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変形労働時間制

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変形労働時間制

 著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(17)

Q

今回は変形労働時間制について教えてください。

A

変形労働時間制を採用している事業場は多いと思います。所定労働時間は原則1週40時間・1日8時間以内という法規制がありますが、一定期間にわたって平均化して所定労働時間を設定することを認めるのが「変形労働時間制」です。

 例えば1カ月とか1年とか決められた単位期間を決め、その期間内で総所定労働時間を平均して1週間あたり週法定労働時間(原則40時間)内に抑えるようにします。

 このようにすれば、期間内で1日又は1週間の法定労働時間数を超える場合があっても、 法定労働時間を超えたとは取り扱わないという制度なのです。

 例えば、ある労働日に9時間の労働をさせたり、特定の週に法定労働時間の40時間を超えて労働させることが可能になります。会社が予め決めた所定労働時間内で労働する場合であれば、割増賃金を支払う必要もありません。

Q

なるほど。それでは、まず1カ月単位の変形労働時間制を導入する場合について説明してください。

A

労基法では3種類(1カ月以内、1年以内、及び1週間単位)の変形労働時間制を定めていますが、1カ月単位の変形労働時間制はその基本的なものといえます。

 各日ないし各週で労働時間の繁閑の差がある場合や、週休2日制が実施できない場合などには有用な方式です。
 1カ月単位の変形労働時間制を導入するためには、1.労使協定の締結・届出、又は、2.就業規則(又はそれに準ずるもの)において次のことを定める必要があります。

1)変形期間(1カ月以内)を平均して1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間(原則40時間)を超えないように、変形期間の各日・各週の労働時間を決める
2)変形期間の起算点
3)有効期間(労使協定の場合のみ)

 変形期間の各日、各週の労働時間を具体的に決めるわけですが、例えば飲食業や警備業などのようにシフト(交替制)勤務をとるような場合には、就業規則にすべて特定して労働日や勤務時間を定めることは難しいでしょうから、具体的な勤務割は変形期間が開始する前までに勤務割表を作成して本人に周知するという方法で労働時間を特定しても構いません。

 規定例を以下に示します。

第×条(1カ月単位の変形労働時間制)
 会社は従業員に対し、毎月1日を起算日とした1カ月単位の変形労働時間制を採用し、労働時間は、休憩時間を除き、変形期間を平均して1週間40時間以内とする。なお、始業、終業の時刻及び休憩時間は次の通りとし、勤務時間と休日の組み合わせは、原則として起算日までにシフト表を作成し、周知する。
1)Aシフト 始業時刻 ○時 就業時刻 ○時 休憩時間 ○時から1時間
2)Bシフト 始業時刻 ○時 就業時刻 ○時 休憩時間 ○時から1時間
3)Cシフト 始業時刻 ○時 就業時刻 ○時 休憩時間 ○時から1時間

 「1カ月の変形労働時間制を採る」というだけで、具体的な始業・終業時刻を全く記載していない就業規則を見かけますが、これらの事項は就業規則の絶対的必要記載事項なので上記のようにできるだけ具体的に記載するようにして下さい。

Q

次に1年単位の変形労働時間制を採用している会社も多いと思います。就業規則ではどのように定めれば良いのでしょうか?

A

1年単位の変形労働時間制とは変形労働時間制における変形期間を「1カ月を超え1年以内」とするものです。

 1年以内の一定期間について、事業場の繁忙期には労働時間を長く設定し、反対に閑散期には労働時間を短くすることで効率的に労働時間を配分することができる制度です。もちろん1日の労働時間は一定のまま繁忙期と閑散期で休日数の調整を行う場合も多いでしょう。

 また、特に繁忙期、閑散期ということではなく、週休2日制を採らずに隔週土曜日を出勤にするというような会社の場合、土曜日が出勤になる週は週の所定労働時間が法定労働時間の40時間を超えてしまいます。
 そこで、年間の労働日と休日のスケジュールを決めて年間トータルの平均で法定労働時間内に納めるようにして1年変形労働時間制で運用している会社も多いと思います。

 1年単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則にその旨を定めることと、さらに必ず労使協定を締結して、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要になります。
 就業規則では例えば以下のように定めると良いでしょう。

第×条(1年単位の変形労働時間制)
 労使協定により、対象期間を4月1日から翌年3月31日までの1年間とする1年単位の変形労働時間制を採用する。始業、終業、及び休憩時間は以下とし、対象期間を平均して1週間の労働時間を40時間以内とする。
始業時刻 8時30分   終業時刻 17時   休憩時間 正午から1時間

Q

労使協定ではどのようなことを決めて締結すればよいのでしょうか?

A

労使協定での締結項目は次のようなものです。

1,対象労働者の範囲
2.対象期間(1カ月を超え1年以内の期間。例えば1年)
3.特定期間(対象期間中に特に業務繁忙な期間)
4.労働日及び当該労働日毎の労働時間
5.対象期間の起算日、有効期間

 ここで、3.特定期間は特に業務繁忙な時期で1日の所定労働時間を8時間30分とし、それ以外の期間の通常の所定労働時間は7時間30分とするといった定めも可能です。
 もちろん、対象期間全体を通じて、法定の週40時間労働が守られていることが前提になります。

 なお、1年単位の変形労働時間制を実施する場合、労働日数の制限(対象期間3カ月超の場合、1年あたり上限280日)、1日や1週間あたりの労働時間の限度(原則1日10時間、週52時間)、また連続して労働させる日数の限度(原則6日、特定期間12日)などが決められています。

 1カ月単位の変形労働時間制に比べて要件が厳しくなっていますので十分注意して実施してください。

 次回は、「時間外労働」について検討します。

今回のポイント

  • 「変形労働時間制」は一定期間(1カ月、1年等)にわたって平均化して所定労働時間を設定することを認める制度。
  • 1日又は1週間の法定労働時間数を超える場合があっても、期間内で総所定労働時間を平均して1週間あたり週法定労働時間(原則40時間)内に抑えれば法定労働時間を超えたとは取り扱わない。
  • 労基法では1カ月以内、1年以内、及び1週間単位の3種の変形制の定めがある。
  • 1カ月単位の変形労働時間制を導入するためには、1.労使協定の締結・届出、又は、2.就業規則(又はそれに準ずるもの)において、変形期間の起算点や変形期間の各日・各週の労働時間を定める。
  • 1年単位の変形労働時間制は1年以内の一定期間について、事業場の繁忙期には労働時間を長く設定し、反対に閑散期には労働時間を短くすることで効率的に労働時間を配分することができる。(就業規則の定め及び労使協定締結と労基署への届出が必要)

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