子ども・子育て支援金制度とは

第103回ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
Q
「子ども・子育て支援金制度」が4月から始まるとのことです。私は中小企業の総務担当者ですが、制度の概要について分かりやすく説明してください。
A
2024年度以降、日本の少子化対策は大きな転換点を迎えています。2024年の出生数が統計開始以来初めて70万人を割るほど減少し、合計特殊出生率も1.15という過去最低水準に落ち込んだことが、その背景にあります。政府としても「少子化は国家的緊急課題」であり「制度設計を根本から見直す必要がある」との認識が強まり、政策の再構築が進められています。
その中核となるのが、この4月から順次スタートする「子ども・子育て支援金制度」です。政府はこれを「異次元の少子化対策」の柱と位置づけ、子育て世帯への支援を量・質の両面で拡充する方針を打ち出しました。
本稿では、本制度の背景と内容、そして企業や働く人への影響などについて整理します。
支援金制度創設の背景と制度の概要
少子化の問題は労働力人口の減少や社会保障制度の持続可能性の低下、地域社会の衰退など、社会全体に深刻な影響を及ぼします。
これまでにも、児童手当や保育所整備などの施策は講じられてきましたが、「子育てにはお金がかかる」「仕事と育児の両立が難しい」といった不安が解消されたとは言い難いのが実情です。こうした状況を踏まえ、政府は「子ども・子育て支援金制度」により全世代から医療保険料と併せて支援金を徴収し、子育て世帯に対する支援事業の安定的な財源とする、新たな少子化・人口減少対策を講じます
制度を安定的に運営するため、「子ども・子育て支援金」と呼ばれる仕組みを導入し、社会保険料とあわせて段階的に財源を確保していく予定です(※負担の本格化は数年かけて行われる予定です)。
本制度は財源を集める仕組み(支援金の徴収)と、その財源を用いた支援策の拡充の両方から構成されています。以下、その内容を見ていきます。
働く人・企業への影響(負担の仕組み)
「子ども・子育て支援金制度」の財源は医療保険料に上乗せして徴収されます。負担対象は、健康保険や国民健康保険など、全国の医療保険加入者で、働く世代だけでなく年金生活者など全世代が含まれます。
会社員の場合、支援金は加入する健康保険の健康保険料等に上乗せされ、給与からの天引きで徴収されます。天引きは、2026年4月保険料分(翌月控除の場合5月給与)から開始されます。
毎月の支援金額=標準報酬月額(または標準賞与額)×支援金率
支援金に対する毎月の負担額は上式で計算され企業と従業員で折半となります。被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)の2026年度の支援金率は0.23%(労使折半)とされ、2028年度にかけて0.4%程度まで段階的に引上げられる見込みです。令和8年度の場合、個人負担は年収400万円で月額384円、年収600万円で月額575円と試算されます。
支援金の総額は2026年度約6,000億円でスタートし、2028年度で約1兆円規模(上限)とされており、2029年度以降はこれ以上増加しないとされています。こども家庭庁の試算によると、加入する保険の種類や給与水準により差があるものの、一人当たり負担額は全医療保険制度平均で、令和8年度250円、令和9年度350円、令和10年度450円とされています。
会社側の実務対応としては、健康保険料率の改定に合わせて、給与計算システムや社会保険料控除の取り扱いを更新する必要があります。支援金は社会保険料として扱われるため、従業員への説明や給与明細上の表記変更への対応が求められます。
支援内容(集めた財源の使い道)
国は支援金を財源として、「こども未来戦略・加速化プラン」の取り組みを実施します。主な内容は次のとおりです。
1.児童手当の拡充(2024年10月から)
所得制限の撤廃、高校生年代までの延長、第3子以降は月3万円に増額
2.妊婦のための支援給付(2025年4月から制度化)
妊娠・出産時に計10万円の経済支援(出産・子育て応援交付金)
3. 出生後休業支援給付(2025年4月から)
子の出生後の一定期間に男女ともに育休を取得した場合、育児休業給付とあわせて最大28日間、手取り10割相当となる給付を創設
4.育児時短就業給付(2025年4月から)
2歳未満の子を養育するため時短勤務を行う場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給
5. こども誰でも通園制度(2026年4月から給付化)
月一定時間までの枠内で、時間単位等で柔軟に通園が可能な仕組みの創設(乳児などのための支援給付)
6. 国民年金保険料免除措置(2026年10月から)
自営業やフリーランス等の国民年金第1号被保険者について、その子が1歳になるまでの期間の国民年金保険料を免除
以上のように、本制度は広く社会全体が負担を分かち合いながら、子ども・子育て世帯への経済的支援やサービスの拡充を図ることを目的としています。
制度をどう受け止めるか
すでに育児休業の取得促進や短時間勤務制度の整備は企業に求められていますが、今後は「制度として整備する」だけでなく、実際に利用しやすい職場運営が一層重要になります。人材確保の観点からも、子育て支援に前向きな企業かどうかが選ばれる時代になりつつあります。
4月から始まるこの制度は、まだ全体像が見えにくい部分もありますが、制度の趣旨を理解したうえで、自社の人事・労務管理を見直す契機とすることが重要といえるでしょう。
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