1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ
  5. 見方を変えれば、世界が変わる
  6. 『障害』転じて福となすー3ー

プライムCメディア

『障害』転じて福となすー3ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『障害』転じて福となすー3ー

見方を変えれば、世界が変わる(8)

 こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。

 前々回から前回にかけ、架空の製パン会社「プライムデニッシュ」の営業1課の若手のSさんのケースを取り上げ、「私にはとても無理です!」と言いたくなる課題に対処するプロセスを詳しく見てきました。
 今回は、その手順と背景にある大切な考え方を整理したいと思います。

 SさんはY社から未経験のPB品開発の引き合いを受けて途方に暮れていましたが、ペアを組むTさんに導かれながら、この案件の実行計画を作り上げました。
 もちろん、これだけで「Y社のPB商品案件の受注」という大目標を達成したわけではありませんが、大きな仕事に取り組む上での重要な第一歩を踏み出したことは間違いありません。

 その手順を箇条書きにすると次のようになります。
---------------------------

  • 手順1:大目標を明確にする。
  • 手順2:大目標を達成する上での「障害」(「わからない」「難しい」「できない」と感じること)をリストアップする。
  • 手順3:「障害」をクリアした状態を言葉にして「中間目標」を作る。
    (☆手順1~3は一つの表にする。)
  • 手順4:「中間目標」を時間軸と必要の関係でつないで図解し、「中間目標マップ」を作る。
  • 手順5:「中間目標」に期限を入れて「実行計画書」を作る。

---------------------------
 では各手順のポイントを解説していきましょう。

  • 手順1:大目標を明確にする。

 Sさんのケースでは「Y社のPB商品案件の受注」です。何を達成したいかが不明確だと、手順2以降がぶれますので、忘れずに押さえてください。

  • 手順2:大目標を達成する上での「障害」(「わからない」「難しい」「できない」と感じること)をリストアップする。

 前回までは、「『わからない』『難しい』『できない』と感じること」と言ってきましたが、簡潔に「障害」と呼ぶことにします。
 ゴールまでに立ちはだかる「ハードル」のことです。この「障害」を感じるままに書き出します。
 ここで大事なことは、「『障害』を感じるような弱気ではダメだ」と思わないこと。強がってみても難しさは消えませんからね。

  • 手順3:「障害」をクリアした状態を言葉にして「中間目標」をつくる。

 「障害」は乗り越えねばなりません。それが無理なら回避します。
 いずれにしても「障害」をクリアして先に行かないと大目標には達しません。
 「障害」をクリアした状態は途中で達成すべき目標なので「中間目標」と呼びます。着実に進むには中間目標をはっきりイメージすることが大切です。

 中間目標は楽観的に設定してください。実現可能性を心配し過ぎると、委縮して「クリアしていない状態」を思い浮かべるかもしれません。
 具体的な実現方法は、その中間目標に取り組む時に考え抜けばいいのです。

 「Y社のニーズを詳しくわかっている」のように、中間目標を状態の言葉にしたのは気持ちを軽くするコツです。
 「Y社のニーズを詳しく知る」と書くと、「でもどうやって? 簡単じゃないよなぁ・・・」とプレッシャーを感じやすくなってしまいます。

☆手順1~3を一つの表にする。
 手順1~3は一つの表にすると考えやすくなります。次のような枠を用意して順番に書いてみてください。

  • 手順4:「中間目標」を「時間軸」と「必要の関係」でつないで図解し、「中間目標マップ」をつくる。

闇雲な取り組みは無理や無駄を生む原因になります。
 必要なものが揃っていなくて手待ちになったり、あとから大事なことが発覚して手戻りになったりしないためには順番がとても重要です。

 急な案件は気持ちが焦りますが、そういうときほど「急がば廻れ」、段取りが大切です。
 中間目標同士の依存関係(予め必要なものはないか)や時期的な前後関係をていねいに考え、図解して「見える化」しましょう。こうして作った図を「中間目標マップ」と呼びます。

  • 手順5:「中間目標」に期限を入れて「実行計画書」をつくる。

 中間目標に日付を入れれば、中間目標マップが「実行計画書」になります。各目標の担当者が異なるときは担当者も書き込みましょう。

 こうしておけば途中で迷うことはありませんし、状況に応じた変更も考えやすくなります。
 複数の人と一緒に取り組む際には特に威力を発揮し、計画や進捗を共有し、優先課題を話し合うベースになります。

 いかがですか? 全体の流れを見通せたでしょうか?
 では次に、この背景にある大切な考え方を整理しておきましょう。

1.「障害」を感じるセンスが中間目標のヒントを与えてくれる

 大きさの違いこそあれ、何かを達成するには「障害」が必ずあります。
 ところで、「障害」を感じないことはいいことなのでしょうか? もちろん、自分にとって簡単なことを「障害」と感じないのは自然なことでしょう。
 問題は、簡単でないときに「障害」を感じる気持ち(センス・感覚)をどう考えるかです。

 世間には「どんなときでも『難しい』『できない』『わからない』と言ってはならない!」という「教え」がありますが、ちょっと注意が必要です。
 この「教え」に忠実に従って、「難しい」「できない」などの感覚を無視したら、「全力で取り組むべき課題」を見つけられないからです。

 「全力で取り組むべき課題」とは、今の自分に難しいものですから、「自分にとっての難易度」を見極めなければなりません。
 「難しい」などの感覚は、難易度を測る「自分だけのセンサー」です。
 この「センサー」をうまく使うと取り組み課題(=中間目標)を見出だすことができるのです。

 大目標を確実に達成するうえで「力の入れどころ」は大変重要ですよね。
 「障害」を感じるセンスは「力の入れどころ」を見つけるヒントをくれるのです。
 「障害」を恐れて何も考えないのはいけませんが、逆に「障害」から目を背けて簡単なことばかり考えるのでもいけないと思います。

 大事なことは、まず率直に「障害」を感じ取り、その上で乗り越える方法を考えることです。先ほどの「教え」の意図は「どうやったらできるかを考えよう」ということなので、その点は同感です。
 ただ、「難しいなどと言ってはならない!」という言い方には、人間の素直な心を抑え込むような威圧感と大事な視点を失うリスクを感じてしまいます。

2.物事のつながりをひも解けば道は開ける

 洗い出した課題の多さに途方に暮れてしまうことがありますね。
 「何から手を付けていいかわからない」のは、課題と課題のつながりがわからないからです。そんなとき、闇雲に手を付けてもうまくいきません。

 その瞬間は「やった感」がありますが、意外と何も進んでいないものです。かと言って、じっと悩んでいてもだめです。

 ここで大切なことは取り組む順番をしっかり考えることです。
 この課題とその課題はどういう関係があるのか、どちらを先にした方が取り組みやすいかなど、縦横無尽に想像をめぐらしてみるのです。

 想像上のことですからあれこれ考えて構いません。
 パズルを解くように楽しめるといいですね。そうやって物事のつながりをひも解いていくうちに現実的な順番が見えてきて、自信をもってスタートできるようになります。

 ただし、寸分の狂いも許されない緻密なプロジェクトなどは別として、初めから完璧なものを目指すとかえって非効率なこともありますので注意してください。
 大体の見通しがきけばスタートし、途中で振り返って調整するという余裕をもって臨むことも大切です。

3.「今なすべきこと」に集中し続ければ、大きなことを成し遂げられる

 日本からニューヨークに行くときに、いきなりジョン・F・ケネディ空港から宿泊先のホテルへの道中に注力することはしませんよね。
 まずは、自宅を出て成田空港か関西空港に到着することに集中するはずです。

 当たり前のことを言いましたが、仕事をしているときに、ずっと先のことに気をとられて、今やっていることに集中できないことはありませんか?
 もちろん目の前のことしか考えずに「後は野となれ山となれ」ではいけませんが、課題が大きければ大きいほど、限られたエネルギーを「今なすべきこと」に集中することが重要になってきます。

 実は、中間目標マップ(実行計画)は、常に「今なすべきこと」に安心して集中し続けられるように、全体の見通しを持たせてくれるものなのです。

 3回にわたって「私にはとても無理!」と言いたくなるような仕事への対処法をご紹介しました。
 この手法が画期的なのは、ややもすると「弱音」と切り捨てそうになる「障害を感じる感覚」をテコにして、中間目標を見つけ出すという点です。まさに、「『障害』転じて福となす」ですね。

 中間目標をプラン化するときも、「時間的な後先」や「これのために何が必要か?」といった身近な感覚を手掛かりにつないでいきます。

 難しい知識は何もいらず、自分の感覚にていねいに向き合いながら実行計画を浮かび上がらせるのです。
 このようにすれば、素直な感情を大切にしながら効果的に変化を生むことができると思いませんか? ぜひ、皆さんも試してみてください。

※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。

プライムコンサルタントの
コンサルティング

コンサルティング会社と聞くと、「敷居が高い」「中小企業の当社には関係ない」といった考えをお持ちではありませんか?

当社のクライアントの大半は、従業員数が30~300名ほどの中堅・中小のお客様です。
これらのお客様からは「中小企業の実情を理解したうえで的確なアドバイスをくれる」「話をしっかり受け止めようとしてくれる」「いい意味でコンサル会社っぽくなく、何でも相談できる」といった声を多くいただきます。
担当コンサルタントの「親しみやすさ」も、当社の特長の一つです。

会社の規模に関わらず、一社一社のお客様と親身に対話をすることが当社の基本方針。
人事のご相談はもちろん、それに関連する専門知識を持ったコンサルタントがお客様の悩みをしっかり受け止め、人事にまつわるさまざまな課題を解決に導いてまいります。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ