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試用期間

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試用期間

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(7)

Q

今回は試用期間について教えてください。そもそも試用期間とはどういうものなのでしょうか?

A

試用期間は新規に従業員を雇い入れた後、一定期間を「試用」の期間として、その労働者の職務能力や社員としての適格性を判断する期間のことです。

つまり、正規社員として本採用しても大丈夫なのかを会社が判断し決定するための期間ということになります。雇用のミスマッチを防止する観点から、ほとんどの 就業規則では「試用期間」を規定していると思います。

例:第×条 (試用期間)
1.新たに採用した者については、入社日から○ヶ月間を試用期間とする。ただし、会社が適当と認めるときは、この期間を短縮・延長又は設けないことがある。
2.試用期間中に従業員として不適格と認められた者は、解雇することがある。
3.試用期間は、勤続年数に通算する。

 「試用期間」についての法的な性質ですが、少し難しい言葉ですが最高裁では「留保解約権付労働契約」であるとの判断をしています。
 これは、もし会社が試用期間中に社員として不適格と判断し本採用を拒否する場合には、留保されていた会社の解約権が行使されるということです。

 もちろん、これも解雇に該当しますので、「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当である」と認められる場合でなければ解雇は無効(労契法16条)ということになります。

 ただし、留保解約権に基づく解雇ですので、会社にとって通常の解雇より多少広い範囲において解雇する自由が認められていると言われています。
 具体的にどの程度緩やかな基準で解雇できるのかは曖昧で個別の事案毎に判断するしかありません。

Q

試用期間中や満了時に本採用しないという場合、「解雇」として扱わなければならないわけですね。その場合、解雇予告手当の支払い等は必要になりますか?

A

試用期間中といっても労働契約は成立しているわけですから、本採用しないというのは会社側から労働契約を解消する、すなわち解雇するということになります。

 したがって、通常の解雇と同様に、①30日以上前に本採用は行わないという解雇予告をする、②予告は行わず解雇予告手当を支払う、もしくは③解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用する、いずれかの選択ということになります。

 ただし、試用採用後(暦日で)14日以内に解雇する場合は解雇予告手続きの適用が除外されます(労基法20条)。
 逆に言えば、試用期間を設定せず最初から本採用した労働者は、14日以内の解雇であっても解雇予告手当の支払い等が必要になると考えられます。

Q

試用期間の長さについてはどの位が妥当でしょうか?また、長さの上限のようなものはありますか?

A

試用期間の長さについては、通常は1ヶ月から6ヶ月くらいの間で、その会社ごとに長さを定めますが、通常では3ヶ月としている会社が最も多いようです。

 試用期間は、新入社員の業務への適性を判断する期間ですから、一定の判断を行う期間としては1ヶ月では短くて最低でも3ヶ月程度は必要ではないでしょうか。

 本来なら半年位かけて適性などを判断したいというのが会社の本音でしょうが、試用期間は本人にとっては身分が不安定になるわけなので、3ヶ月程度に設定している就業規則が多いのだと思います。
 もちろん、6ヶ月と定めている会社もあり、幾分長いとは思われますが、それでも(6ヶ月が)直ちに問題になることはないと思います。

 試用期間の長さの上限についてですが、法律に定めがあるわけではなく特に決まりはありません。
 ただし、試用期間が1年を超えるような長い設定になると、本当にそれだけ長期間の試用期間を設定しないと適格性の判断ができないのかといったことも含め問題になりそうです。
 やはり、特殊な場合を除いて、通常は最長でも6ヶ月程度とするのが望ましいのではないでしょうか。

 

Q

試用期間を延長することは可能でしょうか?

A

前述のとおり試用期間中や終了時の本採用拒否は、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められています。

 つまり、試用期間を延長するということは本人にとっては長期的に不安定な状態に置かれることになるので、原則としては好ましい事とは言えません。

 もっとも、試用期間を延長できないとすれば会社としては本採用を拒否せざるを得ないかもしれません。
 その点、試用期間を延長することでその労働者にもうしばらく反省の猶予を与えてあげるのだと考えれば、必ずしも労働者が一方的に不利とはいえないという考え方もあり得ますね。

 従って、試用期間を延長する可能性がある場合には、就業規則で延長する場合があることを規定した上で、合理的な理由のもとで本人にも延長の理由や期間を明らかにして行うべきだと思います。

 例えば、試用期間中に私傷病等の欠勤があったために、十分な適格性判断ができなかったという場合もあり得ますよね。
 ただ、いずれにしても試用期間の長さは延長期間も入れて最長でも1年以内に収めるべきだと考えます。

Q

パートタイマーのような非正規社員にも試用期間を設定することはできますか?

A

試用期間は長期間に渡って雇用する労働者の適格性判断をすることを目的とした制度といえます。

 試用期間を設けて適格性を判断し、本採用をしたからにはその労働者に長期雇用を保障するということを前提にした制度と理解することができます。

 通常、パートタイマーの場合は長期に渡る雇用を保障することは前提にしないと思いますので、長期雇用を想定しない正社員以外の社員に対しては、試用期間を設けるのは適切でないと考えられます。

Q

試用期間中の給与などの待遇は低くてもかまわないのでしょうか?

A

試用期間は基本的な業務をマスターするための「見習い期間」という位置づけの場合が多いでしょうから、基本給や手当の金額を低く設定したとしても特に問題ありません。

 極端にいってしまうと、最低賃金以上であれば法的には問題ないことになります。

 ただし、トラブルが発生しないように、募集・採用時にその点を十分説明して本人が納得した上で試用期間中、またその後の本採用での労働条件を明示するようにしてください。

Q

「試用期間は勤続年数に通算される」とありますが、これはどのような意味がありますか?また試用期間中の社会保険の適用はどうなるのでしょうか?

A

例えば、退職金の計算では勤続年数によって支給額に差がでる場合が多いと思います。  退職金制度はあくまでも企業固有の制度ですから、必ずしも試用期間を勤続年数に通算する必要はありませんが、多くの企業では通算しているのではないでしょうか。

 なお、年次有給休暇の付与を判断する上では試用期間を除外することは許されません。
 社会保険ですが、正社員と同じような勤務形態であれば当然試用期間の初日から加入させなければなりません。
 試用期間中は社会保険には加入させず本採用が決定した時点で手続きをするといった中小企業がありますが、これは違法行為になりますので試用期間の採用日から適用する手続きをとるようにしてください。

 次回は「人事異動」について解説します。

今回のポイント

  • 「試用期間」とは、入社後一定期間を「試用」の期間として、会社としてその労働者の職務能力や社員としての適格性を判断する期間
  • 試用期間は「留保解約権付労働契約」の期間とされ、解雇する場合は通常の解雇よりは多少広い範囲において解雇の自由が認められている
  • 試用期間の長さは3ヶ月が最も多く、長くても6ヶ月程度とするのが望ましい
  • 就業規則の規定があれば試用期間を延長することは可能だが、最長でも1年以内にとどめる
  • 試用期間の設定は正規社員に限定する。試用期間の待遇は低くても良いがトラブルが発生しないように留意する

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