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賃金の引き上げと「わが社の選択」(ブックレット42号巻頭言)

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賃金の引き上げと「わが社の選択」(ブックレット42号巻頭言)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2015年2月17日(東京)18日(大阪)開催・春季定例研究会ブックレット「はじめに」より)

人材マネジメントを展望する(10)

 12月の総選挙で勝利を収めた安倍政権の後押しで、昨年に続き大手企業を中心に賃金引上げの機運が高まっている。

 いわゆるアベノミクスは①金融の異次元緩和による円安誘導で輸出メーカーの採算を改善し、②株式・不動産価格の上昇や雇用・賃金・投資の増加を通して内需を拡大、③やがて家計や中小企業にも利益を浸透させるというマネタリズムの経済政策である。

 これに経済界が反応し、昨年は十数年ぶりにベアが復活、今年も昨年以上に賃金引き上げに前向きな姿勢を示している。

 しかし消費税引き上げによる物価上昇分を割り引いた実質賃金は減り続けており、消費の落ち込みが予想外に長引いた。
  上の②が働く前に、円安による原材料費の上昇や、人手不足に伴う人件費の上昇で採算が悪化している企業も少なくない。

 政権が昨年以上に賃金引き上げに躍起になるのは、まず上の②が実現しないと経済の好循環が途切れ、景気の低迷と一層の財政悪化を招くという危機感からである。

 マクロ経済的にみると、国内で実質賃金が増えるかどうかは、労働生産性、労働分配率、交易条件という三つの要素で決まるといわれる。

 第一の労働生産性は、簡単にいえば働き手一人ひとりがどれだけの儲け・付加価値(国内総生産=GDP)を生み出せるかで決まる。
技術進歩や経営効率の改善、労働者の能力向上を図り、高付加価値の事業構造へとシフトしていくことが課題だ。

 第二の労働分配率は、その儲けがどれだけ労働者の賃金に回るのかという比率である。
バブル崩壊後、企業の雇用削減や賃金抑制、非正規雇用の増大によって労働分配率が抑えられ、そこに少子高齢化が重なって社会保険料が増加し可処分所得の低下が続いた。

 勝ち組企業の内部留保は大きく膨らんだものの、雇用・消費の減退が企業収益を圧迫し、経済格差が広がるデフレの長い悪循環に陥った。

 アベノミクスは、デフレからの脱却を掲げて労働分配率の向上に取り組むという社会政策的な側面がある。

 しかし「理屈はわかるが、無い袖は振れない」という企業も少なくない。
デフレに適応して低賃金のパート労働力に依存してきた企業や、限界的な利益でかろうじて存続してきた企業には、最低賃金の引き上げや社会保険料の負担増、人件費の上昇による採用難などは、経営の死活問題である。

 第三の交易条件をみると、日本の貿易収支は1994年をピークに低落傾向となり、2010年以降は赤字が続いている。

 新興国経済との競争が激化し、「海外から高く原材料を買い、海外へ安く製品を売る」(齊藤誠一橋大学教授)状態が続いたうえに、安価な海外製品の流入が国内企業を圧迫し、二重に実質賃金の低下をもたらした。

 円安は、輸出企業にはもちろんプラスに働くが、エネルギー・原材料価格の上昇は大半の国内企業の採算を悪化させ、最終的には物価上昇を招き、消費の減退要因となる。  

 このような関係性の意識が従業員の意欲や思考・行動に大きく影響することは論をまたない。
 今は原油をはじめとする資源価格が値下がりしているので目立たないが、世界経済が回復し資源価格が上昇に転ずれば、日本経済にはたちまち強い逆風となる。
 アベノミクスにはこのような「運任せ」の面があることは否定できない。

 ますます少なくなる若者やキャリア人材の争奪戦が激しさを増す中で、余裕のある企業は賃金を引き上げてくるだろう。
 しかし長期的な固定費の上昇につながるベアに横並びで応じること以外にも、人的投資の選択肢は色々あるはずだ。

 いま大事なことは、個々の企業が労働生産性を高める努力を重ね、結果として賃金を上げていく第一の経路であろう。
 それには、社員一人ひとりが個性を発揮し、やりがいを感じイキイキと働ける雇用・報酬・組織・人事のあり方を工夫して、会社の「稼ぐ力」を高めていくことが先決だ。

 経営者は事業への思いを社員に伝え、社員の声に耳を傾け、会社の存続・成長の道筋を社員と共有してもらいたい。

 

「プライムブックレット巻頭言」は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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