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Unit 11: 労使関係・労使コミュニケーション-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(人事管理・労働経済編)

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Unit 11: 労使関係・労使コミュニケーション-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(人事管理・労働経済編)
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みなさんこんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。

前回は、「キャリア形成と失業・転職」について学習しました。
今回は、「労使関係・労使コミュニケーション」と題し、労使間の集団的関係と個別的関係、労働組合の組織形態と推定組織率などについて学習します。
また、いまの時代にふさわしい労使間のコミュニケーションのあり方にも触れます。具体的なデータを用いながら、労使関係の変遷を分かりやすく説明しますので、ぜひご確認ください。

労使関係

労使関係とは

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今回は、労使関係・労使コミュニケーションについて学習します。突然ですが、「労使関係」という言葉が何を意味するか知っていますか?

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労働者と使用者との様々な関係などのことを言うのだと思います。例えば、労働組合と使用者との関係などです。

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そうですね。労使関係には、大きく2つの関係があります。それは、①労働組合と使用者との関係(集団的労使関係)、②労働者個人と使用者との関係(個別的労使関係)です。

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集団的労使関係について少し教えてください。

集団的労使関係と労働組合の動向

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はい。集団的労使関係は、労働組合と使用者との関係ですが、労働組合にはその組織形態によって次の3つの種類があります。

  • 職業別労働組合(Craft Union)
  • 産業別労働組合(Industrial Union)
  • 企業別労働組合(Enterprise Union)
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職業別労働組合は、特定の職業に従事する労働者によって組織された組合です。中世西欧の「ギルド」が起源であると言われ、上記の3つでは最も歴史が古いです。クラフトユニオンとも呼ばれます。

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次の産業別労働組合は、職種に関わらず、同じ産業の労働者によって組織された組合ですね。

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そして、企業別労働組合は、同じ企業の労働者(主に正社員)によって組織された組合です。世界的には産業別労働組合がスタンダードですが、日本ではこの企業別労働組合が主流です。

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最近では、パートタイム労働者や派遣労働者によって組織された労働組合も見られますね。ところで、最近の日本の労働組合の動向について教えてください。

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はい。労働組合の動向を調べる一つの手法として、推定組織率※を用います。次の図表1のとおり、日本の労働組合の推定組織率は、1949年に過去最高の55.8%を記録し、直近の2017年では過去最低の17.1%となっています。近年、雇用全体での推定組織率は減少し続けていますが、パートタイム労働者に限定すると、図表2のように推定組織率は上昇しています。

※推定組織率(%)=労働組合員数÷雇用者数×100

図表1 推定組織率の推移
推定組織率の推移

資料:厚生労働省「2017年労働組合基礎調査」より作成

図表2 パートタイム労働者の労働組合員数および推定組織率の推移(単位労働組合)
パートタイム労働者の労働組合員数および推定組織率の推移(単位労働組合)

※2011年の推定組織率については、労働力調査(2011年6月分)が東日本大震災の影響により調査実施が困難となった岩手県、宮城県、福島県を除いて雇用者数を公表しており、その後の補完推計(2012年4月公表)においても「短時間雇用者数」の推計値を公表していないため表章していない。

資料:厚生労働省「労働組合基礎調査」より作成

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なぜ、パートタイム労働者の推定組織率は上昇しているのでしょうか?

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パートタイム労働者の雇用が拡大し、労働組合に参加するパートタイム労働者が増えていることが要因として挙げられます。

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なるほど。逆に、雇用全体での推定組織率が減少しているのはなぜなのでしょうか?

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様々なことが考えられますが、近年の労使関係の変化が影響していると思います。つまり、「長期的かつ集団的な労使関係」から「短期的かつ個別的な労使関係」にシフトしているという変化です。かつて、日本の高度経済成長を支えた日本的雇用(終身雇用、年功序列、企業別組合等)には、長期的視点に立って労使で協力し、時として痛みを分かち合うメカニズムが働いていました。しかし、バブル崩壊以後、この様子が大きく変化していきました。

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一体どのようなことが起きたのでしょうか?

集団的労使関係から個別的労使関係への変化

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ビジネスの国際化が進展していく中で、従来の協力的労使関係を維持するのが難しくなっていったのです。外国法人が国内株式市場で力を強め、日本企業に市場原理に沿った行動を取るべきだと促すようになりました。これにより企業は、短期的な利益を重視するようになり、労使関係も、それとともに長期の関係を前提とするという意識が薄れていきました。

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その影響として、人員削減やコストカットが行われたのでしょうか?

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はい。例えば、早期離職制度や人件費の抑制等が行われました。さらに、ビジネスの環境変化が激しく先行きが不透明な時代に突入したことで、企業は労働者に長期雇用を約束することが困難になりました。このような経済・社会環境の変化を受け、労使関係は長期的なものから短期的なものへとシフトしていったのです。

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よくわかりました。ところで、労使関係が集団的なものから個別的なものへとシフトしていることについても教えてください。

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先ほど述べたように、企業が短期的に合理性を追求すれば、労働者もそれに応じて短期的な観点からキャリア形成を考えるようになります。例えば、若年期の教育訓練によって職業能力を身に付けた社員が、すぐさま賃金が高い他の企業へ転職するというような行動が見られるようになりました。

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使用者の行動が変われば、当然ながらそれに伴って労働者の行動も変化するというわけですね。

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はい。使用者も労働者も、互いに自己の利益を優先させて労使関係を考えるようになってきました。同時に、時として痛みを分かち合う、労使の協力的な姿勢は崩れていったのです。こうした状況は、「疎隔化した労使関係」などと言われています。

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労働者と使用者との間に隔たりがある状態を指し、そのように言われるのですね。

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ちなみに、個別的な労使関係にシフトしていることを裏付けるデータとして、個別労働紛争相談件数の推移が挙げられます。次の図表3を見てみましょう。

図表3 個別労働紛争相談件数の推移
個別労働紛争相談件数の推移

資料:厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」より作成

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近年、減少傾向にある労働組合による労働争議とは対照的に、個別労働紛争相談件数は増加傾向にあります。産業の複雑化により多種多様な仕事が発生したことで、横並びの人事管理から個別的な人事管理へと変化したなど様々な影響が考えられますが、個別的な労使関係にシフトしていることが分かります。労働争議件数の推移については、次の図表4を見てみましょう。

図表4 労働争議件数の推移
労働争議件数の推移

資料:厚生労働省「労働争議統計調査」より作成

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確かに、労働争議が最も活発だった1970年代と比べると、近年では明らかに減少していますね。このように労使関係が変化している中、これから企業や労働者はどのように対処していけばよいのでしょうか?

労使コミュニケーション

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従来の集団的労使関係のもとでは、労働争議は今より多かったのですが、労使は互いの意見をしっかりと主張し合いながら、折り合いをつけてきました。つまり、労使コミュニケーションがしっかりなされていたわけです。しかし、それが今は不十分であるように思えます。

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労働者と使用者との間で、コミュニケーションが十分になされていないのではないか、ということですね。

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はい。今後は、この労使コミュニケーションをしっかりと取っていく必要があります。ここでは詳細なデータは示しませんが、新入社員の入社選択理由が、「会社の将来性重視」から「自分の能力個性を生かせる」などに変化しています。企業は、こうした労働者の労働ニーズの変化も踏まえて、個別的に労働者とコミュニケーションを図るべきなのです。

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なるほど。従来、労働組合と画一的なコミュニケーションを取っていれば、それが労働者とのコミュニケーションにつながっていました。しかし、現在の個別的労使関係のもとでは、個別の労働者と多様なコミュニケーションを取っていく必要があるのですね。企業にとっては難しい対応を迫られていると言えそうですが、労使コミュニケーションが人材確保の一助となるかもしれませんね。教授、本日はありがとうございました。

今回の連載内容は、2017年5月22日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労使関係・労使コミュニケーション」(戎野淑子 立正大学経済学部教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。

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