を支払うことで時間外労働や休日労働を可能にすることとしているわけです。

Q

三六協定を締結せずに残業を命じている会社も多いと聞きましたが、そのような厳しい罰則があるわけなのですね。 さて当社の1日の所定労働時間は休憩時間を除くと7時間30分です。この場合の残業について労基法との関係ではどのように考えればよいのでしょうか?

A

厳密に言うと、いわゆる残業には「法定時間外労働」と「所定時間外労働」の2種があります。

 「法定時間外労働」は労基法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えた労働を意味します。
 一方「所定時間外労働」の方は、使用者と労働者が労働契約で決めた時間以外の労働という意味になります。
 就業規則で始業時刻、終業時刻、また休憩時間が定められていますので、これを超えた労働という意味ですね。

 例えば、貴社のように1日の所定労働時間が7時間30分と決められていれば、その後に働く労働時間のうち最初の30分は「所定時間外労働」、さらに1日8時間を超えた労働時間については、「所定時間外労働」であり、かつ「法定時間外労働」でもあるというわけです。

Q

少しややこしくて混乱しますね。そのように2つの時間外労働を区別する理由は何なのでしょうか?

A

法定労働時間内での「所定時間外労働」(貴社の場合は最初の30分間の残業)は、会社と従業員との労働契約上の問題なので、就業規則で「業務上必要がある場合には所定労働時間を超えて労働を命じることがある」と記載すれば残業を命じても差し支えありません。

 例えば、1日6時間の契約で採用しているパートタイマーの場合は、契約時に本人の同意があることが前提になりますが、就業規則の定めがあれば2時間までの「所定時間外労働」を命じることが可能です。
 この場合、法定労働時間内の残業なので、法的には割増賃金の問題も発生しないことになります。

 一方、法定時間外労働を命じる場合(1日8時間、又は1週40時間を超える労働)には、就業規則で定めるだけでは足りず、労基法36条に基づく三六協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出てはじめて適法なものになります。

 三六協定では、延長できる労働時間等を設定し、会社はその延長時間の範囲内で残業を命じることができるというわけです。

 労使協定というのは労基法上の刑罰を逃れる免罰的な効果を持っています。つまり、就業規則で時間外労働を命じることがある旨を定め、三六協定を締結してはじめて適法に会社は「法定時間外労働」を命じることができるということになります。

Q

なるほどわかりました。それでは休日の労働についてはどう考えれば良いでしょうか?

A

会社が従業員に対し休日に労働を命じること自体は従業員の個人生活との兼ね合いの問題があるので通常の労働日の残業以上に注意が必要になると思います。

 もちろん、業務上の必要性が高く他の従業員では代替が困難ということであれば「会社は休日に労働を命じることがある」と就業規則で規定することは有効で、一般論としては従業員の私生活より優先して労働させる拘束力もあると考えられます。

次に休日に労働させる場合、法定労働時間(例えば週40時間)外に及ぶ場合が多いでしょうし、また法定休日(原則1週間に1日必要)に労働させる場合もあると考えられますので免罰的効果としての三六協定の締結と労基署長への届出が必要になります。

それでは時間外労働と休日労働について就業規則での規定例を見てみましょう。

第×条(時間外労働・休日労働)
 会社は業務上必要がある場合、第△条に定める所定労働時間を超えて、もしくは第□条に定める休日に労働を命じることがある。
2 前項に基づく時間外労働及び休日労働のうち法定労働時間を超え、または法定休日に労働させる場合は、労働基準監督署に届け出た労使協定に基づくものとする。
3 法定労働時間を超えて労働させた場合及び法定休日に労働させた場合は、賃金規程に基づき割増賃金を支給する。

Q

第3項ですが、法定労働時間を超えた部分は原則2割5分増し、法定休日の労働は3割5分増しの賃金支払が必要でしたね。

A

その通りです。貴社の場合、最初の30分の所定時間外労働は1日8時間の労働時間内ですから会社は割増分の賃金を支払う義務はありませんが、法定時間外労働、法定休日労働では法律で決められた割増賃金を上乗せして支払う義務が生じます。

 これまで、時間外労働や休日労働は会社が命じて行うと説明してきましたが、実際には労働者の自主的な判断で残業するような会社も多いのではないでしょうか。

 しかし、会社としても割増賃金を含めた支払いが増大するわけですから労働者の勝手な判断で時間外労働や休日労働を無制限に許すのは問題がある場合も多いと考えます。

Q

会社としては割増賃金の問題に加え長時間労働による健康問題にも留意する必要がありますね。具体的にはどんな対策をとればよいでしょうか?

A

業務の内容や会社の管理体制などによっても異なるでしょうが、基本的には就業時間内の労働の密度を高め、時間外労働はなるべく減らすということが基本になると思います。

 このため、時間外労働、休日労働をする場合には、その必要性について所属長が判断するということが大切だと思います。
 労働者側が勝手に判断するのではなく、残業は所属長に事前に許可を得て行うというルールにして、これを就業規則に定めておくことが適切だと考えます。

(規定例 - 事前の許可)
時間外労働、休日労働を行う者は、事前に会社所定の申請書で所属長に申請を行い所属長の承認を受けなければならない。

 次回は「休日の振替と代休」について解説します。

今回のポイント

  • 法定労働時間を超える労働や法定休日の労働を命じるためには、三六協定の締結と所轄労基署長への届け出が必要になる。
  • 時間外労働には所定時間外労働と法定時間外労働があり、後者(法定時間外労働)の場合には三六協定締結・届出や割増賃金の支払い義務が発生する。
  • 不必要な時間外労働・休日労働や長時間労働を抑制するために事前の許可制とするように就業規則に定めることが有効である。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ