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「2023年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する」(2023年11月景況トレンド)

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「2023年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する」(2023年11月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2023年11月9日 秋季定例研究会ブックレット「年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(36)

国内景気の現状と展望

 国内景気は、物価上昇や海外経済の減速による下振れが懸念される中で、緩やかに回復している。

 2022年中は、新型コロナウイルスとの共存が求められるウイズコロナ期にあったため、感染拡大防止と経済社会活動の活性化のバランスを慎重に図ることが求められ、需要回復がある程度抑制された。しかし、23年になると、新型コロナウイルスの感染状況に対する警戒態勢が徐々に緩和され、景気へのマイナス効果も次第に後退した。特に、5月8日に感染症法上の分類が5類となってからは、経済社会活動の正常化の動きが加速し、需要回復の勢いが強まった。

 まず、コロナ禍で支出が抑制されていた宿泊・飲食サービス業、レジャー・旅行などの個人向けサービス業、鉄道・空輸などの旅客輸送業といった対面型サービス業への需要が一気に増加した。また、先送りされた更新投資や情報化投資に加え、アフターコロナ期を見据えての前向きな投資が加わって、企業の設備投資が底堅く推移し、景気全体を底上げした。さらに、半導体などの部品不足による自動車の生産制約が解消に向かい始め、個人消費や輸出を押し上げたほか、インバウンド需要が大きく増加するなどのプラス要因も加わった。この果、実質GDP成長率は23年4~6月期に3四半期連続で前期比プラス成長を達成するとともに、水準も19年7~9月期を上回って過去最高額を更新した。

 もっとも、4~6月期の実質GDP成長率は前期比+1.2%(年率換算+4.8%)と高い伸びとなったとはいえ、輸入の減少による押し上げ効果が大きいなど、見かけほど強い内容ではない。中でも個人消費は前期比▲0.6%と3四半期ぶりに減少した。対面型サービスを中心にサービスへの支出は増加している半面で、非耐久財(食料、エネルギー、日用品など)や、耐久財(白物家電、情報通信機械など)の落ち込み幅が大きく、個人消費全体を大きく押し下げた。これらはいずれも価格上昇圧力が強まっているものであり、価格上昇を受けて購入を控える動きが消費者の間で広がっている可能性がある。

 23年度下期も緩やかな景気回復は続くであろう。家計部門においては、引き続き対面型サービスへの支出が増加するなどコロナ前の生活水準に戻ろうとする力が、また企業部門においては、これまで手控えられていた設備投資の再開やアフターコロナ期に移行するにあたっての前向きな投資の増加が、景気を押し上げる原動力となる。このため、2023年度の実質GDP成長率は前年比+1.6%と3年連続でプラス成長を達成しよう。

 ただし、こうした経済社会活動の正常化を受けた景気回復の動きは、特に家計部門においては、2023年中に出尽くしてしまう可能性があるほか、物価高を受けて家計が将来への不安を感じ、消費を抑制するおそれもある。 

 加えて、世界経済が悪化するリスクも残る。日本以外の主要各国では積極的な金融引き締めが実施され金利が上昇している。世界経済が減速すれば、輸出の落ち込みを通じて、国内景気の下振れにつながることになる。さらに、不動産不況を背景とした中国経済の減速、ウクライナ情勢の泥沼化、世界的なIT関連財の需要減少・在庫調整の長期化、台湾海峡の緊張化など地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの停滞・寸断、中東情勢の悪化など、数多くの不安材料が存在する。

年末賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、年末賞与に影響する企業業績と雇用情勢の状況をみていこう。

 まず企業業績であるが、22年度の経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は前年比+8.8%と順調に増加し、2年連続で過去最高益を更新した。これは、コロナ禍の影響が薄らぐ中で需要が回復してきたという数量面での効果に加え、企業がコスト増加をある程度、販売価格に転嫁できたという価格面での効果によって売上高が堅調に増加したことによるものである。販売価格の引き上げは、最終的には物価上昇を通じて家計の負担増加につながり、通常であれば販売数量・回数を減少させる。しかし22年度においては、その減少が軽微にとどまった。これは、コロナ禍で消費が抑制されて家計貯蓄額が増加し、物価上昇をある程度許容できる状態にあったためと考えられる。

 業績の改善は23年度に入っても続いており、4~6月期の経常利益は前年比+11.6%となった。業種別の内訳をみると、製造業が同+0.4%と3四半期ぶりに増益となった一方で、非製造業では同19.0%と10四半期連続での増益と好調な状態を維持している。

 今後も景気の緩やかな回復が続くことは、7~9月期以降の企業業績にとってプラス要因である。製造業、非製造業とも、しばらくは円安や原材料高、人件費の増加などが業績を圧迫する要因となろう。しかし、製造業では、国内景気の回復が続いていることや、一部に円安のメリットを享受する業種があることもあって、業績は底堅く推移しよう。自動車の半導体不足による生産制約がほぼ解消したことや、海外景気や世界的な半導体需要が次第に持ち直しへ向かうとみられることも、業績にはプラスに働こう。また、非製造業では、経済社会活動の正常化の動きを背景に、対面型サービス業を中心に業績改善の継続が期待される。このため、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、23年度の経常利益は前年比+11.2%と3年連続で過去最高益を更新すると予想している。

 次に雇用情勢であるが、改善が続いており、一部業種では人手不足が深刻化している。完全失業率(季節調整値)は、20年10月に一時3.1%まで悪化したが、コロナ禍のマイナスの影響が薄らぐ中で緩やかな改善に転じ、23年1月に2.4%に低下した。23年3月に2.8%まで上昇したが、これはコロナ禍が終息に向かい始めたことで職探しを再開した人や、より良好な労働条件を求めて離職する人が増えたことによって失業者数が増加したためであり、雇用情勢の悪化を示すものではない。いったん増えた失業者は着実に職に就いており、6月に雇用者数は過去最高値を更新し、完全失業率も2.5%に低下した。7、8月にも失業者が増加し、失業率は再び2.7%に上昇したが、これも同様の理由であり、懸念する状況にはない。

 雇用情勢は、経済社会活動の正常化が進むことに合わせて、今後も改善が続こう。少子高齢化が進み、生産年齢人口が着実に減少するという構造的な要因もあって、多くの業種で十分に労働力を手当できておらず、企業の採用意欲は一段と強まるであろう。また、働き方改革関連法によって24年4月からは年間の時間外労働時間の上限が自動車運転業務では960時間に、建設業では他の業種と同様、最大おでも720時間に制限されるという、いわゆる2024年問題の影響により人手不足が一段と深刻となるリスクがある。

 こうした中で、完全失業率も再び低下基調をたどると予想され、22年度平均の2.6%に対し、23年度平均は2.5%に改善し、23年度末時点では再び2%台前半まで低下すると予想される。

 

2023年の年末賞与の見通し

 以上みてきたように、景気が緩やかに持ち直し、企業業績が好調に推移していることに加え、多くの業種で人手不足感が強まっていることや、最低賃金が引き上げられていることから賃金は上昇している。

 厚生労働省「毎月勤労統計」における現金給与総額の伸びは、22年度は前年比+1.9%と2年連続で増加した。ただし、パートタイム労働者の割合の増加によって全体が押し下げらており、一般労働者で同+2.3%、パートタイム労働者で同+2.8%と、実態はもう少し高い。

 23年度に入っても賃金の増加は続いており、4~8月期は前年比+1.7%となった。このうち所定内給与は同+1.3%であり、春闘の賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことから判断すると伸び率は小幅にとどまっているが、完全に反映されるまでに時間がかかっていると思われ、今後、伸び率が拡大する可能性がある。

 一方、物価上昇率が高まっているため、22年度の実質値は同▲1.8%と大幅なマイナスとなっており、23年4~8月期も同▲2.2%と低迷が続いている。

 こうした中、経団連が発表した23年夏季賞与・一時金の最終集計結果によると、大手企業の総平均妥結額(全産業、加重平均)は、22年度の前年比+8.77%の89万9,163円に対し、同+0.47%の90万3,397円と微増にとどまった。ただし、電力が同▲11.75%と急減した影響が大きく、非製造業で77万7,293円(同▲6.24%)と落ち込む一方で、製造業では95万2,574円(同+3.50%)と堅調に増加した。電力以外の非製造業では、商業(同+10.3%)、鉄道(同+10.77%)、情報通信(同+7.03%)など堅調に増加する業種が目立つ。

 以上より、23年年末一時金を取り巻く環境は良好な状態にあるものの、22年の年末一時金の伸び率が高かったこともあり、夏と同様、伸びは小幅にとどまる可能性がある。もっとも、23年度に入って企業の利益が上振れしているうえ、物価の伸び率が高い状態が続いていることに配慮した動きが広がることも考えられ、堅調に増加する可能性もある。

 大企業については、「夏冬型」の企業が多いことから、夏並みの増加率にとどまる見込みだが、業績の好調な業種では積み増されることもあるだろう。

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