1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ
  5. 見方を変えれば、世界が変わる
  6. 「見方を変える」ための組織のあり方ー1ー

プライムCメディア

「見方を変える」ための組織のあり方ー1ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「見方を変える」ための組織のあり方ー1ー

見方を変えれば、世界が変わる(10)

 こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。

 前回は、3つの工夫を妨げる心の「壁」を乗り越えるための基本的な考え方を解説しました。
 そして、制約条件理論の提唱者であるゴールドラット博士が掲げた次の「基本前提」も紹介しました。

【4つの基本前提】

1.ものごとは、そもそもシンプルである
   "Inherent Simplicity"
2.人はもともと善良である
   "People are good"
3.Win-Winは常に可能である
   "Win-Win is always possible"
4.決して、わかったつもりになってはならない
   "Never say I know"

 「4つの基本前提」は、ものごとを考える上で非常に重要であり、4つを組み合わせると次のような世界観が浮かび上がってくると思います(図表1)。

 ここで、「基本前提」の意義を確認するために、1.から4.と反対の前提(「逆前提」と名付けます)に立つとどんな世界観になるか考えてみましょう。

 まず、「逆前提」を次の1'から4'のように書いてみます。

【逆前提】

1 ものごとは複雑で理解などできない
2' 人はもともと自分の利益しか考えない
3' Win-Winの解決策など存在しない
4' 私は何でも完璧にわかっている(私の考えが相手より優っている)

 次に、「逆前提」をつなげると、先ほどとは全く別の光景が見えてきます(図表2)。

 図表1と図表2は文字通り別世界ですね。どちらが望ましいですか?
 もちろん私は前者のような世界に住みたいと思います。皆さんも同じお気持ちではないでしょうか。

 ところが、現実の社会は後者のようになる可能性が十分にあります。
 実際、身近な会社でも対立や非協力的な動きのために時間の浪費や非効率が起きています。
 仕事の重圧や人間関係の悩みによって精神を患う人も少なくなく、すでに図表2の世界が現れているのかもしれませんね。

 なぜ、望ましくない世界が現れるのでしょうか? その原因は、一人の力ではどうにもできない組織のあり方にあると思います。

 前置きが長くなりましたが、今回は、「4つの基本前提」と組織の関係について考えます。

 まず、組織のあり方が個人の内面にどんな変化をもたらすかをイメージするために、メーカーに勤める30歳のAさんを想定してみます。
-----------------------------------------
 技術畑のAさんは、3年前まで開発部で製品開発を担当していました。ゴールドラット博士がもともと物理学者(注)であることから制約条件理論に強い関心を持ち、「4つの基本前提」にも心から共感しました。
(注)エリヤフ・ゴールドラット博士はイスラエルの物理学者です。

■開発担当の頃
 開発部時代のAさんは、「4つの基本前提」を体現するように、いつも人を信頼し、複雑な問題を理解しようと掘り下げて考え続けました。

 仲間と意見が異なるときは自説にこだわらず、謙虚な姿勢でWin-Winの解決策を探ろうとしていました。
 職場の同僚や上司も同じような姿勢でしたので、相互信頼と協力に基づいて仕事が進み、明るい雰囲気の中、新製品や新機能が次々と生まれていました。

■セールスエンジニアの今
 3年前、Aさんに転機が訪れました。開発を担当した新製品を市場展開するために、セールスエンジニアとして営業部に異動になったのです。
 Aさんは、担当製品を世の中に普及させることを夢見ながら、新天地でも「4つの基本前提」に沿って仕事に臨みました。

 ところが、営業部の雰囲気は開発部とは全く違っていました。
 異動当初は、「技術に詳しい人が来てくれて心強い」と歓迎の言葉を受けましたが、日が経つにつれて疎外感や敵対心を感じるようになりました。

 新製品の市場展開は問題・課題の連続です。一つ一つ営業会議で話し合って対処方法を決めるのですが、毎回、次のような状況が繰り返されました。

【周りの営業部員の姿勢】

(a) 複雑な問題を理解しようとしない。問題の掘り下げは「時間の無駄」だと早く打ち切ろうとする。
(b) 意見が異なると自説を繰り返すばかりでAさんの考えに耳を傾けない。あるいは、終始、Aさんのあら探しをする。
(c)Aさんの謙虚な態度を「自信がない証拠だ」と言い、自分の主張が優っていると強弁する。
(d) Aさんとの信頼関係には興味がなく、血眼になって自分に有利な結論を出そうとする。

 このように殺伐とした雰囲気で会議が進むので、営業部はAさんの技術的知見とベテラン営業マンのノウハウを融合した有効策を打ち出すことができません。
 場当たり的な対応に終始した結果、新製品の市場浸透は遅れ、ライバル社に大きく水を開けられてしまいました。

 そればかりか、社内では「セールスエンジニアが期待外れだったからライバルに負けた」、との噂が広まり、Aさんはひどく傷つきました。

 すっかり意気消沈したAさんは自問自答しました。
 「人は、本当に、もともと善良なんだろうか?」「Win-Winは、本当に、常に可能なんだろうか?」・・・と。
 つまり、「4つの基本前提」を疑い始めたのです。

 実は、開発部時代にも同じような疑問はありました。
 ただその頃は、職場の人たちとの関わりを通して「間違いない。信じて良かった」と思える経験ができたので、疑問は消え、信じる思いを益々強くしました。

 また、営業部にきてからも、信念が揺らぎそうになったときはかつての経験を思い出して信じ続けようと頑張ってきました。

 しかし、さすがにもう限界です。
 「4つの基本前提」が疑わしいだけでなく、信じること自体が苦しくなりました。
 Aさんは、「4つの基本前提は理想論だ。残念ながら現実は違う。
 これからは現実に即して生きていくしかない」と思いました。

 こうして「現実を悟った」Aさんの態度は変わりました。
 心の中に冒頭の「逆前提」が芽生え、上記の「周りの営業部員の姿勢」(a)から(d)と同じように、次の姿勢で会議に挑むようになりました。

【「逆前提」に基づくAさんの姿勢】

(a)'複雑な問題を理解しようとしない。問題の掘り下げは「時間の無駄」だと早く打ち切ろうとする。
(b)'意見が異なると自説を繰り返すばかりで相手の考えに耳を傾けない。あるいは、終始、相手のあら探しをする。
(c)'相手が謙虚な姿勢を見せると「自信がない証拠だ」と言い、自分の主張が優っていると強弁する。
(d)'お互いの信頼関係には興味がなく、血眼になって自分に有利な結論を出そうとする。

 周りの人も同じ態度で挑み、相変わらず殺伐とした会議が繰り返されます。
 このような経験を積み重ねるうちにAさんは、「間違いない。
 考え方を変えて良かった」と思うようになり、「逆前提」が確信に変わっていきました。

※念のためのお断りですが、このストーリーは開発部、営業部の一般的な雰囲気を述べるものではなく、個人が組織からどんな影響を受けるかを考えるための架空のケースです。
-----------------------------------------

 人の心が環境によって左右されることを再確認するために、雰囲気が正反対の組織を想像してみました。
 皆さんは、このケースの開発部と営業部とを比べたとき、どちらで働きたいと思いますか?
 私は、前者のような組織で働きたいです。

 また職業人として、「4つの基本前提」に立つAさんと、「逆前提」に立つAさんなら、どちらの姿勢でいたいと思いますか?
 私はもちろん、前者のようにありたいと思います。

 恐らく、多くの方が同じようなお考えではないでしょうか。
 少なくとも、後者のような組織や個人のあり方を自ら好み、積極的に選ぶ人はあまりいないでしょう。

 Aさんも「逆前提」を好んだわけではありません。
 できれば「4つの基本前提」を持ち続けたかったはずです。

 しかし、営業部で「マイナスの体験」をしたために「逆前提」に変えざるを得なくなりました。
 恐らく他の営業部の人たちも同じでしょう。はじめから「逆前提」や殺伐とした組織を望んだわけではなく、知らないうちに「逆前提」に立つようになり、気づいたら殺伐とした組織をつくる一員になっていたのです。

 誰も望んでいないのに、誰もが望まない状況が生まれるのは全く理不尽ですが、組織という「場」の作用でそうなるのだと思います。

 「場」は、その中に存在するものに大きな影響を及ぼします。
 例えば、強力な磁石の力が働いている「場」(科学用語で「磁場」と言います)に腕時計を置くと狂ってしまいますね。
 同じように、協力的でオープンな人でも、歪んだ組織の「場」に居続けると、自己中心的で閉鎖的になる可能性が十分にあるのです。

 では、どうすれば良いのでしょうか。
 解決のカギは「場」の転換です。組織を、一人ひとりの協力的でオープンな姿勢をすなおに伸ばせるような「場」に転換することが必要です。

 次回は、望ましい組織のあり方について探っていきたいと思います。

※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。

プライムコンサルタントの
コンサルティング

コンサルティング会社と聞くと、「敷居が高い」「中小企業の当社には関係ない」といった考えをお持ちではありませんか?

当社のクライアントの大半は、従業員数が30~300名ほどの中堅・中小のお客様です。
これらのお客様からは「中小企業の実情を理解したうえで的確なアドバイスをくれる」「話をしっかり受け止めようとしてくれる」「いい意味でコンサル会社っぽくなく、何でも相談できる」といった声を多くいただきます。
担当コンサルタントの「親しみやすさ」も、当社の特長の一つです。

会社の規模に関わらず、一社一社のお客様と親身に対話をすることが当社の基本方針。
人事のご相談はもちろん、それに関連する専門知識を持ったコンサルタントがお客様の悩みをしっかり受け止め、人事にまつわるさまざまな課題を解決に導いてまいります。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ