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評価を組織的に行うための大切な考え方とは?

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評価を組織的に行うための大切な考え方とは?

組織・人事Q&Aーよくあるクライアント企業のお悩み(3)

 こんにちは。コンサルタントの渡辺俊です。いまだ厚手のコートを脱げない毎日ですが、3月も半ばとなり、増税直前の期末業務の追い込み、新年度計画、新入社員の受け入れ準備等であわただしさを増していらっしゃる方も多いと思います。
 さて今回は、評価について取り上げます。

Q

わが社はこれまで、社長が一人で全員を評価し、給料や賞与を決めてきました。
しかし、社員数も70名近くになり、社長一人で評価するのが難しくなってきたので、そろそろ部長クラスに評価をやらせたいと考えています。
しかし、きちんとした評価基準もないし、評価者の育成もしてこなかったので、公平な評価ができるか心配です。どうしたらよいでしょうか?

A

評価の目的は、適正な報酬配分だけにあるわけではない。
より高次の目的は、人材の成長、すなわち、社員がそれぞれの個性を発揮して活躍し、やがてその人なりのキャリアが形成されていくことにある。
したがって評価のしくみや、評価者のあり方は、活き活きとした働きを生み出す内発的動機を支えるものであってほしい。

1.評価を組織的に実行するには

 小さな会社では、社員は社長と1対1の関係性でつながっていることが多く、日常のコミュニケーションの中で、社長(会社)から一定の承認を得ていることを実感することができます。

 また、社員同士がお互いの仕事ぶりや貢献度を感じ取り、その序列を暗黙の共通認識として持てる場も形成されています。
 そのため、会社の規模がまだ小さいうち(社員数が数名~30名ぐらいまで)は、社長が一人で決める評価・処遇は、よほどの不公平さえなければ、大きな不満もなく、自然に受け入れられていることが多いようです。

 ところが、やがて会社の規模が拡大すると、社員と社長との関係性に、これまでよりも距離ができてきます。
 また、社員同士が形成していた場も次第に分断されていきます。
 そのような中で、社長の目も全社員に行き届かなくなるため、評価自体を誰かに委ねなければならなくなります。

 すると、従来の関係性と場の中で自然と生み出されていた納得感は、生まれにくくなってしまうのです。
 それを補うためには、主に2つの施策が必要になります。

 1つは、評価のしくみを整備し、評価者や社員と共有すること、もう1つは、 適切な評価ができるように、評価者を育成することです。
 評価のしくみをもっともシンプルに整備するには、社長の頭の中にある「わが社のあるべき内部バランス(前回前々回参照)」を明文化することです。

 それを社長一人で行うのではなく、社員と対話を重ねながらやってみてはどうでしょうか。
 これまで暗黙知として感覚的に認知されてきたことを皆で語り合って形に表していけば、組織的な共有・共感も一挙に進んでいくと思います。

 また社長には、評価を委ねる人たちとも継続的に対話することをおすすめします。
 その際、評価の方法論を共有することは、もちろん必要です。しかし、それだけにとどまらず、「何のために評価するのか、評価することで何を実現したいのか」という、より本質的なことを探究していけば、評価者として持つべき心構えや姿勢についても話は広がるでしょう。

 さらに、会社の理念や価値観、求める人物像についても語り合われていくのではないでしょうか。
 それは、評価スキルやノウハウの伝授を超えて、未来のわが社を担う幹部人材の育成ともなるはずです。

2.合理性から納得は生まれない

 ところで、会社が初めて評価のしくみを作ろうとする時や、評価制度をバージョンアップしようとする時に、「誰がやっても同じ結果が出るデジタルな評価基準が欲しい」という声をお聞きすることがあります。

 そこには、「評価者が複数になれば評価に甘辛が生じる⇒定性的な評価基準だとますます評価にバラつきが出る⇒だからできるだけデジタルな基準にして、バラつきを最小限に食い止めたい⇒それが公平性、納得性につながる」という理屈があるようです。

 「評価者も初心者ばかりだから、簡単に評価できるものでないといけない」という思いもあるのかもしれません。
 このような考え方の陰には、「合理的な説明ができないと社員が納得しない」という思い込みがあるような気がしますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 仕事や人を序列づける尺度=会社のあるべき内部バランスは、極めて複雑なものです。
 成果や業績、貢献度など、仕事そのものに着目する尺度もあれば、能力や資質、意欲や態度、姿勢など、人に着目する尺度もあります。
 会社の内部バランスは、通常、これらが組み合わさって構成されています。

 しかも、任せる役割や職種によって求める要素が異なる上、定量的に把握しにくい要素も数多くあります。
 にも関わらず、それらをデジタルな基準に仕立て上げようとすれば、定量化しやすいものだけを取り上げ、本当に着目すべき大切なものを切り捨ててしまうことにもなりかねません。

 逆に、定量化しにくいものを無理やり定量化しようと、直感的に理解できない言葉や表現をつらね、読解困難な緻密な基準を作ってしまうことにもなりがちです。

 これでは公平性や納得性の担保どころではありません。
 それどころか、評価することで本当に実現したいこと=たとえば、社員の成長やキャリア形成など=にはつながらない、むしろ、その足を引っ張りかねない代物になってしまうことすら懸念されます。

 先日、あるクライアントで、営業職の評価制度を作るにあたり、「商品・サービス別、等級別1人当たり標準売上額」という指標を設定することになりました。
 それがあれば、目標設定や評価がしやすくなるというわけです。

 ところが、過去実績を集計してみても傾向や一貫性は読み取れず、無理やり作ったものは、持っている肌感覚とはかけ離れたものになってしまいました。
 もちろん、早々に「使えない」という結論に至っています。

 仕事の現実には、「仕事そのもの」だけではなく、「取り巻く環境」や「携わる人」「ものごとの経緯」が大きく影響します。

 したがって、仕事の見えやすい部分を切り口にしたデジタルな基準だけでは、仕事の現実をとらえることはできません。
 まして、それだけで社員の納得を獲得することなど、できるはずがないのです。

 一定の合理性は、頭の理解を得るためには有効ですが、それを求め過ぎると、妥当性を損ねることもあります。
 より納得度を高めていくには、いくつかの視点・評価項目を設定して、それごとに分析的に評価する(分析評価法)だけでなく、分析評価した結果をベースに、全体のバランスも考慮しながら総合的に見直す(総合評価法)ことも、忘れてはなりません。

3.本当に大切なことは何か

 冒頭の、「社長一人による評価・処遇決定」が、社員から信頼され、納得を得ているのは、社長が、一人ひとりと真摯に向き合い、心を砕いて意思決定をしているからではないかと思います。
 そこには、社員一人ひとりに対する好意的関心と、それぞれの個性を活かそうという思い、ともに成長したいという願いがあるはずです。

 だとするならば、評価を組織的に実行するにあたって本当に大切なことは、評価基準・評価スキルよりも、評価者の意識やスタンスなのではないでしょうか。

 基本的なことで言えば、中心化傾向(評価点が中央に偏り、メリハリがない)、寛大化傾向(評価点が甘くなりがち)、ハロー効果(特定の事実に幻惑されて、実態が見えない)、論理的誤差(特定項目の評価点につられて他項目の評価点をつける)、対比誤差(評価者が自分と比較する)など、評価をする際に陥りやすいエラーを認識し、注意することもその一つです。

 また、評価基準を無視して自分の判断基準(枠)で評価をしてしまう「枠ぐせ」、白か黒かで決めつけてしまう「二者択一ぐせ」、他人の風評に影響を受けてしまう「風評ぐせ」など、自分自身の評価の傾向を知っておき、意識することも大事でしょう。

 そういった心がけ、姿勢こそが、社員一人ひとりの心に響き、心の内から真の納得を引き出すことにつながります。

 そして、さらに大切なことは、「社長と社員がともに創ってきたような関係性と場を、一人ひとりの評価者が自分を起点に職場で再現すること」ではないでしょうか。
 社長が、社員との間に独自の関係性と場を創ってきたように、個々の評価者にも、それぞれが経験の中で培ってきた人材観に基づいて、その人なりの関係性と場を創ってほしいのです。

 そんなフィールドが社内の随所に生まれ、有機的につながりあっていけば、組織全体が、内発的動機の基盤となる肥沃な土壌になっていくのではないかと思います。
 その土壌の上で、これからの評価は、報酬決定や人材育成という目的を超えて、内発的動機を芽生えさせ、育み、開花させていかなければなりません。

 なぜなら、個々人の信念、価値観、使命感などを源泉とした内発的動機は、ほかのどんな外的な刺激よりも、主体的で責任ある力強い行動を呼び起こし、よりよい未来を切り拓くエネルギーになり得るからです。
 そして、一人ひとりの内発的動機が、経営のビジョンとシンクロする時、組織の活力は飛躍的に高まり、思いもよらないイノベーションにもつながっていくのではないでしょうか。

 最終回は、内発的動機が、どのように経営成果と関わっていくのかを、「人材配置・人材活用」をテーマに探求していきたいと思います。

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