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「2023年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2023年6月景況トレンド)

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「2023年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する」(2023年6月景況トレンド)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 主席研究員 小林真一郎
(2023年6月9日 夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(35)

日本経済の現状と2023年度上期の見通し

 国内景気は、物価高や海外経済の減速による下振れが懸念される中にあっても緩やかに持ち直している。 

 少し遡って景気の動きを振り返ると、2022年後半は、実質GDP成長率が2四半期連続でマイナスとなるなど、景気に一時的な停滞感が広がった。これは、①海外経済の減速によって輸出が弱含んだこと、②物価高が進んだことで家計のコスト負担が増し、財への支出が抑制されたこと、③半導体等の部品不足の影響で自動車の生産制約の解消が遅れたこと-などのマイナス要因が強まったためである。それでも、新型コロナウイルスの感染による景気へのマイナス効果は徐々に軽微になっていったうえ、全国旅行支援などの景気刺激策が実施されたことで、宿泊・飲食サービス、レジャー、旅客輸送といった対面型サービスの需要が持ち直し、景気の腰折れは回避された。

 そして、2023年1~3月期には、実質GDP成長率は前期比+0.4%(年率換算値+1.6%)と3四半期ぶりにプラス成長となった。コロナの感染拡大の収束に向けた動きを反映して、国内を中心に需要回復の動きが強まったことが背景にあり、実質GDPの水準もコロナショック後の最高額を更新した。国内景気は、新型コロナウイルスの発生から約3年かけて、ようやくアフターコロナ期に向けての第一歩を踏み出すところまで持ち直してきた。

 プラス成長の原動力となったのが個人消費であり、物価高のマイナスの影響を受けつつも、コロナ禍から脱却する過程で対面型サービスへの支出が増加したことに加え、生産制約の解消が進んだことで自動車販売が増加した。また、企業の設備投資意欲は底堅く、設備投資も前期比プラスに転じた。さらに、財輸出が低迷する中にあって、サービス輸出にカウントされるインバウンド需要が順調に増加し、景気押し上げに大きく寄与した。

 こうした前向きな動きは新年度にも引き継がれており、対面型サービスを中心に個人消費の増加が続くうえ、円安効果もあってインバウンド需要がさらに増加すると期待されるなど、コロナ禍の終息に向けた動きが加速することで、2023年度上期の景気は、緩やかな持ち直しが続くであろう。一方、物価高の状態が続くため、家計の節約志向が強まることや、実質賃金の低迷が長期化することによって個人消費の回復が遅れる可能性がある。加えて、海外経済減速や世界的なIT関連財の需要低迷の長期化で輸出が減少する、人手不足を背景に供給制約が発生するといったマイナス材料が加わることで、景気回復テンポが大幅に鈍るリスクがある。

 それでも、コロナの感染状況に景気が左右されないアフターコロナ期に移行することによる需要回復効果は大きい。このため、内需を中心に緩やかな景気回復が続き、景気の悪化は回避される見込みである。

 

 

夏季賞与を取り巻く環境

 以上のような景気の現状と展望を踏まえたうえで、夏季賞与の動向に大きく影響する企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動きを確認しておこう。

 まず企業業績であるが、経常利益(以下、財務省「法人企業統計」ベースで金融業、保険業を除く)は2022年10~12月期に前年比▲2.8%と8四半期ぶりの減益となった。需要の回復により、売上高は前年比+6.1%と順調に増加したが、原材料費の高騰などによって利益率が低下したためである。ただし、業種別でみると、製造業の経常利益が9四半期ぶりの減益となり、マイナス幅も同▲15.7%と大幅だった半面、非製造業では同+5.2%と8四半期連続で増益となり、両者の動きがかい離した。これは、コスト高が製造業により大きく影響しているのに対し、非製造業では新型コロナウイルスの感染の悪影響が徐々に薄らぐ中で、需要の持ち直しが続いているためである。中でもコロナ禍によって最も深刻な影響を受けた対面型サービス業での業績回復が進んでいる。

 2023年1~3月期も全産業では減益が続いたとみられるが、コスト高の継続や輸出低迷の影響を受けた製造業で減益幅が拡大した一方で、非製造業では対面型サービス業を中心に底堅さが維持されたと考えられ、大幅な落ち込みは回避されたものと思われる。このため、2022年度の経常利益は、2021年度の86.7兆円に対し、前年比+5.4%の91.4兆円と増益を確保し、金額も過去最高益を更新したと見込まれる。

 2023年度もコスト高によって収益率は低迷が続く可能性があるが、販売価格への転嫁が進んでいることや、コロナ禍からの需要回復によるプラス効果がさらに高まると予想されることから、業績の悪化には歯止めがかかろう。中でも非製造業については、対面型サービス業を中心にコロナ禍からの回復過程における需要の持ち直しが売上高の増加につながると期待され、コスト負担が高まる中でも、業績の改善傾向は維持されるであろう。

 次に物価であるが、消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、政府の物価高対策により前年比で1.0%ポイント程押し下げられているが、それでも4月に前年比+3.4%と高止まっている。エネルギー価格は政策効果もあって前年比でマイナスとなっているが、生鮮食品を除く食料が同+9.0%と高く、円安効果もあって家庭用耐久財などでも上昇圧力が高い。このため、消費者マインドが悪化し、節約志向が高まることが懸念されている。物価上昇の勢いもいずれ一巡し、徐々に伸び率は落ち着いてくると予想されるものの、6月から家庭向けの電力料金が値上げされる予定であるなど、コスト高の価格転嫁の動きは続くとみられ、しばらく物価上昇率は高い伸びが続くであろう。

 最後に雇用情勢である。完全失業率は、2020年10月に3.1%まで悪化した後は低下に転じ、2023年1月に2.4%まで低下したが、その後は2カ月連続で上昇し、3月には2.8%となった。もっとも、コロナの感染拡大が収束に向かったことで職探しを再開した人や、より良好な労働条件を求めて離職する人が増えたことによる一時的な上昇である。雇用情勢が悪化したわけではなく、むしろ足元で企業の人手不足感は一段と強まっている。

 特に2023年に入ってからは、経済社会活動の正常化が進む中で、労働需給のタイト化が進んでおり、宿泊・飲食サービス業などの一部の業種が人手不足による供給制約の問題に直面している。

  雇用情勢は、景気回復が続く中で今後も改善傾向が維持されよう。完全失業率も再び低下基調に復帰すると予想され、2022年度の2.6%に対し、2023年度は2.5%に低下するであろう。

 

 

2023年夏季賞与の見通し

 以上のように、景気は緩やかに持ち直しており、企業業績の悪化にも歯止めがかかりつつある。また、雇用情勢の改善が続き、物価上昇圧力が高まりつつある中で、企業は賃上げに積極的な姿勢を示しており、今年の春闘での賃上げ率は30年ぶりの高さになったと見込まれている。

 こうした状況下、4月9日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2022年冬のボーナスの一人当たり平均支給額は39万2,975円と2年連続で増加した。伸び率は前年実績である+0.1%を大きく上回る+3.2%であり、コロナ禍の影響が剥落し、本格的な回復が始まる年となった。業種別では、コロナ禍で回復が遅れていた対面型サービス業の伸びが特に大きく、このため製造業(同+2.4%、51万4,074円)よりも非製造業(同+3.5%、 36万9,469円)の増加率が高かった。

 このように、夏のボーナス支給額を取り巻く環境は良好な状態にあり、「毎月勤労統計調査」ベースでの民間企業の2023年夏のボーナスは、一人当たり平均支給額が40万276円と2年連続で増加する見込みで、金額もリーマンショック直前の2008年以来、15年ぶりに40万円を超えるとみられる。伸び率も前年比+2.8%と前年の同+2.4%に続いて堅調な伸びとなろう。業種別では、製造業では53万9,565円(前年比+2.4%)、非製造業では37万3,217円(同+3.1%)と、コロナ禍の終息に向けた動きが続く中で、飲食店や娯楽業といった対面型サービス業を中心に非製造業の伸び率がより高くなるであろう。

 なお、ボーナスが支給されなかった事業所で雇用されている労働者も含んだ全労働者ベースの一人当たり支給額では、前年比+3.7%と、ボーナスが支給される労働者の増加により、支給事業所の一人当たり支給額以上の伸びが見込まれる。

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