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就業規則への記載事項と届出

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就業規則への記載事項と届出

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(3)

Q

就業規則には、必ず定めなければならない事項があったはずですが?

A

就業規則」には、絶対的に定めておかなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、規定を定めるか否かは自由ですが、定めた場合には必ず記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)が 決められています(労基法89条)。

 これら以外の事項については、その内容が法令又は労働協約に反しないものであれば任意に記載することができます(任意的記載事項)。例えば就業規則の前文、目的や服務規律などは任意的記載事項に該当します。

(絶対的必要記載事項)
1.始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項
2.賃金(臨時の賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期及び昇給に関する事項
3.退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 就業規則では、必ず始業・終業の時刻と休憩時間を定め、所定労働時間の長さと時刻を明確にしなければなりません。
 単に「1日の労働時間を8時間とする。」というような規定だけでは、就業規則としての要件を満たしません。例えば、「始業は8時、終業は17時、休憩時間は12時から1時間とする。」と明確に規定してください。

 さらに、時間変更の場合を考慮して、「業務上の必要がある場合、又はやむを得ない場合は始業、終業の時刻を繰上げもしくは繰下げることがある。」といった記載を加えると良いでしょう。

 2番目の「賃金」に関する規定も重要です。賃金の決定要素(学歴、職歴、年齢、等級等)や賃金体系、賃金の決定、計算、ならびに支払い方法、又昇給に関する記載が必要です。

 3番目の退職に関する事項では、定年や再雇用制度、退職の手続きなどを定める必要があります。また、かっこ書きには「解雇の事由を含む」とあります。これは平成16年1月の労基法改正で追加された項目です。

 通常、解雇には懲戒解雇や普通解雇といった区分がありますが、どのような場合にそのような解雇になるのかを明記する必要があります。従業員側に問題があって解雇となるケースを多数記載しますが、例えば会社の経営上の必要性による場合(整理解雇等)なども、事由として記載しておく必要があるでしょう。

Q

相対的必要記載事項にはどんな事項がありますか?

A

例えば、退職金に関する事項は相対的必要記載事項です。退職金制度は会社が必ず用意する必要があるわけではありませんが、退職金制度を作る場合には、適用される従業員の範囲や支給額などを規定しておかなければなりません。
 表彰や制裁の種類(戒告、降格、減給、及び懲戒処分など)や、「出張旅費規程」、「人事考課規程」なども相対的必要記載事項になりますね。

(相対的必要記載事項)
1.退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
2.臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額に関する事項
3.労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
4.安全及び衛生に関する事項
5.職業訓練に関する事項
6.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
7.表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
8.以上のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

Q

就業規則には付属する規程があると思うのですが、就業規則の構成は通常どのようになっているのですか?

A

実は労基法にも就業規則の厳格な定義といったものは必ずしも存在しません。

 結局、就業規則は名称に関わらず、会社が定める職場規律や労働条件に関する規則類全体を指すといっていいでしょう。
 ですから、「賃金規程」や「退職金規程」は当然就業規則の一部になりますし、「育児休業規程」、「介護休業規程」、「旅費規程」、「慶弔見舞金規程」「人事考課規程」なども就業規則に含まれると考えていただいて結構です。

 また、就業規則は正社員用とパートタイマー用など職種や雇用形態の違いによって一冊で記載するのが困難な場合もあります。
 そのような場合には、一部の労働者に適用される就業規則(例えばパートタイマー用)を別に作成してもよいのです。
 そしてその場合は、複数の就業規則類を合わせたものが、労基法上の就業規則になると考えて取り扱う必要があります。

Q

私の会社では以前は従業員が10人未満で就業規則もありませんでした。10人未満であれば就業規則を作成する必要はないのですね?

A

 確かに常時10人未満の労働者を使用する使用者には就業規則の作成・届出義務はないことになります。

 この人数は事業場単位で考えるので、例えば会社全体では15人の社員がいても、本社が7人、別の地区にある工場が8人という場合には就業規則の作成・届出義務はないことになります。

 しかし、前述したとおり、職場規律や労働条件を明確にしておくことは、従業員との間の誤解やトラブルを防ぐためにも重要ですので、小規模の会社の場合であっても作成し、従業員に周知させるのは賢い会社のやり方ということが言えます。

Q

就業規則を作成したら労働者代表の意見を聞いて届け出が必要になりますね。労働者代表はどうやって決めればよいのでしょうか?

A

就業規則の原案を作るのはあくまで会社(使用者)ですが、提出する前には労働者代表等から意見を聴取しなければなりません。

 労働者代表等とは、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者(労基法90条1項)」のことですが、就業規則は事業場単位に作成するので、ここでいう過半数も事業場単位でみることになります。
 労働者代表の決め方ですが、従業員代表者と労使協定をする場合も同様ですが、過半数代表者は、「管理監督者ではないこと」とされています。

 したがって、一般的には部長や工場長を従業員代表者にすることはできません。また、選出する際も社長や役員が指名するのは避けてください。
 特に社長の言いなりになる社員で、他の従業員からは信任されているわけではないような場合は問題です。正しくは、従業員間の民主的な手続きによって選出されることが必要とされているので、投票・挙手等で選出することになります。

 選出された労働者代表の「意見書」を付けて、作成(変更)した就業規則をその事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出ることになります。なお、変更の場合には、就業規則全文ではなく、変更部分と新旧対照表などを添付して届け出れば良いでしょう。
 もちろん、届け出と同時に、就業規則を作業場の見易い場所に掲示等して従業員への周知を徹底してください。

 次回からは、就業規則の中味に入っていきます。就業規則の「前文」「総則」等の規定について解説します。

今回のポイント

  • 就業規則には絶対的必要記載事項(必ず記載が必要)と相対的必要記載事項(定める場合には記載が必要)、さらには任意的記載事項がある
  • 就業規則は名称を問わず、会社が定める職場規律や労働条件に関する規則類全体を指す
  • 就業規則を所轄労働基準監督署長に届け出る際には、過半数労働組合又は労働者代表の意見書を添付する
  • 労働者の過半数を代表する者は管理監督者以外で民主的手続きによって選出する 

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