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Unit 28: 就業規則の効力2-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)

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Unit 28: 就業規則の効力2-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)
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みなさんこんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。

前回は、就業規則の適用要件の一つとなる「合理的な労働条件」について学習しました。今回は、もう一つの要件となる「周知」について学習していきます。

就業規則の効力2

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今回も前回に引き続き、就業規則の効力について学習します。前回の復習ですが、就業規則の適用要件が何だったか覚えていますか?

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はい。就業規則に明記された①合理的な労働条件を②労働者に周知させることです。

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そうですね。①合理的な労働条件については、80時間分の固定残業代の有効性が争われた裁判例を交えながら解説しました。本日は、②労働者への周知について解説していきます。ここで質問ですが、周知させるにあたって、使用者には具体的にどのような行動が求められると思いますか?

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周りに知らせると書いて周知ですから、やはり労働者一人ひとりに説明していく必要があるのではないでしょうか?

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周知と聞くとそうイメージしますよね。しかし、ここで言う周知は、そこまでの行動を求めてはいないのです。

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それでは、使用者は具体的に何をする必要があるのですか?

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労働者が知ろうと思えば知りうる状態にしておくことが必要です。そして、このような実質的周知が行われていれば、労働者が現実に就業規則の内容を知ったか否かにかかわらず、就業規則の拘束力が及ぶことになります。

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えっ、その程度でよいのですか。なんだか想像していたよりもずいぶん簡単に感じます。

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はい。実際、①事業所の特定場所に備え置く、②イントラネットに電子ファイルを保存する等の方法によって周知している企業が多いです。そうして周知された就業規則を労働者一人ひとりが閲覧するかどうかは、ここで言う周知とは関係がないのです。

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そうすると、就業規則が周知されている限り、一回もその内容を見たことがない労働者に対しても、就業規則に記載された労働条件が適用されるというのですか?

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その通りです。もちろん、そこに記載された労働条件が合理的である、ということが前提ですが。

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中身を見たこともないルールブックによって自分の労働条件が決められてしまう可能性があるとは、少し恐ろしいですね。

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そうかもしれないですね。ですがそうならないためにも、企業の人事担当者は、就業規則の内容を積極的に確認するよう労働者に対して促したほうがよいでしょう。

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しかし、就業規則を見たとしても、すべての労働者がその内容について完全に理解できるとは思えません。人事労務に関して専門知識を持たない人がほとんどでしょうし、やはり使用者からの説明が必要になる場合もあると思うのですが…。

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鋭いご指摘ですね。実は、就業規則の内容が複雑多岐にわたり、労働者が規程を一見しただけでは理解できないようなケースでは、使用者は労働者の理解を深めるよう一定の配慮をすることが必要だと解されています。

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そうなのですか。それを聞いて少し安心しました。特に退職金に関しては、支給額を算出する複雑な計算式や例外規定、経過措置などがあり、普通の従業員が見ただけで理解するのは困難だと思います。

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まさにそのとおりです。実際に使用者は、労働者の求めに応じて適切な説明・情報提供を行い、労働者が規則内容を認識できる状況を提供する必要があると解されています。

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なるほど。企業内で人事制度が新設・変更された場合などに「新人事制度説明会」が行われるのも、こうした説明・情報提供にあたるのでしょうね。

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はい。これは本日のテーマとは異なるのですが、「就業規則の変更」に関して争われた過去の裁判例が参考になりますので、次の判決内容を見てみましょう。もし難しいと感じた場合は、最後の下線部に注目してくださいね。

退職金規程の変更につき、使用者が全体朝礼で概略的な説明をしただけで、説明文書の配布・回覧や説明会の開催など具体的に説明する努力を何ら払っておらず、また、休憩室に退職金規程を掲示していたとしても。退職金額の具体的決定・計算方法に関する規程を添付していない場合には、従業員に対する就業規則の実質的な周知がされたものとはいえず、拘束力は認められない。(中部カラー事件・東京高裁)※要約
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最後のアンダーラインに注目したのですが、つまりは、退職金制度の変更に伴って変更されたこの就業規則は、周知されたとは認められず適用されなかったのですね?

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そうです。大切なポイントは以下の2点です。①就業規則の内容が複雑で労働者が見ただけでは理解できない場合には、単に労働者が閲覧できる状況を作っただけでは足りない、②使用者は、説明会の開催などにより具体的に説明する努力を払う必要がある、ということです。こうしたポイントを押さえて就業規則の実質的周知がなされないと、周知要件を欠くことになり就業規則を適用することができません。

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せっかく時間をかけて作成・変更した就業規則であっても、それが実質的に周知されていないと拘束力がないのですね。やはり、使用者が積極的に就業規則の内容を労働者に説明することで、お互いに労働条件を確認し合うことが大切だと感じました。また、最近は働き方改革へ対応するために賃金・賞与・退職金規程等(就業規則)を見直すケースが増えていると聞きます。そのような場合、外部の人事コンサルティング会社の力を借りるなどがよさそうですね。教授、本日はありがとうございました。

働き方改革に伴う賃金・賞与・退職金制度の見直し、就業規則変更や新人事制度説明会に関しては、賃金・人事コンサルティングの専門家集団 プライムコンサルタントにご相談ください!

今回の連載内容は、2017年6月12日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働契約3」(土田道夫 同志社大学法学部・法学研究科教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。
 

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